記憶屋。その真骨頂。
記憶を刻むのがOKなら、ぶっちゃけ何やっても記憶を操る異世界人は最強だろう。
悲しい記憶とか、楽しい記憶とか、何かを忘れたから思い出したいとか…
人の深層心理、魂や脳に刻まれた記憶を引き出してそれを伝え与える力。
歴史の転換点にはこの力が絶対に必要だと言うことだろう。
言い伝え、そして心に刻む。
人の歴史は記憶の断片であることを改めて思い知ることになる。
極論記憶さえしっかり覚えてれば記憶屋が何とかするんだ。
そう思って行動したって誰も責めないだろう。
それに記憶屋として活動する中で必要じゃない情報も手に入れることにもなるが、そういうノイズ的な情報にも使い道が出来るだろう。
フェイクの記憶を与えて混乱させる。そんな戦い方も出来るかもしれない。
行動を伴う際に脳は働くし、記憶を思い出せば脳は働く。
つまり、不必要と言われてしまう記憶にも相手を行動不能にさせる隙を生み出すなんて芸当も出来るわけだ。
それは、戦う力の弱い僕に撮っては立派な戦闘手段。記憶で戦う記憶屋か…
物理とかはハーティに任せるし、諜報はセネガさんに任せるし僕は僕のやりたいことをやろう。
あとは、そうだ…メモリーストーンは実態化させるたかさむからそこだけ何とかしなければ。
記憶の容量によってメモリーストーンの大きさは変わる。
いくら継承に必要とはいえ、魔法の継承の為に持ち歩くのも大変っちゃ大変だ。
「メモリーストーン、預けるんですか?」
「さすがに怖いかな。悪用されたら困るし」
「ならば次の街ではギルドへ行くでござる」
「ギルド?」
「サブラスからの使者がいるはず。その人ならば預けて問題ないでござろう」
確かに、一理ある。
サブラスは信用しているからこそ、そこからの人間には安心して任せられる。
重いのが問題なので、預けてしまえれば動く幅も出てくる。
自由行動した時だって、軽い体で動き回れるわけだ。
「馬車とはいえ、まだあと数日かぁ」
「次行く街、どういう所か知ってるでござるか?」
「全く。ここに行けばいい、って言われたきりだし」
「ならば説明しておくでござる」
次の町。
サブラスとスベラルを通り過ぎたところにある街だ。
よく遠い国との貿易でもこの街を中継するらしく、国というよりは街ということらしい。
故に王様は居ないし自治体任せにはなる、って部分では少し心配ではあるが。
次に訪れる街の名前はハンジャナ街。
元々小さい村だったのが、ここ最近の技術の発達により空き地を開拓に開拓を重ね、街としての体を保つことになった街だ。
その為なのか、よく旅人が中継地として訪れるのに適しているらしい。
僕の時代の話でいえば、サービスエリアみたいなもんだ。
少しでかいのでまたちょっと違うが、感覚的にはサービスエリアそのもの。
城が無いということは王様が不在の街。
つまり、派閥に囚われない安全区という言い方も出来る。
どうしても国を成す場合だと思想が偏ってしまう部分はある。
それは統治者が全てというのもあるが争いに加わりたくない人達からしたら従わない、って理由のが薄いからってのもあるんだろう。
さて、そんなこんなで早くも二日程たったわけだが…
聞いていた通り、この辺は少し暑い。
この辺は気温の変化が激しいらしくスベラルからそこまで距離が開きすぎてるという訳では無いのにも関わらずこうなっているのには、一つ理由があると言う。
それは、活火山の存在。
厳密には水中にある活火山なのだが、火山から放たれているエネルギーがこれまた街にまで影響しているらしく、かなりの猛暑になりがちだと言う。
季節という概念自体はこの世界にもあるものの、季節に限らず猛暑になっているのはここだけだと言う。
またなぜここの街だけなのかという理由なのだが、基本的に城を築いてる土地周りは少し高めの位置に城下街が作られてる都合、活火山から離れがちつまり、火山のエネルギーが少しだけ逸れているというので猛暑を勝手に避けられているらしい。
「次の街、ドミニコスには猛暑故の風習がありましてな。それがこの世界では少し珍しいものでござる」
「猛暑故?」
「はい。猛暑を避けるためにグリーンカーテンというものが活発な都合、よく収穫物が育つんだそうで」
「グリーンカーテン、ってことは茎とかで熱を遮断してる、ってことですか」
「自然のパワーならば猛暑にも対応できようて。ってことらしいでござるな」
「思想はあまり広まってない街なんだよね?」
「うむ。中継地点として好まれているのもそこが理由でござる」
ひとまずはドミニコスで依頼などを受けて、賃金や滞在期間の足しにしよう。
街での情報収集なども必要なので、どうしても三週間程は滞在が必要になる。
まあ、久々にゆっくりしていこう。
色々と立て込んでしまっていたが、ようやく落ち着いた。
というのも、途中馬車の車輪が壊れてしまい修理になんやかんやと時間をかけているうちに半日以上費やしてしまったからだ。
こういうのは僕の得意分野でもないしセネガもハーティもあまり得意ではないため、必要以上に時間が掛かる。
それ故か、しっかりとした動作ができるまで苦労したものだ。
馬車引きさんは車輪が壊れるのを知るや否や近くの補給所まで馬を連れて走ってしまった為、僕たちがこの役目を。
補給所に行こうにも土地勘のあまりない三人だったから、馬車引きさんが率先して出向いたという訳だ。
修理の間は僕たちもさすがにお腹を空かせていたし緊急事態の為、元々支給されていた物資も少なくなってしまったのもあり、久しくお肉などが恋しい訳だが…
「そういえば、テオ。力に関してなのですが」
「うん?」
「これはあくまで推測なのですが、魔法継承の応用で、剣技などの模倣も出来るのでは?」
「と、いうと?」
「例えば私の槍術の記憶をメモリーストーンにして、セネガさんに刻んだとします。そしたら、実質私が二人分、みたいになりませんか?」
「あー…なる、ほど?」
考えてもなかった。
たしかに、力の制御が多少効くようになって、記憶を刻み込むという力を扱えるようになった訳だが、魔法の継承で記憶に刻み込むということができる以上そういうことも出来なくは…ない?
「ふむ…ですが無闇矢鱈にやるものでも無いかもしれないでござるよ?」
「と、いうと?」
「人間の記憶容量には限界がある以上、上書きしてしまえば古い記憶から抜けていくことになるでござろう」
「たしかに、幼少期の経験とかから来てる技術とかなら実質上書きになって忘れることになるかも」
「なるほど…」
要は非戦闘員を実力者クラスに引き上げることが可能かもしれないということであり、それがこの力の本懐であるのなら危険視されているのもうなずける。
たった一人で戦況を大きく変えることが出来る、というのと同義だ。
特に、モドキとの戦闘を実際にした人間となると数があまり居ないだろう。
そういう人間に、戦闘した際の記憶を上書き…するまでは良いが、経験値がゼロになってしまえばダメだ。
上書き可能と言っても、古い記憶を上から上書き、は恐らく物理的に不可能だろう。
そう考えると、使いやすいような使いにくいような…




