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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
国渡編

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記憶の使い方。その真価。

上書き可能な事実が本当なれば、サブラスへ帰る際の大きな手土産になる可能性がある。


とはいえ、メモリーストーン側に使用回数がある可能性もあるし、メモリーストーンが記憶を受け渡しする関係でデカくなってしまい嵩張る問題もある。


おいそれとやっていいもの、では無い気がする。


「逆の考え方も出来るかもしれませんよ、おふたりさん」


「ほう…?」


「本人の記憶は難しいかもですが、モドキになった人たちに人間だった頃の他人から見た記憶を刻むことがもし出来たら?」


「自我を取り戻すかもしれないと?」


「もちろん、記憶を本人のものに完全に…とは行きませんが。もしどこかに本人に通じるものがあればあるいは」


たしかに、それは考えたことがなかった。


僕たちが今話していた内容は、あくまでも既存の記憶への上書き行為が可能という話。


ハーティが提案してきたのは、無の中に記憶を刻み込むというもの。


第三者視点の記憶にこそなるけれど、もし魂まで死んでいないのなら、あるいは…


と、いっても記憶と魂が連動している保証もないので、まだ可能性の域を出ないだろう。


それでも、少しでも可能性が出てきたのであれば、試してみたくはある。


完全に他人の記憶を、というよりはより本人の身近な人間から記憶を受け取り、刻み込む方がいいだろう。


他人の記憶が頭の中に存在する、というのは一時的ならいいが記憶の刻み込みはその人の経験値等も一緒に他人のものとして受けてに渡してしまう。


感覚的にあまり気持ちのいいことではない。


それが、例え人の形を忘れてしまったモドキだとしても、だ。


「戦力補充も可能性の域を出てない推測だから、その辺含めてちゃんとエルメロス達のいる時に検証しよう」


「だけど、もし本当に可能だったらこれは大事ですよ」


「まあ、いい方の大事だと嬉しいけど…」


そういえば、ヘルタの深層心理から取り出したものを、ストーンを通じて思い出させたのは上書きになるんだろうか?


どちらかと言うとロックされていたものを再度アンロック状態にした、という方が正しい気がするけど。


記憶にもあり方が様々であり、その都度目的に合わせた記憶の扱いをするには僕にはまだ経験値が足りてない。


力をひたすら重ねて経験値を積むことでしかなんとかならない問題なのであれば、経験し続けることでしか僕はみんなの役に立てないかもしれない。


「とはいえ、記憶を刻み込んで経験値を渡しても、受け取り側がある程度体が出来てないと大変なことになるでござろう。リスクの分散も大事でござろう」


確かに、それもそうだ。


なんだかんだで色々話し合いをしている間に時間は進み、ハンジャナ目前になった。


ここからは道が真っ直ぐなので、半日以内には絶対に着くだろう、との事。


今のうちに色々と準備しないとな…


「ハーティ、魔法はある程度使えるようになった?」


「水を形状変化させてってのは無理ですけど、水を出すくらいならなんとか!」


「セネガさんは?」


「土をその場に出すくらいでござるな」


さすがに形状を変えて色々やるのは無理っぽいな。あの辺はコントロールが繊細だから、経験を積まないと行けないんだろう。


魔法自体はイメージすれば何とか出るが、形状を変えたりとかだとイメージ以上に魔力のねり方とかそっちの方が大事なのかも。


とにかく、今は出せるようになっただけでも有難い。


それに、今後は連携が大事になるだろうから、水と土を出せるならある程度の作戦は錬れる。


「ハーティとセネガさんの魔法を合わせて、泥沼にしてしまって動きを封じる、みたいなのも出来るかもですね」


「土魔法をもう少し鍛えたらその場にでかいアナを開けれるかもしれんでござる」


「そっから大量の水を被せたらやばそうだね」


土と水。


相性悪そうに見えても、意外とちゃんと戦いようはあるんだなぁ…


と、関心してる場合じゃない。


とりあえず、メモリーストーンを置けるようにギルドに赴かなければいけない。


幸い街の地図は貰っているので、迷子になることは無いが。


とはいえ、記憶屋だけで稼ぐのは無理だろう。


ここは何か、二人にもやってもらわないといけないな。


「あ、そうだハーティ」


「はい?」


「出した水って飲めるの?」


「問題ないかと」


「ふむ…セネガさんの土はすぐ消えちゃう?」


「いや、出した分は消えないでござるな。それに、ふかふかの土も出せるでござるよ」


ほう…ならば、滞在中にやることは決まったようなものだな。ここはひとつ、一肌脱ぎますか…街の人のために。


「記憶屋としての仕事もしますけど、二人には連携してもらって、畑仕事の手伝いをして欲しいです」


「畑仕事…あ、なるほど。水と土だから」


「はい。問題ないですか?」


「平気でござるよ。そういえば、魔法のじいさんでござるが、土も色々イメージで変わるけど、ふかふかの土の場合はよく作物が育つ、だそうで」


「ピッタリすぎるじゃないか。じゃあ、二人にはそっちを任せていい?」


「了解です」


「了解でござる」


とりあえず、滞在中の賃金問題、解決!


賃金の問題を解決してしばらく、ハンジャナが見えてきた。



この街はほかの国と違い、秩序を守るすべがあまりない為どこか加盟国入りする方がいいとは聞くのだが頑なにそれらを断っているらしい。


理由は不明だが村だとしたら村長的な町長ポジはいる気がするが、その人の独断で決まっているのだろうか?


「さて、もう入口ですね」


「お、早いな~」


馬車が壊れた時はどうかと思ったが、無事到着したことに安心していると数人が馬車の方へ駆け寄ってきた。


「おや、例の旅人さんかな?」


例のというのはおそらくサブラス経由で記憶屋が行きます、と連絡を貰っているからだろう。


入国検査的なのは街単独なので無いのだが要は身分証の提示が必要なようで、それぞれギルドカードを見せてスムーズに入ることができた。


と、そういえばひとつ疑問があるんだった。


今、ちょうど街の人が居るし聞いてしまおう。


「あの、ひとついいですか?」


「はい、なんでしょう」


「国ではないのにも関わらず、ギルドの運営は問題ないんですか?」


「ああ、その事ですか」


基本的にギルドってものは国の運営が入ってて色々国から支援や指示を受け、それを国民に還元することによって成り立っている。


街単体だとそんなことも無いだろうに、しっかりとギルドは運営できているようで、少し疑問だったのだ。


運営はそこそこ難しいはずだし、なによりギルド所属になってしまえば給料だって発生する。


とてもじゃないが豊かとは言い難いこの街で運営できない気がするが…


「昔はここも国でしたから。国として機能しなくなってからは元々の王族一派の支援を受けているんですよ」


「その国っていうのはーー」


「えーっと…なんでしたかな。ス、スーー」


「スーベルニカですか?」


「ああ、確かそんな名前でしたね。その代わりに年に何人かをスーベルニカに派遣することになってるんです」


スーベルニカに派遣…?


街の感じが少し寂れているのは街の人間が年に何人かスーベルニカに行ってる、ということだろうか?


いや、それにしてはーー


「家の数に比べて街の人間が少ない気がしますが…」


「ああ、最近の若者は元気でね、家を持たずに放浪して帰ってきたりなんてのがあるもので」


「あの、その人たちってちゃんと寝てますか?」


「いんやぁ、どうだろうねぇ…聞いたこともないねぇ」


モドキに改造されている、という可能性はあるのてまはないか…?


サブラスとスベラルの管轄領域からギリギリ外れているこの街だからこそ、二国に広まらないように情報の規制は出来るだろう。


ならば…この街の闇は深いのか?

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