スーベルニカの思想。機械の果てに。
王様からは推進派の目標を沢山聞けた。
スーベルニカはいずれ三国同盟を解除し、二国を吸収し、ひとつの国家にしようとしていること。
機械だけの人類を支配した先に永遠の同じ時間があること。
そして、アニュラスは中立を保ってる理由が過去の王様の意向にそったものだということ。
つまり、今の王様にはどうやっても推進派と否定派どちらかに肩入れして中立を解除することが出来ないということであり、それは同時にアニュラスという国の末路を示していた。
きっと王様はアニュラスを乗っ取ろうとしていることにも気づいているだろう。
気づいた上で、自分にはどうにも出来ないから受け入れざるを得ない、そういうことだろう。
「国王、失礼承知で意見よろしいですか?」
「ふむ⋯」
「中立であり続けるのなら、スーベルニカの謀略を許しては行けません」
「それは、あやつらの言いなりになるな、という忠告か?」
「いえ。奴らはアニュラスを吸収して国民全員を機械化させるつもりです」
王様は少し難しい顔をした。
それは分かってはいたが、どこからその情報を?というような顔だった。
つまり、王は既に知っている。
この後のマダスカルによる暗殺を知っているということだ。
「しかし、止める術はないだろう?」
「いえ⋯我々が王をお守りします」
「なに?」
「僕たちの援軍がもう少しで到着予定です。そうすれば、国に潜む推進派軒並み排除できるかと」
だが、王は頷かなかった。
良いと言わなかった。
それは国を思うからか、国の存続次第で国民はいかにもなってしまうからか。
王としての責務の放棄となってしまうから王としては許されざる結末になるだろう。
推進派と今衝突するということはアニュラスが否定派として戦争に参加すること。
そうすれば、自ずと国民は戦争に駆り出される。そうなれば、守るべき民を見殺しにしてしまう。
王様としては立派だ。
その判断は王として間違ってないだろう。
国民のために手出ができないし、何もしない。
だけど、不干渉ではいない、そのスタンス自体は素晴らしい。
だけど、過去の呪縛に囚われたままなのであればそれはきっといずれ訪れる破滅を受け入れることになる。
「中立であり続けることはきっとこの国にとって一番いいでしょう。この国は武力を持たない方がいい」
「アニュラスが舐められている、と?」
「いえ。アニュラスが戦争に参加する必要はありません。それは、サブラス王からの伝達事項でもあります」
ー数週間前ー
「テオ。王との謁見を漕ぎ着けるなんてやりますね」
「記憶屋としてこれからサブラスを背負って活動するなら王様直々に許可を貰わないとね」
サブラス王への謁見は僕たちの独立を宣言するためのものではなく、サブラスの加護を受け続けた。
そしてサブラスの思想を広めるためという側面もあった方がいいというのは、エルメロスやニコラの受け売りだが実際活動するならそうした表立った理由があった方が色々都合はいいだろう。
エルメロスは僕たちが記憶屋として活動するというのを聞いた後、直ぐにサブラス王との謁見を提案した。
エルメロス経由の話であればすぐに謁見にありつけるのはわかっていたし、彼は国を任されている身。
その彼がそうした方がいい、と言うということはそれなりに理由があっての事。
それなりにこちらに得があっての事だ。
ならば、断る理由もないし、受け入れない理由もない。
僕たちは支度を追え、王宮へと赴いた。
「テオ=ランドネルとハーティ=スペルベット、到着しました」
「謁見の予定があることは聞いている!通れ!」
衛兵からの挨拶を軽く会釈し、僕たちはそのまま王座の間へと足を運ぶ。
もちろん、ハーティは国の戦力をになっている1人。
それを借り受けるというのであれば、ちゃんと国に挨拶をするのは礼儀だろう。
既に3大戦力であるギルメイが欠けており、国としては手元に置いておきたい理由もそれなりにあるはずだし、それ相応の理由を伝えなければハーティと旅することの許可は貰えない。
そう思っていたがーー
「ふむ。ハーティと旅をするか」
「ハーティが居なくなることは国にとっては損失と同義なのはわかっています。ですがーー」
「ハーティにはいずれ他国への連絡係をやってもらいつつ国防に当たってもらう予定だったのだ。それが、こちらにとっても利のある男との旅、であれば止める理由はない」
「でも、ギルメイさんがスベラル王家に戻って不在になった直後ですし⋯」
「問題ない。サブラスは武力の国である。戦力はいくらでも増強出来る」
「では、武力の使い方を僕に一任する、と?」
「そうなるな。武力がある、というのは脳筋になっていい、ということではない。然るべき時に守るべきものを守れる力であらねばならん」
「記憶屋を通しての情報は逐一サブラスに共有を?」
「うむ。暗部部隊が各国に潜伏してるのは聞いてるな?」
「もちろんです」
「あヤツらを使うといい。連絡用の端末を持たせてある。共有はすぐだろう」
サブラス王は、理的で凄く温情のおる方だと聞いていた。
その噂にたがわない懐の太さと話のわかりの良さ、それを僕はまじまじと実感した。
サブラス王はアニュラスを中立であることを否定しなかった。
そういう国が居なければとっくにこの世界は世紀末になっていたと、サブラス王はそういった。
世界の均衡は中立国が間に入ることで保たれる。
それはどんな時も変わらないしもし中立が無いのなら、戦争に明け暮れる日々がやってくるし、人が沢山死ぬ。さらに今回の場合相手は機械だ。
一方的な蹂躙に他ならない。
なれば、人間と機械を取り持つ中立が、平穏を取り持つしかない。
実際、アニュラスは中立を掲げる国では一番でかいし、ここがどちらかの派閥に偏れば、ドミノ倒しのように中立が崩れていくだろう。
そうなれば、機械化がひたすら進み、世界は終わらない日々を送るだけのディストピアが完成するわけだ。
この世界は異世界の文化を取り込みすぎている。
だから、推進派が立場を強くすればするだけ、この異世界は僕のいた世界と同じようになっていくだろう。
近代化。戦争に次ぐ戦争が沢山起きるだろう。
それこそ地球のように戦争をして、降伏させて取り込んで⋯そうして領土を拡大し国取りゲームをする。
だが、推進派が手網を握れば世界をひとつにするなど容易だろう。それは、全てが機械になってしまえば全部が手中に入ったようなものだから、だ。
実際、半分は行かないが多くの国が推進派に取り込まれて、既に機械だけで運営されている国もあると言う。
お金のやり取りがないし食べ物などのせいで滅びることもないし、定期的なメンテナンスだけで永遠と動き続けることが出来る。
人類の存続、だけならそれで完遂だ。
だが、完全支配が推進派の最終地点なら存続以前の問題だ。
そこまでして生き延びたのは果たして人類の存続と言えるだろうか?
そもそも感情がない、記憶が無く同じルーティンを繰り返すだけの物体を人類と呼べるのだろうか?
記憶が宿るのは脳みそだとも魂だとも言われている。
ならば、人類である証明はそこなのではないだろうか。
「アニュラスが絶対中立を掲げてるうちはサブラスが責任をもって推進派からの進行をお守りします」
「だが、それは否定派の肩入れではないか?」
「そこは、いいように外交を進めたりで取り持てるように間に入ってもらう国を探す必要はありますが、サブラス王には考えがあるみたいなので」
「ふむ⋯テオとやら、この後の推進派との謁見。お前たちも同席しろ」
「それは⋯いいのですか?」
「よい。我が許す」
そうなると、少し話は変わってくる。




