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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
国渡編

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記憶の本質。モドキの正常化。

「僕たち記憶屋の仕事は記憶を届けることです」


「私の記憶で旦那が戻ると?」


「可能性の話では戻る、とは言いきれませんが……」


「可能性があるのなら、お願いします」


そういうと奥さんは僕たちに正式に依頼した。


僕は、奥さんの記憶を遡ってみて、旦那さんの性格が戻りそうなファクターを探していく。


どうせならスーベルニカに訪れる前の記憶がいいだろう。


半年前の記憶にはしっかりと家族円満の記憶が記録してあった。


なら、この辺の記憶を持っていくのが正解、ということになるんだろうか。


「ありがとうございます。これがあればもしかしたら……」


「お願いします」


受け取った記憶を持って、倉庫に赴く。


「なんじゃあ、もうなにか思いついたのか?」


「僕たちは記憶屋ですよ?とりあえず12番目の個体は今居ますか?」


「おう、こいつが12番目だな」


じいさんはあの後各個体の番号を確認するために、皮を剥がなくても大丈夫な箇所に個体の識別ナンバーを見つけたらしい。


そのナンバーのH12個体。


それが今目の前にいる個体だ。


「では、やりましょうか」


メモリーストーンを触らせる、というのは多分機械だと意味がないだろうから、どうしよう。


「ここに空のスロットがあるでござるな」


「そこに入れてみよう」


機械の心臓部付近に、謎の空白空間を見つけた。


そこに、メモリーストーンをセットしてみる。


すると……


「ァ、ァ……カゾク、ニ……」


機械は事前にプログラミングされていない行動を始めた。


まるで家族を見つけて抱擁するかのような行動を見せた。


「意識はありますか?」


「オレ、オレハ…」


そういえば12番目の個体、としか言わないからこの人のヒトガタ時代の名前を知らない。


識別のためにも元の名前が分かるといいのだけど……


「テオ!その人はナルヒト=アグラパッチさんです!」


「調べてくれたの?」


「必要な3体分の個体の情報だけですが」


「ナルヒトさん、わかりますか?」


そういうとまるで名前に反応するかのように、ナルヒトといわれた個体はまるで気分が落ち込むかのような素振りを見せた。


「カゾク、オイテキテ……ァ、ァ……」


まるで何かに対して後悔しているかのような言動が見受けられた。


「本人の記憶ではない、よな?」


「記憶はどこに宿るか、というのは未だに解明されてない。なら、それを改名するのもお前の仕事じゃないのかの?」


「記憶が、宿る場所……」


記憶はどこに宿るのか。


それは人類が何回も衝突したであろう問題であり、僕たちの世代が特別問題視しているものでは無い。


脳に宿るのか?それとも魂に宿るのか?その答えは未だに解明されていないし、居ないからこそ謎として人類永劫の謎になっている。


だが、この世界における記憶のあり方はどうだろうか。


魂か、脳みそか。


その疑問にまるで終止符を打つかのように今、その答えを得ようとしている。


モドキに、機械に改造された人間は記憶という余分なものを排除されておりただただプログラムされたデータ通りに動く存在である、


なら、なにがその人のアイデンティティたらしめるのか?


きっとそれは魂の存在だろう。


どれだけ姿を変えようと魂だけは変わらない。


それとも、脳みそだろうか?


モドキの頭部には元のヒトガタの脳みそが詰め込まれている。


記憶容量になっている部分を少しいじるだけで簡単に記憶は消え、思いどおりの人形の完成である。


魂か脳みそか。


どちらに賭ければ正解か、そんなのは僕にもわからない。


だけど記憶自体を消すのではなく、封印状態にしているのなら、きっと脳みそに家族の記憶を刻み込むことで記憶が復活するだろう。


もし、魂に記憶が宿るなら、忘れられし日々を思い起こすことで魂が共鳴し、全てを思い出すだろう。


どちらにせよ、記憶を渡すという重大な目的の元にその人の記憶という個は復活するのだろうか。


「ここにメモリーストーンを……っと」


「脳内容量はモドキになってもヒトガタの脳みそ。故に、脳みそに直接メモリーストーンを触れさせる方がいいでござろう」



都合のいいことに、脳みそ部分の部品にはメモリーストーンがちょうど収まる空間があり、そこに置くことで脳みそに直接メモリーストーンに記録された記憶を連動されることができる。


12番目の男……この人がもし潜在的に記憶を呼び起こせるのなら、きっと他のモドキにされた人たちも身体は無理でも記憶は元に戻すことが出来るだろう。


個を取り戻す、ということはスーベルニカの全てのヒトガタと一体になる、という目的から外れることになり、計画を潰すことにも繋がる。


とことんやってやろう、嫌がらせを。


「……どうだろうか」


「ァ、ァ、アア……」


モドキの様子が少し変わる。


それまでの機械的な動作ではなく、限りなくヒトガタに近いなにかの挙動を始める。


男はしばらく硬直していた。


まるで今までのことが無かったかのようにたち振る舞うのは、おそらく本当に記憶が無いのだろう。


厳密に言えばモドキに改造されたあとは記憶として記録をすることが無かったのだろう。


「大丈夫ですか?」


「ワ、ワタシは……どうなっている……」


「あなたは改造されてモドキになってしまいました」


「モドキ……ああ、スーベルニカの」


男は身体に違和感はないと言う。


だけど機械の身体ではプログラムされた通りの動きしかしないため、かなり不便だろう。


自分でなんとか……は出来なさそうか。


「今身体に重さなどは?」


「ない、かな。どちらかと言うと以前よりよく動く」


「何故、推進派のところに?」


「ワタシはね、以前は身体が不自由だったんだ」


「ええ、聞いています。腰が痛かったり足が痺れてたりと……」


「年齢のせいかガタが来ていてね……するとどうだろう、スーベルニカなら何とかできると言うではないか」


男はおそらく最新医療で直してもらえると思ってたんだろう。


だが、現実は違った。


いいように言いくるめて身体を奪い、脳みそを移植しモドキとして新たに誕生させる。


それが例え国の偉い人であってもそこは変わらないだろう。


やつらは全人類をひとつにしようとしている。


ならばノイズとなる記憶などの要素は全部まとめて潰してしまいたいだろう。


脳をいじることで認識力も落ちていただろうし、機械に移植されたら自覚がない限り治った、と錯覚するものだろう。


人間の可動域には限界がある。


それを超越することができるのがモドキへの改造である以上都合の悪いことは徹底して隠す。


スーベルニカの悪い部分がかなり出ている気がする。


「えっと、自分のことがわかりますか?」


「アア、なんとか」


まだ少し喋りが忘れてしまっていてぎこちないか。


しかし、記憶を刻んだとはいえ本人のものではないのに、本人の記憶が蘇っているということは……


「あなた自身の記憶を引き出すのは無理でした」


「アア、それは仕方ない」


「脳みそは自分のモノ……ですよね?」


「ソウダヨ、自覚している限りは」


「なら一度覗いて見ますね」


脳みそがヒトガタの時から変わっていないのであれば、深層意識に本人の記憶が僅かでもあれば。


完全に自我を取り戻せるかもしれない。

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