王の器。ほんとの自分。
ニコラが仕切り、国への入国が迫る中、今一度僕の力をどうするかという話し合いが行われた。
ギルメイは国のものとして保護してもらい、国のために使うべきと。
ハーティはあくまでギルドメンバーの所有する力としてギルドで保護し、実質的に国のものになってもらうべきだと。
エルメロスは力の研究の為に少し離れた場所にあるサブラス国立研究機関に預けるべきだと。
一方のニコラは⋯その力は世界のために使うべきだ、と。
あくまで保全するための案を出した三人とは違い、ニコラはこの力の有用さを実感した。
この力を使う以上、ひとつの国に留まるべきではないと。
もし隠していてもいずれ他の国がこの力の存在を知った時、秘密裏に動く国があるかもしれない。
そうしたら国の力として保護しても目が届かないかもしれないと。
だからこそニコラは僕にひとつの提案をした。
「サブラスに無事帰れた、一度ギルドで精査しよう。だが、もしお前がそうしてくれるなら、俺はお前が世界を旅してその力の有用性を世界に示すための手伝いをするつもりだ」
ニコラの言い分は、力を一箇所に留めてもいずれ新たな火種になる。
ならば、世界中に力の有用さを示して推進派との戦争が集結する可能性があることを示すべきだ、という意見だ。
「だが、そうだとしても一度ギルドに身を預けることにはなるのではないか」
「ギルメイ、もしそうなったらこいつが罰されそうになったら味方してくれるか?」
「うーむ、正直わからんな。俺にも立場がある。
だが、こいつ自身がその力の有効性を説明し、みなを納得させることが出来れば、俺は改めて力をかそう」
話はこの力を世界の為に役立てる方向に決まりつつある。
そして、そうした活動をする上でも、国からの支援などはある方がやりやすいため、一度国の預かり所属という形にして、保護してもらう方がいいと。
国のものとして保護して国のために使うことを提案していた三人は推進派との戦争が終わる可能性を示された時、顔色をかえた。
みな考えは違えど、戦いは好まないという意見だけは一致していた。
そして、結論が出た時、僕たちはスベラル王国の国境に入った。
そこからは移動は少し早くなり、道中の郵便局で僕たちが入れるようにするためのギルドの紹介状を渡された。
内容としてはサブラスからの使者が国を通るため、許可が欲しいという内容のものだった。
いくら戦いの準備をしているとはいえ、使者は大事だ。
降伏する可能性の話を持ち出すことだってあるかもしれないし、国に有益な条件で取引を持ち出すかもしれない。
そういった可能性があるから下手に無下には出来ないだろうとギルメイが教えてくれた。
さて、スベラル王国に着いた訳だが⋯思ったより簡単に中に入れた。
もちろん、ギルドの許可証が仕事したのはあるが、何も警戒されずに入ることが出来た。
ひとまずは国王に謁見する予定が既にギルドの方より連絡が行っていると確認できたため、宿を取りそこで過ごすことになった。
残りの時間は自由な時間になった。
「ふむ⋯」
「ギルメイさん?」
「ああ、すまない。俺はスベラル出身なんだ」
ギルメイは少しバツが悪そうに教えてくれた。理由の方ははぐらかされたが、都合の悪い事だとしたら聞かない方がいいのだろうか?
とはいえ、スベラル王国での目的を考えると、もしかしたら出身がスベラルのギルメイさんには仕事があるかもしれない。
そこでふと思いついた。
練習がてら、スベラルにいた頃の記憶が覗ければいいのではないかと。
ギルメイにはしっかり説明し、条件付きで記憶を覗くことを許可して貰えた。
その条件は、スベラル出身であることは内密にすること。
また、メモリーストーンに関してはギルメイに渡し、ギルメイの元で保管すること。
それを条件に記憶の閲覧を許可される。
「では、行きますよ」
正直言うとどこまで遡ればいいか分からないが、記憶は遡る際にある程度は目星が着くように流れていく。
記憶を覗く感覚は、テレビのビデオの早送りに近い。
集中力を高めれば高めるだけ過去に遡るため、記憶が流れる速度が早くなる。
今のところ最大でも5倍速くらいだろうか。
ギルメイがスベラルを離れたのは5年前だというので、その辺まで記憶を遡ればいいことになる。
意識を集中させ、記憶を遡っていく。
ー5年前、スベラル王国ー
「何故です、兄上!」
「我がこの国をずっと統治出来ればこの国は安泰なのだ!それは、お前がいちばん分かっているだろ!」
「ですが、あんな訳の分からない技術に身を委ねるなど!」
「貴様、我が友を侮辱するか!」
覗いた記憶は、喧嘩中の記憶だった。
場所は、王宮と思わしい豪華な装飾の建物内だった。
目の前には玉座と思わしきものもある。
それに、ギルメイの言葉通りの意味なら彼はギルメイの兄であり、この国の5年前時点の王なのだろう。
「今やモドキとなることは推進されておる!」
「ですが、モドキになれば記憶などが消え、人として生きてるとは言えないのですよ!?」
「記憶など後から紡げばいいもの!自分の役割さえあればなんとでもなる!」
ああ。
何となくわかった。ギルメイは兄が推進派に魂を売り渡し、嫌気がさして国を出たんだ。
そして、その溝は今も根深いものになっている。
ある程度記憶の閲覧を終えると、ギルメイの置かれている状況が見えてきた。
彼はスベラル王家の人間であり、本来は兄が亡き後国を任されるはずだった。
だが、兄は機械化推進派に丸め込まれ、その永遠の命を求めた。
そして、それに反対するギルメイは兄と決別して王位を捨て、外の世界で生きることを決めた。
そしてそれはスベラルではなく、推進派の息のかからない国。
それこそ、この世界における最大の国力を誇るサブラスだったという訳だ。
彼は国を出たあと、ひたすらに鍛えた。
それは、王位を捨てた以上自分でこれからは生きていかなければ行けないことで生きる術を自分で手に入れなければ行けないこと。
だがそれは本人の思ってた以上に簡単なものだった。
元々身体は鍛えており、国が危ない時に指揮を取り戦場に赴くいわゆる国防の要であったギルメイはスベラルでもギルドがあるため、ギルドの存在は知っていた。
そして、ギルドの援助があれば生きていくには困らないことも知っていた。
だから、困らなかった。
だが、状況は少し変わった、ギルメイがサブラスへ逃げ込み、一年が過ぎたあたりのことだった。
「おい、ギルメイお前宛てだ」
「俺に?」
ギルメイはひとつの手紙を受け取った。
差出人はスベラル王国で執事を務める「アドニスタ=ギューネス」からだった。
手紙の内容は簡潔だった。
国王死去により王国は後継を巡り混乱中。
どうかスベラルを救うために戻ってきてくれないか、というものだった。
その報を聞いた時、ギルメイはあまりいい顔をしなかったと言う。
国王ってことはつまり自分の兄は機械化して永遠の命を手に入れ、その永遠の命で自分の統治する国の存続を強く求めた。
そんな兄が、死んだのだと。死因は書かれていなかった。
それは、戻ってきて詳しい話をしたいという意図があったのだろう。
だが、ギルメイは悩んでいた。
国王が推進派だったとなれば国はさらに混乱する。
スベラルは推進派ではなかった。
むしろ、機械化に否定的な国であったのだ。
だが、ある日国王は自分の親友が機械化推進派と繋がっていることを知る。そして、推進派の何かを見たのだと。
「どうするんだ?」
「すまん、すぐに答えは出そうにない」
ギルメイはそうして迷いに迷って、数年が経過していた。兄の手腕は知っていた。
そして、自分に国は守れないとギルメイは思っていた。
だからこそ、兄が王位を継いだ時は喜んだのだと。
「⋯ギルメイさん」
「ああ、わかってる。黙ってて悪かった」
「スベラルの現状は?」
「正直、わからないんだ。どうなってるかは」
「そうですか⋯」
だが、これは隠していていいのだろうか。
もし彼が本来の王族で、この国を統べるのが役目だったとしたら、今回ここに来た目的を達成出来るのではないか?
ギルメイは迷っているようだった。
自分が国を統べる器であるのかを。




