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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
王立図書館編

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転生者の能力。記憶を読む力。

ここで一旦情報をまとめることにした。


記憶を覗けるのは生きている生物ならなんでも可能。


そして記憶は石となり、触れた人間に共有可能である。


また、記憶の詳細な遡り方は僕の集中力次第。


集中すればするだけ過去に、しなければしないだけ直近の記憶を覗くことが出来る。


そこら辺のさじ加減はまだちゃんと使いこなせないが、少なくとも今は二日前くらいまでは遡れるようになった。


感覚も覚えたから、色んな人に触れた時に二日前までなら遡れるだろう。


また、記憶が石になる原因はあくまで想像の範囲だが、僕の脳が焼き切れることを防ぐため⋯だと思う。


事実、記憶を石に触れて覗こうとした人はみな頭が痛いと訴えていた。


外部から急に膨大なデータを入れたコンピュータみたいな状態なのだろう。


脳の負荷が大きくなればなるほど、脳が苦しくなる。


そして、それを回避するための手段が記憶を形として具現化させておくことで、直接脳にインプットではなく、軽いインプットにして軽減、ということなのかもしれない。


もっとも、他に理由がある可能性はあるが、現状記憶は覗いた物が石になる。


そして他の人がそれを覗くことが出来る。くらいだ。


拡張性のある能力とはとても言えないが、ある種、映像が何時でも閲覧可能な手紙のようなものだと思う。

石になった記憶が消えたことは無い。


「その記憶が具現化してる石、名前があった方がいいな」


「名前⋯ですか」


ふとしたつぶやきだったので色々候補を上げてみたが、しっくりくるものが無かった。


少し悩んでいると、ハーティがふと呟いた。


メモリーストーン、なんて安直なものじゃダメですよね、と。


その名称に全員が賛同して分かりやすいし、何が記録されているかすぐ分かる。


ということでメモリーストーンと呼称することに確定した。


ただ、問題はメモリーストーンの持ち運びについてだ。


「それ、小さくできないのか?」


「うーん、どうでしょう⋯」


メモリーストーンは30cmほどの大きさで、とてもじゃないが持ち運びが簡単なものではない。


バックに入れるにしてもかさばるし、そう多くは持てないだろう。


それに、識別方法もあまり無く、どれがどの記憶の石かは一々触って確認しなきゃ行けない。


そこら辺の対策は現状の僕では無理なので一旦ニコラが俺に任せろ、と言っていたので言葉に甘えて頼ることにする。


「メモリーストーンで閲覧した記憶は抜けたりは?」


「ないと思います。本人も記憶を保持したまま、だと思います」


本人から記憶が抜け落ちたりは無く、単純に記憶を記録した媒体としてその場に落ちる⋯という仕組みらしい。


メモリーストーンと呼び名が決まり、ある程度の状況は整理できたが、その扱いには非常に困る部分である。


何しろ、消えないため、その場に残ることになる。そうすれば、悪役されたりの可能性もあるし、逆に記憶をずっと保存する人もいるかもしれないが。


だが基本的には悪用されてもおかしくないだろう。慎重に取扱の方法を決めなければ、変なことに使われたりは全然ありえるだろう。


例えばだが、記憶を悪用し、解析し、改ざんしたものを配布する⋯


とか、やろうと思えばいくらでも悪用の方法は思いつくが問題はやはり保存方法だろう。


今のところ、僕たちが持っているから危険はないが、メモリーストーンの大きさ的にもずっとそういう訳にはいかない。


然るべきところで、然るべき保存方法で守る必要があるんだ。


それこそ⋯王立図書館に記憶媒体として保存してもらう、とかだろうか?


「何かいい方法はないですかね?」


「うーん、どうだろうな。こういう媒体は戦争の火種になったりしかねない」


王族間の秘密を覗き見てそれをリユニ反乱を起こす、とか、王族間のトラブルを引き合いに国同士が戦争したり、とか色々考えられるだけでも沢山の不幸な使用例はあがる。


その一つ一つを摘み取るのは不可能だろうが、最愛のケースを想定して事前に何とかする方法は考えられるだろう。


もっとも、僕がこの世界でこれから生きていくためには記憶の取扱は特に注意が必要だ。


「このメモリーストーンって逆に記憶として渡せたりしないのか?」


「どうでしょう⋯今のところは無理ですね」


「そうか」


取り扱い方法にはみんなあまり良くない顔をしており、かなり悩んでる様子だった。


そりゃ、自分の記憶を悪用して悪事を起こされたら困る、というのは今この力を共有している四人なら思い浮かんで当然だろう。


ギルドメンバーは常に何かしらトラブルを抱えているし、あまりにも不利益を被るものは場合によっては国が隠蔽することもある。


そういうものを悪用されては困るのは当たり前だろう。


しばらく悩んだ末に馬車はいよいよ半分を通り越し、あと一日あれば到着出来るところまで来ていた。


「ともかく、この辺の問題は一旦持ち帰ってギルドの人の知恵も借りていこうじゃねぇか」


「む、ということはニコラは復帰するか?」


「そうなぁ、こいつの世話をするなら必然とそうするしかねぇだろうな」


四人はそういってギルド時代の話に花を咲かせ、まるで僕はいないもののような空気感になった。


僕はその間、どうすればいいのかをひたすら考えていた。


⋯思いつく方法はあまり無いが、もしかしたらモドキの開発技術を頼れば何とかする方法はあるのか?


なんて考えてるうちに、日が暮れた。


思いついた案をひたすらに皆で精査していく。


もちろん話の中で、機械化を推奨している推進派の力で何とかならないか?


という話は出たが、やはりどうもこの話に関しては厳しい意見が沢山でた。


サブラス王国では推進派はかなり厳しい立場におり、嫌悪する人間も少なくないと言う。


その嫌悪感のほとんどが、機械化による記憶の持ち越しができない以上、それは本人であると言えるのか、という人権的な部分の話に集約された。


だが、ふとしたエルメロスの話でそれは進展した。


「なあ、もしもの話だが」


「おう、どうした?エルメロス」


「この力を使って機械化されたモドキに本人の人間だった頃の記憶を与えてやれることが出来たら、推進派の立場は今より怪しくなるんじゃねぇか?」


その意見を聞いた全員が沈黙した。


思ってもみなかった、という顔だ。


基本的に推進派は嫌われているし、どうにかして立場を弱くしたい国は複数ある。


かと言ってすぐに行動を起こせば明らかにヒトガタ種族よりも力も技術も上の相手と戦うことになる。


それは、戦争をする上では避けなければ行けない。犠牲が多すぎるのだ。


「もしそれが可能だとして、どうやって推進派の鼻を折る?」


「それはまだわかりませんが⋯」


話し合いは黙々と進んだ。かなり慌ただしく、厳しい空気が漂っていた。


ハーティとギルメイはお互いの意見をディベートしあい、力の有用性と危うさを話し合っていた。


一方の僕とニコラとエルメロスは、その力の在り方を考え、訴えた。


「図書館で読んだだけの知識なんですが」


「なんか有益な情報が?」


「はい、あくまで伝承なのですが」


僕はこの世界の危機に瀕した時に世界がどうなるかの伝承を話した。


知識として興味が湧いたのもあり、事細かく思い出すことが出来た。


それに、もしあの伝承が本当なら、いずれ世界は推進派と反対派の戦争に巻き込まれ、終わることが確定してしまうのだろう。


そうなれば元の世界に帰る所では無くなってしまうし、自分の命だってあるか分からない。


伝承故に不確定に近い情報ではあるが、今持ちえる知識の中では比較的信用出来るものだ。


「ふむ⋯異世界から訪れた使者、か」


「⋯黙っていましたが、僕は異世界でこことは違う世界で暮らしていたんです」


不思議そうな顔をして、本当にそんなことありえるのか?とニコラが続けた。


もちろん僕だってありえないと思うし、信じ難い話ではあると思う。


だが、実際こうして体験というか実際に起きてしまっている以上、説明して納得してもらうしかない。


「⋯記憶が覗ければよかったんだがな」


「すいません、自分の記憶はどうにも」


そうして話していると、ギルメイとハーティが口を揃えてこちらに向かって所在はわからんが力の使い方は決めて縛っておいた方がいいと口を揃えて言った。

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