ギルドにて。どれが誰で。
ギルドに到着すると、受付の人にスーベルニカへ向かった人達のデータを貰う。
その中身を確認し、改めて驚いた。
総勢100人は軽く超える人数だ。
それだけの数の人間がスーベルニカへ行ったきりおかしくなっているのに、気づけないものなのかと疑問にも思うがやつらはかなり高度に元々のヒトガタの性格など癖をコピーしており、確かに気づけなくても頷けるようになっている。
今回は15人目で数人単位で出向くためにおそらくは12~16の間のどれかだろう。
確実にこの人、と断定はできないが候補にするくらいには出来るので候補に上げた人達の家族を訪れて、記憶を貰いそして機械の癖などをしっかり見極め本人に記憶を渡す。
だいたいこんな感じでいいだろう。
逆に言うと見極められてない記憶を渡してしまうので、何が起こるかはわからない。
「このデータ、コピー貰っても?」
「大丈夫ですよ~ちょっとまっててくださいね」
12~16までの人間のデータのコビー、それがあればその数人は元に戻せる可能性がある。
あくまでも可能性に過ぎない話だが、可能性があるだけ今はかなりありがたい。
ひとまずデータを詳細に確認しながらどの家族に会うのかを決めよう。
12番目の男は家族がおり、家族を養うためにギルド登録しておりモンスターや動物達を勝手に狩っていた。
13番目は妻子持ち。
自分たちが生活豊かではないことを気にしており、スーベルニカの実験に活躍出来れば報奨金が出ると聞き参加。
14番目は熟練の冒険者。
この街の力比べで彼に勝つものはまあいない。
剛力なその腕から放たれる斬撃は硬い魔物も一撃で粉砕するほどの威力を誇る。
15番目の男は妻が妊娠が発覚して子供が産まれたあとは面倒を見たいということで報奨金目当てで参加。
そして16番目の男はスーベルニカの思想を心酔しておりスーベルニカの役に立てるならばと参加。
どの人もいい人そうだし騙されやすい、というよりは様々な家庭の事情などから報奨金などを目当てで参加してる人がほとんどなんだろう。
しかしスーベルニカは実際はヒトガタをモドキに改造することで、自分たちの支配のおよぶ人間をとことん増やし、その手中にこの世界を収めて神になることが目的……と聞いている。
この中でこいつは違うだろうと思ったのは16番目の男だけか。
剛力の男もおそらく違うだろう。
と言うより、彼は多分家族は居ないのでまず今回の候補から勝手に外れることになる。
それに剛力が自慢なのにモドキになってしまったなら残念ながらその剛力は失われたということだろう。
ということは、12、13、15番目の男たちが今回の候補だろう。
あくまでもスーベルニカに訪れた人間をまとめたものであり、モドキの番号はこれらの番号に関係なく振られているだろう。
まずは12番目の男の家を訪れる方がいいのだろうか。
「この12、13、15番目の人達の家族の情報は貰えますか?」
「問題ないですよ~」
ギルドで家族の情報を教えてもらうことには成功した。
あとは実際に訪れて確認をするだけだ。
「1人ずつが理想でござるな」
「メモリーストーンは3人分持ち歩く必要があるな」
「それは問題ないでござる」
「ならよかった」
子供たちはモドキになってることに気づいてるのだろうか?
いや、前の女の人の反応を見るにおそらくは気づいていない。
近い人のところから行くことにしよう。
いちばん近いのは……15番目の男の家か。
「まずはここだね」
「うむ」
この男の家族に真実を伝えなければいけないのはすこし悲しいが、仕方ないだろう。
悲しむ時間は早い方がいいだろうし。
「じゃあ早速向かおう」
そして僕たちはこの男の家族の元を訪れることになった。
まずは15番目の男の家に到着した。
コンコンとドアをノックし、反応を見る。
数分後にドアが開き、ギルドのものですと伝えるとすぐに家に入れてくれた。
「旦那になにかありましたか……?」
「ちょっと悲しいことを伝えなければ行けません」
「悲しいこと……?」
「はい。旦那さんはスーベルニカにて、モドキに改造されています」
「ま、まあ!」
そういうと僕たちにふざけるなと一蹴されてしまい、追い出されてしまった。
気持ちはよくわかる。
いきなりきたヤツらに旦那さんを貶されたらそりゃあ怒る。
だが、今回伝えたのは事実。どうしようもない事なのだ。
「は、話だけでもさせてください!」
そういうと、落ち着いた頃にまた来てくださいと追い返されてしまった。
いきなりの事実に少し驚いて動揺しているんだろう。
その気持ちはよくわかる。
一旦後回しにした方が良さそうだ。
後回しにし、とりあえず12番目の男の元へ訪れた。
今回もドアをノックし、反応があるまで待機する。
すると数分後に奥さんが出てきた。
「いきなりすいません。ギルドのものです」
「ギルドの……旦那に用ですか?」
「いや、今回は奥さんに用があります」
そういうと中に入ってくださいと室内に案内された。
部屋はすこし荒れており、何かに対して失望しているかのような感じを見受けられる。
「あの、実は旦那さんは……」
「旦那がおかしいってことですよね。分かってるんです……」
奥さんはスーベルニカから帰ってきたあとの旦那のとある行動に違和感を覚えていたらしく、僕たちが説明してくれるのならひとまず安心できるかも、と伝えられた。
「旦那さんがスーベルニカに行ったことは?」
「知っております。私は止めたのですが……」
「では旦那さんは今は?」
「今はこの街の男たちを集めた集会所に出向いております」
「なるほど……」
奥さん的には旦那がいないこの時間に訪れたことを感謝された。
というのも、スーベルニカから帰ってきた旦那は食を取ることもなくなり、さらにはトイレなども無くなって、違和感が凄かったと言う。
「まるで、機械みたいになってしまって……」
「その、お伝えしにくいのですが……旦那さんはモドキに改造されています」
「モドキ、というとスーベルニカで今発表されている機械化のことでしょうか?」
「ええ、そうです」
奥さんは外の情報にそこそこ詳しく、モドキの存在も認知していた。
であれば話は早い。
「単刀直入に言いますね。旦那さんを機械から戻すのは無理ですが、以前の旦那さんには戻せるかもしれません」
「それは、性格などが、ということでしょうか?」
「そうです」
そういうと奥さんは客間のタンスから一通の手紙のようなものを取り出した。
「これは旦那が受け取ったスーベルニカからの徴兵令の手紙です」
「え、預かっていいのですか?」
「もちろんです。あなたたちが旦那を元の旦那に戻してくれる、というのを信じてるから預けるのです」
違和感に気づいてる人はおそらくは街には何人かいるだろうとは思っていた。
だがここまで力強い人だと、余計に機械化された旦那さんが不憫でならない。
それに、モドキになってしまったら元の身体の肉体は死んでるだろうから、機械から戻すことは不可能である。
その事実を、受け入れた上で機械でもいいから旦那を以前の旦那に戻して欲しい、と依頼された。




