推進派。マダスカルという男
推進派との謁見の同席を許してもらった。
それは、直接推進派の動向を確認できるし緊急時は僕が王を連れ、ハーティが殿を務める動きがやりやすくなるのでこちらとしてはありがたい話だ。
それに、僕が同席する場合何かあれば嘘発見器としても機能する。
王はそれを望んでいるのだろう。
推進派の野望を知ることは推進派の目的を知ること。
それは中立の国にとっては十分判断材料になるし、国のこれからを決めるためにはもってこいだ。
同席する際、僕たちの事は紹介されると言う。
牽制の役割もあるだろうがサブラスからやってきた僕たちが表立って彼らと謁見することで、動きを少し遅らせることは可能だろう。
となれば、このことは共有した方がいいな。
「ハーティ、僕は少しセネガさん達に共有してきます。王の事は任せました」
「はい、任されました」
僕はハーティを王のそばに置き、廊下に出て、セネガさんから預かった暗部用の連絡端末に今の状況を共有した。
王と推進派の謁見に同席の許可せり。王宮付近にて待たれよ。
よし、これでいいはず。
あとは、どれだけ推進派の動きを止められるかだ。
マダスカルの動きはどうなるか分からない以上、僕たちも警戒して当たらねばいけない。
マダスカルを直接捉えられればそれはそれでいいのだが、そこまで上手くいくことではないだろう。
彼だって護衛の一人二人余裕で付けるだろうし、そうなれば実力次第ではハーティは手も足も出ない。
だから、ここはお互い睨み合いの牽制しあいで時間を稼ぐ。
サブラスとスベラルの援軍が到着すれば、少なくともアニュラスにおける推進派の動きは完全に止めることが出来る。
この国を、中立の国として存続させられる。
命運は僕にかかっている。
ならば、失敗はできないと緊張が漂う中、僕はハーティと王の待つ玉座の間へと戻った。
謁見はしばらくしてから直ぐ始まる。
直接マダスカルが出てくる可能性もあるし、代理の使者が謁見の可能性もある。
だが、確実にわかっているのはマダスカルはここにいるということ。
この国にとって訪れているということ。
要は、彼の側近あたりをとっ捕まえることが出来れば一気に推進派の喉元に近づける。
そうすれば形勢は有利で僕たちの安全もある程度保証された上での活動が可能になる。
いずれは推進派の中枢に旅しなければ行けない都合、安全の保証は絶対条件だ。
そうなるかどうかは、この後の展開次第だ。
ついに始まる推進派との謁見。緊張漂う王座の間では、既に僕やハーティがスタンバイしている。
いつ何が起きてもいいように、外ではセネガさんやじいさんが。万全な態勢で謁見に挑む。
「おお、これはこれは。マダスカル王、久しぶりじゃな」
「相変わらずのようで」
マダスカルは、若かった。
僕たちはもっと老齢の王様を想像していたが、その実20代~30代くらいの男がその場に現れた。
もちろん、王を疑うとかはないが、王の反応が正しいならば彼がマダスカル⋯
「して、そのもの達は?」
「彼らは記憶屋というもの達でな。我が国で色々面倒を見ているのだ」
「ふむ。だが謁見に立ち会う理由にはなってないようで?」
「彼らにはこの謁見の行くすえを見届けてもらうためにここに呼んだのだ」
「ほう⋯行く末、とな」
マダスカルは何かを察したかのように、王に牽制をかける。
「さては、そのもの達は異世界人、だな?」
「さあ、そこまでは聞いておらぬな」
「ははっ、ならばそういうことにしておこう」
こいつ、僕たちの正体を⋯!
そのうえで、何も出来ないだろう、という判断か!?
だが、僕たちにだってやれることはある。
それを見せつけることが出来れば、なんとか⋯!
「推進派はいよいよ兼ねてより進めていた計画を実行することにしたよ、アニュラス王」
「ふむ⋯計画?」
「ああ⋯アニュラスを、我が手中にするための!」
その刹那、マダスカルの懐の男が斬りかかる。
だが、間一髪。
これはハーティが受け流す。
だが、それだけに留まらず、また斬りかかる。
しかし、これもハーティが追い払う。
本格的に作戦を実行してきた、ということはもはや暗殺ではなく王国内で反逆として処理されかねない大胆な行動に出るという事だ。
それは、宣戦布告のような意味合いもあり、この場にいる全員が処刑の対象だ。
マダスカルは真正面からアニュラスを潰しに来たのだ。
ここからは、きっと本格的な殺し合い。
僕はアニュラス王を連れて、兼ねてより計画していた王宮の最速ルートで逃げることにした。
もちろん、セネガさん達には援護の要請。
彼らは、時間を稼がれることを見越して大胆な行動に出たのだ。
ということは、援軍が来ていることを既に察知していることになる。だが、それを知るのはーー
ふと、マダスカルの隣を見た。
そこにはーー不敵な笑みのヘルタが居た。
逃げる途中、ハーティにヘルタについて聞かれる。
「テオ、あれは間違いなく私の探していた!」
「くそ⋯!どうなってるんだ⋯!」
僕はハーティの声も届かず、ただただその状況に混乱していた。
ヘルタは、推進派を内部からスパイしている立場だったはず。
ならば、このような行動は推進派を潰したい立場の国にとって不利益すぎる。
そんな軽率な行動を彼がとるとは思えない。
故に、混乱していた。
彼は、確かに推進派のスパイであると宣言した。推進派の機密情報を僕たちに教えたのも彼だ。
だが、あの表情はまるで、罠に掛かる馬鹿な動物を見下す目だった。まさか、嵌められた⋯!?
ええい、考えても無駄だ⋯!
「ハーティ!今は逃げることが優先だ!きっと、国門付近まで援軍が来てる!そこまで逃げ切れたら僕たちの勝ちだ!」
「では、護衛は私がしっかりやり届けます!ですがーー」
その後のハーティの言葉は僕には何も聞こえなかったがヘルタのことだろうか。
それとも⋯いや、しかし今は逃げるのが最優先でアニュラス王を今失う訳には行かない。
暗部用端末をボイスチャンネルに接続し、通信を試みる。
頼む、出てくれ。
「ザーッ⋯殿ーーがーー」
クソ、まともに聞き取れない!
どうなってる!?電波ジャックか!?
ここまでの行動を、全てまるで知っていたかのように彼らの一手一手が見透かされているかのような。
それを可能にするのはヘルタ以外ありえない。
ならば、やはりヘルタはーー
僕たちが王宮の出口にたどり着いた時、目の前が光った。
「こちらじゃ!」
じいさん達と合流できた。
どうやら、セネガさんが通話が機能していないのを察知し、直ぐに予め決めておいた逃走用のルートに合流してくれたらしい。
ここからは、ハーティの受け身に加えてじいさんの魔法、そしてセネガさんの援護が受けられる。
「テオ殿!これは一体!?」
「わからない!奴ら、暗殺するにしては大胆だ!」
「あ、暗殺!?誰を暗殺するというのだ!?」
「アニュラス王は今日、この日殺される様に彼らが計画を進めていたんです!」
「なに⋯!?」
「彼らは推進派にアニュラスを取り込み、中立派を瓦解させて自らの立場を主張する気だったんです!」
それを聞いた王の顔は青ざめておりまさか⋯と節々に言っていた気がするが、僕たちは既になるようになれという気持ちの元、逃走するしか無かった。




