モドキ制御プラン。首相会議。
モドキ制御のためにセネガさんの記憶を覗きそれっぽい事実を突きつけられそうな記憶を選んでメモリーストーンとして保存する。
使うならばヘルタ戦の記憶だろうか?あのあたりの記憶であればスーベルニカの悪事が映っているから洗脳を解きやすそうなものだが。
記憶の吟味をしていると、エルメロスからの連絡が入る。
「現在俺はギルメイとハーティと武装確認中だ。そちらに必要なものはあるか?」
必要なもの、といえばスーベルニカが確実に悪いということを証明出来るものなのだが……現在の僕たちには少し無理なところがあるか?
スーベルニカの悪事を直接見た訳では無いし……
「あの、ヘルタを呼べませんか?」
「ふむ……ヘルタの記憶であれば確かに有効な可能性があるな。少し待ってろ」
そういうと、エルメロスはヘルタへ取り合ってくれた。
ヘルタは直接スーベルニカでの記憶があるため、彼らを動かすために記憶が必要なのであればおそらく1番有効な記憶だろう。
兵器としての側面が強いモドキよりは何もせずただ人として真っ当に生きているモドキのがありがたいのはそれはそうだ。
彼らは武装が簡単に出来るモドキという身体を得て、さらには自我をほぼ奪われ、スーベルニカの思うように動く駒とされてしまう。
それもほとんどの人間が便利なものや体の不自由が治るなど甘い誘惑をされてスーベルニカに向かったら改造されてた、なんてパターンがほとんどだ。
事実、ヘルタだってこの世界における最強キャラ、なんて事実をスーベルニカが嗅ぎつけていいようにされて兵士にされてたからね。
この先の戦いではそういったモドキがもっと増えるだろう。
なるべくなら彼らだって脳みそが生きてる以上倒したりしたくはない。
モドキが機能停止すると移植されている脳みそも死ぬことが確定している。
それはこの街の町長さんの意見で覆しようのない事実だと確認しているからこそ、彼らを殺してしまうのは直接人を殺したのと同義になってしまう。
犠牲は少ない方がいい。
「主導権はなんとしてもこちらで握りたいです」
「そのための記憶ならいくらでも研鑽しろ。俺たちは真っ向から戦えるように準備するまでだ」
「その、直接モドキを機能停止にしたりは……」
「コアは狙わない。あくまでも手足の関節を狙って行動不能にするだけだ」
「なら、脳への機能停止信号はないですね」
「この戦いの先にモドキの人権について考える段階があるだろうな。それまでに殺してしまっていてはその話だって出来ない」
エルメロスの目的はここで初めて知った。
モドキの人権問題。
確かにそれはかなり重要な問題だ。
エルメロスの目的はモドキにされた人たちの人権問題をなんとかすること。
それはスーベルニカに勝ったあとに考えるべき事ではあるが、確かにモドキにされてしまった人たちをヒトガタと扱うか機械として扱うかは重要な問題であり、このスーベルニカとの戦いが終わろうともそこが解決しない限り推進派と反対派が手を取り合うことはないだろう。
おまけに歴史的に消された魔法の存在もここにきて浮上した。
それらの問題をまとめて何とかしなければ戦いの先に待つのはまた同じことの繰り返しだ。
争いの火種はやがて伝播し世界を巻き込むだろう。
もしモドキの人権を放置すれば、今度はモドキ派による反乱が起きるかもしれない。
そうなってしまえば何のために戦ったのか分からなくなる。
だからこそ今出来る事に人権のあり所を増やす。
「この問題の鍵を握るのはお前だ、テオ」
「モドキが過去の記憶を思い出せるか……ですか」
「結局のところ彼らに自我が無ければそれはもう機械として扱う他ないからな。だが、お前の力で彼らに自我を戻せればモドキをヒトガタとして扱う準備にもなるだろう」
「もしこれを放置したら彼らの支持者が人権獲得を目指して戦争を起こしかねない、ですよね」
「そうだ。一応は実験で自我が戻った個体がいるとは聞いたが」
「はい。ですが候補にしていた他の2個体に関してはヒトガタ時代の家族の許可を得られず……」
「結局のところ人の記憶を勝手に覗くのは倫理観的に
、な。そのあとはどうした?」
「その後は特に何も無く現在です」
「そうか……人権についてはサブラス、スベラルを中心に反対派を集めてなんとかしよう」
「なかにはモドキに人権などいらないって言う国もあるのでは?」
「そりゃそうだ。だが、モドキにされた被害のある国や親族が被害にあった国のが多いからな。スマートに進むだろうな」
今のところはモドキにされた人でも変わらずにヒトガタ時代の扱いでそのまま人権を得られるという方向性に着地させたいというのがエルメロスを始めとしたサブラス側の総意らしい。
また、スベラルもこれには同意しており、残りの国に関しては僕がまだ関わりを持ててない国であり、そこに関してはサブラス王やギルメイに任せて欲しいとの事。
永劫の時を生きる、というのは結局のところ人として生を全うできないということでもあるから……
「会議は長引くだろうからその間に頼むぞ」
「わかりました」
モドキの記憶を戻すためのチップ。
今はそれの開発を急ごう。
ーエルメロス視点ー
「さて、サブラス王とギルメイ王並びに各国首相に起こしいただいた訳ですが」
サブラス、スベラル両国と提携している反対派のフェアス国、ナルム国、ヒエル国の3つが加わった系5国の会議。
議題はスーベルニカへの攻略後のモドキの人権について。
スーベルニカの手によって改造されてしまった人達の扱いをどうするかの会議である。
国として体を無していない国も出てくるだろうからそこが主な論点になるだろう。
「うむ、エルメロス。そのまま進行を頼むぞ」
「サブラス王の意見から早速聞きたいのですが」
「うむ……サブラスは反対派の中心であるのを自覚しているが、その上であえて言わせてもらおう」
その場に冷たく凍りつく空気が流れる。
サブラス王の発言次第では既にどうなるかが決まったようなものだ。
「テオとその仲間たちによって、モドキには自我が戻ると報告があった。よって、スーベルニカからの改造を強制された物に関してはヒトガタとして扱うことを約束しよう」
「と、いうと。自ら志願したものについては?」
「残念ながら被害者ではないからな。被害者に限り人権を尊重する、それがサブラス側の考えじゃ」
サブラス王の冷たくも納得のできる内容の発言に、各国の首相は深く頷く。
「サブラス王、発言よろしいかな?」
「ギルメイ王。発言を許可する」
「自ら志願してモドキに改造された物に関してはスベラルで面倒を見ようと思うが、どうか」
「ふむ……というと?」
「モドキにされた以上、スーベルニカの技術等を埋め込まれている可能性がある。
そこで、その技術を推進派ではなく反対派である我が国で管理することで第2のスーベルニカが生まれることを事前に食い止めようかと」
「なるほど」
反対の意見は特になく、他の国もスベラル、もとい武力ではサブラスに匹敵するスベラル国が面倒を見ると言うなら……という意見がほとんどである。
「サブラス王。発言よろしいか」
「ほう……フェアス王が口を開くとは珍しいことがあるな」
「我が国はスベラルを支持し、スベラルと提携し技術保管を進めたい方針だ」
「フェアス国がか?」
「我が国では近年仕事が無くスラムに追いやられる国民が増えていてな。そういう連中は国境の外へ出てしまう故に手が付けられない」
「そのもの達に技術保存の仕事を与えると?」
「溢れてしまった国民も我が国の貴重な宝だ。彼らに提供できる仕事があれば食うのも困らないでしょう」
「スベラルからは異論は特には無いですな」
「ふむ。ではスーベルニカ攻略後はスベラル、フェアス国両国が自ら志願してモドキに改造された者たちの面倒を見る。被害者についてはサブラスで面倒を見る。これでよいか」
特に反対の意見も出ず、話し合いはかなりスムーズに行われた。
なお、その後ナルム、ヒエルに関しては推進派の国をそれぞれ吸収までは行かずとも、管理下に置くことで技術共有させることを約束した。
各国がそれぞれスーベルニカという推進派の中心国を落とした後、近い国が周辺国を管理。モドキに関しては主にサブラスが受け入れるというとで決まった。




