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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
国渡編

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夜明け。アニュラスの旅を終えて。

ヘルタの事情は全て把握した。ヘルタも記憶を取り戻し、進軍停止の命令を各個に伝えていた。そして、スーベルニカは撤退を始めた。


ヘルタだけではなくトップも来ていたはずだが、問題なく撤退を開始したあたり、なにか思うところがあるのだろうか。

いや、それよりも…


「すまない、ハーティ」


「私のことも?」


「思い出したよ」


ヘルタの忍びの里の頃の記憶も蘇り、ハーティのことも認識できたらしい。一件落着…なのか?

だが、余裕を持ってる時間もない。アニュラスを相当混乱させてしまったから、その分の国民のアフターケアも必要だ。


「スーベルニカは崇高な国だ。目的が達成できないのであれば、諦めるだろう」


「でもトップは野心に満ちているのでは?」


「マダスカル王はほんとのトップではないよ」


「ほうほう…んん!?」


ヘルタの口から告げられたのは、偽りの王であるという事実。それ故に今回の進行の撤退は本物の判断ということになる。


「ほんとのトップはヒグチ=スーベルニカだ」


「…あの、失礼承知でお聞きします。その人、異世界人では?」


「いや、違うよ。元々は別の名前だったらしいが、ヒグチ、というのは確かに異世界人の名前から取ってるね」


「異世界人…ほんとうに過去に僕以外にも」


「ふむ…では君が今代の異世界人なのか」


「そうです」


異世界人は記憶を司る。故に、狙われやすい、ということだった…だがスーベルニカは僕を狙った感じがしない。むしろ何かを試しているとすら思う。何故だろう、彼の目的は邪悪なのに、どこか異世界人への期待も感じる。


「詳しいことは僕も知らない。だが、ヒグチ王は過去異世界人と親密な関係だった、とよく言っておられた」


「それは、未知の技術を持ち込んだから?」


「それは分からない。だけど、君の力であれば真相はいずれ掴めるだろう」


真相…そうか。スーベルニカの目的の裏にもきっと何か真実がある。ならば、それを知った上で王の暴走を止めなければいけない。

王が本当に人であるならば、記憶を見つけられるはず。ならば、その記憶を王から引き抜き、思い出させる。


「ヘルタはどうしますか?これから」


「行く宛てがないからな…」


「ヘルタ殿!それならうちで自警団の団長をやらぬか!」


「ギルメイさん!?」


それは、身寄りのなくなってしまったヘルタに取ってはありがたい話でもあり、ギルメイからサポートを受けられる僕たちにとってもありがたい話だ。


ヘルタをスベラル自警団の団長に据えることが決まってしばらく。僕たちは一度サブラスに帰国することになる。ギルメイとヘルタとは途中で別れることになるが、一旦はアニュラスの平穏を守られた、ということで。


「ギルメイ…さすがに王様が最前線はどうなんだ?」


「ははっ、それもあるからお前に自警団の団長を任せるんだ」


スベラルは今後はあまり王様が自由に動けなくなるだろう。それは、ギルメイの命を守るためでもあり、ヘルタが代わり出勤することになるからだ。

スベラルはサブラスと同盟を結んだことにより、交易が盛んに行われるようになった。

そこではヘルタの知識も加わり、他の国からの物資なども仕入れられるようになった。


なぜヘルタの顔が広いのか。それは、スーベルニカの騎士団団長の頃。様々な国を渡り歩き、色んな国との縁を結んだから、らしい。

そう考えるとヘルタの洗脳状態も悪いことをしていた訳ではない…のかな。


「さて、帰ろう、みんな」


「テオ。サブラスに着いたら今後の話をする。一日ほど休んでから王宮を訪れてくれ」


「渡りました」


ハーティはヘルタとずっと楽しそうに話しているので、しばらくはそのままにしてあげよう。

忍びの里の出身…ということもあり、ヘルタが援軍=ニンジャ軍団の援軍、と思っていいだろう。


ハーティ経由で一応は里にヘルタが戻ったことを手紙で伝えるらしいが、ヘルタ自身も一度忍びの里に顔を出す、との事。


「ヘルタさん、忍びの里ってどんなところですか?」


「ああ、古臭い文化の残ってる寂れた場所だよ」


忍びの里は500年前くらいから存在する。その存在は公にはなってるものの、実際のニンジャを見た人は少ないと言う。

忍びの里…中立なのかどちらかに偏ってるのかはわからない。だけど、いずれ訪れることになるんだろうか?


「忍びの里にはいずれ遊びに来るといい。あそこはどの派閥にも属さない無所属国家扱いだ」


「え、国なんですか?」


「今はね」


ヘルタによると数年前、忍びの里は国として成立したらしい。小さな里だが、それでも国として成立する当たりを見ると、本当に無所属なのだなと思う。


もっとも、この世界における国の定義は交易をして得があるかどうか、らしいが。


忍びの里の交易って何するんだ…?忍具の取引とか?


「国として成立しているのはスベラルやサブラスのおかげでもあるんだ」


「へえ…」


近いうち、また図書館に行く必要があるかもしれない。


あれから数日経過。僕たちはサブラスに帰ってきた。 そして、気になることがあるので、再び王立図書館を訪れることになった。


今回はハーティもお供しているし、エルメロスも一緒だ。人数が多い方が探しやすい、ということで三人がかりで必要な資料を集める。


その中で、とある人物と再開した。


「よお」


「ニコラ!?どうしてここに…」


「王立図書館に用があってな」


ニコラは放浪の傭兵として世界を渡りあるているはず。それなのに再びサブラスに戻ってきている。ということは…なにかしらが動き始める、ということだろうか?


「で、お前は何探してんのよ」


「僕たちは3000年前の魔法撲滅戦争についてです」


「ははぁん…だが残念ながらその資料はここには無い」


「え…!?でも、ここはこの世界の全ての歴史があるはずじゃ…」


「そうだな。だが、魔法が潰えた日の資料はここには無い。誰かが隠蔽してるのか、はたまた最初から無かったのか」


僕がそんな話をニコラとしていると、ハーティが慌てて駆け寄ってきた。それも、すごい鬼の形相で。


「テオさん、これ!」


そこにあったのは、目的の資料ではないものの、歴代の異世界人と世界の関係について。

異世界人は度々この世界に訪れているが、その法則などを考察した資料、らしい。


「これが…なにか?」


「ここに書いてあるんです、重要なことが」


ハーティがそう言うと開いたページは、この世界の転換点に必ず異世界人が居た、という事実。つまり、異世界人が現れる時、世界はなにか大きな変化を遂げている、というものだ。


「転換点…じゃあ、僕が今いるのも」


「お前が呼ばれたのも転換点、ってことだろうなぁ」


「ニコラ、どこまで知ってるの?」


「さあ…?それは言えないね」


ひとつ。魔法の反映には異世界人の介入があったこと。ふたつ、魔法の撲滅もまた、異世界人の介入があったこと。また、その撲滅に関係した科学の発展は、異世界の知識からもたらされたもの。そう書いてあるのだ。


「魔法が異世界人の…?」


「テオの元いた世界に魔法はあったのですか?」


「いや…現実にはなかったよ。物語とか、空想の存在だったけど」


そこに、エルメロスがひとつの資料を持って現れる。それもまた、異世界人に関する資料だ。


「サブラス建国記…ここに、異世界によりもたらされた生活の基礎がある」


「えっ…!?どういうことですか?」


「人という文明を得たのもまた、異世界人のお陰、ということだろう」


それは、僕たちで言うエジプト文明やメソポタミアの様な人類の始まりとも言える文明が発達したのが、異世界…つまり、僕たちの世界よりもたらされた可能性がある、ということ。


この世界は常に、異世界によりもたらされた知識で発展を遂げてきた、ということだ。

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