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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
国渡編

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この街の冒険者。自衛の鍵。

「これ、お願いしますね」


「えっと~、先程貰った変な石を貸出すようの手続きですか~?」


「そうです」


ギルドに戻り、ひとまずは貸し出しのための手続きを済ませる。


ギルドで何かを貸し借りするには、同意書に加えてしっかりと金額提示の書類を作る必要がある。


トラブルを避けるために事前に金額を決めておき、同意書と一緒に貸し出す相手に渡してサインを貰えば契約完了という形だ。


今回の場合はメモリーストーン側の有効期限は記憶を刻み込むまでという少し曖昧な有効期限にはしているが、その辺は適時対応して欲しいと受付のお姉さんには伝えてある。


また、こちらに滞在の間は基本セネガさんに依頼などの斡旋作業を行ってもらうことになっているため、彼がギルドに常駐のような形になるだろう。


貸し出しの期間に困ったら彼に色々聞けば解決ということだ。


さて、そこで一つ問題が起きなくはないのである。


この街の現状だ。


「あの、どれくらいいるんですか?」


「えっと~直近の契約の総数は70ですね~」


この街の冒険者は70人。


その中の何人がモドキにされてるか、で色々と変わってくる部分があるし基本的にこの街の人間はモドキがどうかを理解していない。


故に、判別方法は直接僕たちが調べるしかないわけだ。


「先程街を見た感じ、元の人間の皮を使ってるだけあり精巧に見えたでござるな」


「化けの皮、ならぬヒトガタの皮か」


「実際問題、モドキ側に継承しては行けない理由は明確にしておかなければでは?」


それもそうだ。


「モドキ側は恐らくはスーベルニカとデータのやり取りをしてるはず。だから、もし迂闊に継承させてしまうと、敵側に魔法の存在を知らせてしまう可能性があります」


二人は納得した顔でそれならばとギルドの常駐の間は冒険者達に軽い質問などでモドキか確かめる事を承諾してくれた。


もしモドキの疑いのある人物が貸し出しを応じた場合はモドキでないという証明がなければ貸さない、とかだと直接的すぎる。


そういうやり取りもきっとデータを通じて奴らの手に渡ってしまうだろうから、敢えてバレないように立ち回り逆に利用する。


奴らのデータを可能な限り収集しつつ魔法の継承を可能な人材に行ってもらい、ヒトガタ側の戦力を整えていく。


今後の僕たちの記憶屋としての立ち回りはこの辺が主になってくるだろう。


記憶関係の悩みなどを解決しつつ、魔法の継承を行っていく。


魔法配りお兄さん達ということだ。


「それにしてもストーンにいちいち全部触れなきゃ行けないのはちょっと面倒ではありますね」


「僕は確認できないんですが、どんな記憶が保存されてるんですか?」


「えーっと…魔法の神秘的なデータ、的な?」


随分ふわっとした答えが帰ってきた。


まあ説明するのが難しい記憶が流れてきて、自分の記憶のように上手くフィットする魔法体系の記憶を読み込めれば、相性の問題でその属性の魔法を習得する、という感じだろう。


「でもどうしてテオにはこのストーンを読み込めないんですか?」


「異世界人は魔法から弾かれるのは説明したと思うんですが、そのせいなのかそもそも触れても何も起きないんです」


何度か僕も試してはいるんだけど、魔法の継承にまで至れてはいない。


ストーンに触れた瞬間、頭が一度フリーズし何も無い時間が数分続いた後、まるで意識を殴られたような感覚で目が覚める。


あの感覚ちょっと気持ち悪いんだよなぁ、何とかならないかな。


「テオ殿は元々戦闘要員ではござらんからな。問題はそこまで起きないかと」


それもそうだ。魔法は戦闘面の利便性が今のところ強い。


僕は基本記憶巡りの担当だから、戦えるようになる必要はない…のだが、最低限自衛手段は必要だよな、とは思う。


自衛手段を考えてみてはしたけど、やはりまともな自衛手段となると鍛えるとかその辺になってしまうな。


しかし、ハーティもセネガさんも忙しいから稽古って感じのは無理だろうし、記憶の上書きをしてもやはり身体能力は据え置きなのが邪魔してしまう。


緊急時に記憶を上書きして経験値を無理やりってのは無くはない方法ではあるのだけど、出来ることが限られてしまうのが欠点ではある。


魔法が使えるのが一番ではあるのだけど、魔法は弾かれてしまうしこの世界の技術は何故か弾かれる性質にあるし……


「はあ、どうしよ……」


悩みながらギルドにて少し休憩していると、ふと背中から視線を感じた。


視線を……感じる?


この街には今女子供以外の男は存在しないはずだしみんなモドキになっているはず。


ではこの視線は一体……?


「よお、久しぶりだな」


その声の主は、懐かしい人物だった。


「ニコラ!?」


「たまたまここによってな。そしたらお前たちがいるってんでギルドに来たってわけだ」


「今まで一体どこに……」


「まあそんなんはいい。テオ、お前今の悩みを言ってみろ」


ニコラはいつにも増して真面目な顔で僕に詰め寄る。


今の悩み、自衛手段に悩んでいるが。


「身を守る術がないとこの先の戦いになった場合に死にそうだなって……でも、この世界の技術は弾かれてしまうみたいなんだ」


「ほお、もしかして魔法使いのじいさんにあったな?」


「えっ?なんでその事を……」


まるで今まで見てきたかのような言い回しだが、世界を今は旅しているのだから魔法使いの爺さんの一人知り合いに居るくらいは不思議ではないのか?


「ギルドに魔法の継承するための石を預けてるよ」


「なぬ、誰でも魔法使いになれるのか?」


「適正に合うやつならね」


少し残念そうな顔をした後、再び話題を僕の自衛手段に戻した。


「この世界の技術じゃダメ、だったな?」


「うん」


「しかしだ。「お前が使わなければいい」とは思わないか?」


「僕が使わなければ?でもそれじゃあ自衛とは……」


セネガは懐から一つの紙を取り出し、僕の座っていた席の前にその紙を突き出す。


「ここに書いてあるところに迎え。そしたらお前の欲しいもんが手に入る」


「それはどういうーー」


一瞬目を離した隙にニコラは消えていた。


神出鬼没な放浪人なのは知っていたが、ここまでとは。


ニコラに貰った紙に書いてあるのはこの街の住所で、それも少し寂れた殺風景な場所を指していた。


こんな場所に一体なんの用があると言うのだろうか?


それに、直接使わなければと彼は言っていた。


まあ確かに本人が弾かれる性質を持っているなら、本人以外が力を持てばいい、というのは筋の通る話ではあるが。


「えっと、ここか」


訪れた場所は静かな倉庫だった。


色々なガラクタを置いていそうな、ほんとうに殺風景な倉庫。


「鍵、開いてるんだ」


無防備にもその倉庫は鍵が開いていた。


ここに来る前、ニコラにはここにあるもんは全部もって言っていい、持ち主が既にモドキだからなと言っていたが。


こんな泥棒みたいなことをして許されるのだろうか。


「あ、これは……」


ガラクタの山だからと少し警戒していたが、よく見ると目の前に広がるのはこちらに来てから忘れかけていたような、見たことのあるものばかりが溢れていた。


「……あ、そうか!」


僕はひとつ勘違いをしていたようだ。


ニコラはたしかに「この世界から弾かれるなら、弾かれなければいいんだろ?」と言った。


その言葉の意味は自分が直接使わなくても勝手に動くロボットたいなもののことを指していると思っていたが、実際の目の前に広がるガラクタの山を見て一つ気づいた。


ああ、そうか。たしかにそれなら納得だ。


【この世界のものじゃなければ弾かれない】重要なのは【この世界のものではない】という事実。


つまり、それが異世界より来訪したものから得た知識元に作られた技術品ならばどうだろう?


それは確かにこの世界で作られた、という事実こそあれど元々はこの世界に存在しないもの。


所謂外部パッチを当てて実装に成功したもの、という事実。


この世界が認知しているものではなく異世界の産物。


ならば弾かれない、というのも道理が効く。


「おお、たしかに」


確かめるようにガラクタを手に取ってみてわかった。


これは確かに【異世界のものだから弾かれない】という判定になっているということに。


「これなら確かに僕の時代のものだし馴染みがあるし使えるな」


ガラクタの山から僕は何個か持ち出した。


元の世界で馴染みのある、武器になりそうなものや知恵があれば使いこなせるものなど様々なガラクタだ。


さらに言うと、僕の時代に存在しなくても想像上でも存在が確認できるものであり、この世界に元々無かったもの。


所謂僕の時代の創作物の再現品もこの世界のものではない、という判定になるらしい。


元の世界での技術的再現が無理でも、この世界の技術で再現できたけど発想自体は異世界ありきのもの、であればこの判定から外れない。


ガラクタばかりだと思ったけど、弾かれないからこそみたいな所はあるな。


ニコラ、ありがとう。

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