モドキと。共生と。
とりあえず個体ごとに分けて誰がどの家庭のかを把握しないといけないな……
この人、こうで、この人は……っていちいち分けるのも大変だし、この辺の手間が省けるならいくらでと情報を提供するんだが。
「このモドキ達は個体名などは無いですか?」
「うーん、個体名ねぇ……あれば確かに管理しやすいんだがねぇ」
「機械にされる前の特徴とかは無いですか?」
「ああ、それなら確か機械の身体のどこかにシリアルがあったはずだよ」
シリアル、ということはおそらくは連れ去られて帰ってきた順番に違いない。
ならば、シリアルの順番から少なくともその時期に消えたはずの住民数人に特定は出来るだろう。
特定まで行って残りをどうするかで悩みどころではあるのだが、現状この辺りはどうにもでしないから一旦はシリアルから候補を絞ることにした方が良さそうだ。
「シリアルはスーベルニカに徴兵して帰ってきた順番、でいいんですよね?」
「ああ、それで間違いないはずだよ」
「わかりました」
ひとまずモドキの身体を隅々まで調べてみることにする。
構造自体はセネガさんがよく分かっているのでその説明通りに随時確認していくことにしよう。
まずは頭部。いかにもなロボットタイプ……ではなく、本当に人間の皮を使った頭部パーツ故に、どこかからほつれがあるとかは全くない。
むしろここまで良く綺麗に繋げたなと感心するレベルだ。
頭部パーツは特に何もなし……次はボディだ。
ボディのあちこちを調べる。
だが、これといった変わった物は見当たらない。
その後色々調べたのだが、シリアルに繋がりそうな部分は特に見当たらず、たどり着くことすら出来なかった。
「うーん……って、あれ?これは?」
何もないと諦めかけたその時、関節部に少しだけ歪みがあるのを発見した。
「歪みというか凹みというか……」
「むっ、ここはおそらく外れるようになってるでござる」
そう言ってセネガさんは何回かコンコン、と関節部を叩き音のズレがある場所を探した。
そして何回か確認すると、明らかに音の違う箇所があることを発見した。
「こういう隙間の一切無さそうに見える機械にはどうしても隠せない部分があり、構造上そこは脆くなってるんでござる」
「あー、そこね。たしかにそこから油を注せって指示書が来てるね」
ということ、この関節部分を辿っていけば間違いなく機械のおかしな所の構造に繋がる、ということかな?
「少し荒い方法でも平気ですか?」
「幸いにも何かあった時のスペアのパーツは揃ってるよ」
「助かります」
関節部分に少し違和感のある構造と言っても、人の皮を使っている都合、やはりその部分を剥がしたりしないと完全に分解、は難しいだろう。
なんなら機密情報故に皮の下に隠してる可能性だってある。
「しかし、元はヒトガタでござろう?丁重に……」
「それはもちろんだよ。でも、今は少しでもスーベルニカに近づく方が大事だよ」
「まあ幸いにも彼らにとって痛みなどの感情はほとんどないですから。それに一応は予備もあるみたいですし」
「ならハーティ、ここの隙間の関節部から皮剥がしたり出来る?」
「構造がある程度わかれば可能かと」
ハーティがそういうと、町長さんはちょっと待ってなさいと倉庫の資料保管室に向かっていった。
「モドキ自体の分解は経験がない故。ここで構造を知れるとしたらこの先の戦いの役に立つでござろう」
「その辺はエルメロスのが詳しいだろうね」
「うむ。間違いなく」
しばらくして町長さんが戻ってくると、大きめの丸まった紙を持ってきて、机にドカッと紙を広げる。
「ここがこれで……」
この辺は機械に少しだけ知識のあるセネガさんに任せた方がいいだろう。
モドキ……改めて見ると本当に人間そっくりだ。
外面だけだと判別できないのもうなずける。
「テオ殿!大体わかったでござるよ」
「おお、ほんとに」
セネガさんは構造図をあらかた読み終わると、モドキの脆い部分、外れやすい部分などを丁寧にモドキ本体を使って説明しはじめる。
その構造はやはり予想通り、機密を守るためにガワとしてヒトガタの皮を使っているのがよく分かった。
「いくら機械の身体に移植してるとはいえ、自分の身体の皮膚を使ってこうやって機械に被せられるのは気持ち悪いな……」
「非人道的なのは間違いないですね。っと、ここをこうして」
セネガさんの指示の元、慎重にハーティが皮部分を剥がしていく。
すると、露出したのは機械の重要と思われる駆動部などの精密な部分だ。
間違いなく、人体を研究に研究して機械で限りなく人体に近いものを作って、筋肉などを再現したスプリング等を隠すのに皮を使っているようだ。
「おそらくでござるがこういう場合は心臓部に近い部分にシリアルがあるでござるな」
脇の部分に少しだけ可動域を確保するためのクリアランスがあり、そこから一気に腕を外したり出来るようだ。
脇の部分の関節部はどうにも機械で人体を再現しようとすると構造上隙間が出来るらしく、その隙間も可動域を限りなくヒトガタに近づけた上で、機械的な挙動も可能にできるようにクリアランスが確保されている。
分かりやすく言うと、可動フィギュアの肩関節周りだな。
隙間の部分に少しだけナイフで削り、一気に剥せるように余白部分を作る。
そして、そこを持って一気に魚の皮引きの容量で剥がす。
するとどうだろうか。
予想通り心臓部に近い部分に目的のものを見つける。
「モドキはまず判別が出来ないでござろうな」
「僕たちみたいにモドキを前提として分かってるならまだしも、一般の人にはまず無理だよね」
「故に皮の上からシリアルを刻んでしまうと違和感になってしまう、故に皮の下にシリアルを刻んだ、と言ったところでござろう」
構造をある程度の人間に指示書として渡すのはあくまでも多少のメンテナンスの為に皮を纏ってる状態での構造図だろう。
皮の下までの構造はおそらくはかなりの機密が隠れてるはず。
「えーっと……H015か……」
「おそらくはハンジャナ15号あたりでごさろうか?」
ということは、15人目の改造者ということで間違いないだろう。この情報を得られただけでも大分進歩だ。
「あの、この個体はここまでやっちゃったんで判別出来るようにしてもいいですか?」
「うーむ、わしの立場上本来ならば街の人間にこういう扱いをしたお前たちを律さないとダメだが……彼らのことを助けるつもりだろう?」
「完全には無理ですが……できる限りの事はする予定です」
「うむ。ならこのモドキはこちらで判別できるように保管来ておこう」
「えっと、メンテナンス中だったとはいえ、動かないんですか?その個体」
「こやつら不思議でな、メンテナンスが近くなると勝手にここの倉庫にやって来て、所定位置で待機するんじゃよ。それでメンテナンスが終わるまでこの通り、動かんのじゃ」
おそらくは規則にそった動きをしているだけだろう。メンテナンス時の所定の位置、というのはスーベルニカ側でもどれがどの個体かすぐ判断するために位置を決めているということだろう。
「つまりメンテナンスをしなければ動かない……?」
「もっともここまで身ぐるみ剥がされちゃあ機械側が正常じゃないと判断して治すまでこのままじゃろうな」
「それは都合のいいような……」
少しまだ気になる部分があるにはあるが、僕たちはこのH015というシリアルの番号を持って一度ギルドに戻ることにした。
あそこなら街の人間の住民票があるだろうし、スーベルニカに出向いた、攫われた人達の詳細なデータもあるだろう。




