難航する作戦会議
本日より更新頻度が一日2回
平日(土日更新分調整中)9:30、16:30の2回になります。
また、それに伴い1000文字に落としていた文字数も3000に復帰いたします。
さて、会議の内容がないようだけに結構盛り上がって⋯というよりは激論が繰り広げられている。
王様を守るのが今回の役目ではあるのだが、それが難しい、という話だ。
あくまで僕たちは謁見する立場。
その謁見を崩してまで護衛、というのは王様もいい思いをしないだろう。
それに、根拠の無い暗殺計画なんて話しても、僕たちに不信感が募るだけ。
如何に自然にフォローして王様を助け出すか、というのがこれまた難儀だった。
まず、僕たちが謁見後に推進派との謁見の場に現れたら、明らかに怪しまれる。
それはもう、怪しくて怪しくて誰だお前!になるだろうしなんだこいつ!ともなるだろう。
それくらいには気を使わなければいけない案件なのである。
そして、謁見に援軍は間に合わない。
もし間に合うとしても、時間稼ぎをしなければいけない時間が出来てしまうだろう。
どれだけ見繕っても援軍到着は暗殺が実行される予定の時間から半日ほどズレている。
駆け足で来たとしても間に合うはずがないのである。
どれだけ馬を早く走らせても、時間の短縮は難しい。
それは、馬が単純に速度が出ないから、とかそういう話ではない。
既に外は推進派の輩がゴロゴロしている状態で、その中でサブラスやスベラルの援軍と聞いて黙ってはないだろう。
どれだけ早く到着しても足止めを食らう、ということである。
その足止めもどれくらいで突破できるか分からない以上、どうやっても暗殺に間に合わない。
僕たちが暗殺を止めようとしても、戦力が足りない⋯
かなり、詰みに近い状態ではある。
なにかあと一つでもピースがあれば、この状況をひっくり返すことは可能だろう。だが、そのピースを現状持ち合わせていない。
僕は張り詰めた空気から一度空気を変える為に、宿の外に出ることにした。一度会議を中断して各々休憩、という形の思考の整理時間だ。
この時間、流石にバーは人が沢山いるな。
いかついお兄さんに、ヒョロガリの冒険者にーー
まて、見知った顔が居る。
それに、こんな堂々とここに居ていいのか?という人物がそこに居た。
ヘルタである。
まてまて、彼が今いるのはおかしい。
推進派の護衛だぞ、彼は。こんな所で油を売ってていいはずがないだろう。
それに、彼は所謂スパイの立場。
表立って何かをやって噂にもなれば身が危うい立場のはずだ。
休息、にしては周り見すぎている。周りにはバレてはいないだろうが、あれはセネガさんがよくやっている周囲の警戒かつ目的を探している時の挙動だ。
近くで何度か見ているので、間違いない。
ヘルタが探す人物はそんなの限られすぎていて、嫌な予感を感じつつも、接触を測る。
ヘルタの隣の椅子に座りこみそして自然な流れで飲み物を注文し、そして机を二度ほどトントン、と指で鳴らし彼の注意を引く。
これは、なにかあった時のためにセネガさんが教えてくれたシークレットサインだ。
意味は、私は今ここに来た。
まあ端的に言うとこの場にいるから気づいたら反応しろ、的な意味合いのサインだ。
ヘルタは少し酔いが回ってるのか二度ほど飲み物を飲んでから、僕の方を向き直した。
そして、とんでもないことになったと言わんばかりの顔で僕に愚痴を垂れ流す。
「⋯止められなかったのは俺のミス。でも、いい感じにハーティを誘導してくれてありがとう」
「たまたま、ですよほんとに」
昨日、推進派のトップが街に来るということでパレードのような形に街中が盛り上がっていた。
当然、その知らせは本来であればハーティにも行くのだが、そこは上手い感じにセネガさんに誤魔化してもらいつつ、ハーティを外に連れ出すことでヘルタとの約束通り、接触を回避させた。
その見返りを求めているというふうな雰囲気ではないあたり、本当に想定外なことが起きたということだろう。
少し息を整えて、僕にひとつの紙を渡してきた。
「⋯護衛隊の任務内容、ここに書いてある。本来なら見たあと燃やすようになってるが、クスネてきた」
「そんなこと⋯バレたらやばいのでは?」
「ああ。だからたまたま落ちてた、ってことにしてタイミングみて燃やしてくれ」
ヘルタは酔いを冷ますように手元の水に手を伸ばして二口ほど口をつけた後、再び僕に語りかける。
「暗殺、実は王宮内に推進派に通じてる奴がいるんだ。そいつが王様が無防備な時に合図したら実行するってことになってる」
「⋯炙り出せと?」
「まあ、無理だよな」
無理なお願いは普通の人な断るだろう。
だが、ヘルタの続きの話を聞いて、「断る」という選択肢は完全に消えた。
「もし、その男を炙り出すのに成功したら、時間が稼げる。少なくとも、君たちの援軍到着の時間くらいは余裕で稼げるくらいら推進派との伝達に混乱が生じる」
「機密情報、じゃないんですか?」
「そりゃね。でも、君には秘匿する術もあるだろ?」
秘匿する、というのとはちょっと違う気もする。
だけど、記憶を読める僕に下手に接触するというのは向こうにとっても要らぬ情報を与えかねない、という考えがあるのなら無駄な接触は避けるだろう。
それがある意味避ける術、といったらそうかもしれないが。
おそらくヘルタが言っているのは他の異世界人が出来た自分の記憶をストーンにして保持する。
そしてストーンに移した記憶は自分から抜け落ちる、という一種の自衛方法の事だろう。
文献でしか見てないから正確なことはわからないが、そうやって何度か生き延びた記録が残っていた。
だけど、僕はそんなこと出来ないぞ。
⋯とは言える空気ではないのは分かってる。
ここは大人しくヘルタの話に乗るべきだろう。
「ハーティは強いよ。僕が認めるくらいには。でも、あの子は不意の出来事に極端に弱い。要は不意打ちは避けて通らなければいけない、ということさ」
「でも戦場で不意打ちをさける⋯というのは難しいのでは?」
「だろうな。だからこそハーティと推進派の接触は避けてもらった」
「その理由聞いてませんでしたね」
「⋯単純な話だよ。推進派は今回の暗殺を成功させるための切り札を隠してる。その切り札を無駄に使わないためのダミーの切り札も用意周到ってくらいに用意してな」
そのダミーの切り札を不意に出されたらハーティで対処は無理、ということらしい。
確かに、見たことない兵器が目の前に来た時の人間の反応は一瞬思考が途切れるだろうな。
見たことないものに対しては一瞬だけ思考が停止する、考えるのを放棄する。
その瞬間をおそらくその平気は逃さない。
ハーティは、きっと死ぬだろう。
それを、避けるために接触はダメだと念を押したのだろう。
「ハーティはね、兄が死んだ時のショックもあるだろうが昔から咄嗟の判断を迫られた場面で動きがにぶるんだ」
「でもそんな感じなかったけど⋯」
「力で対処出来る、という無意識な判断だろうな」
「ハーティよりも兵器のが強い、と?」
「君は、兵器に感情はあると思うかい?」
「それは⋯ないでしょうね」
「その差が人間と戦う上では有利と言っても過言ではない」
兵器故に無駄な思考をしない。
兵器故に無駄な動きなどしない。
だが、人間はそうではない。
予想外の出来事があると、鈍るのだ。
その差は、人間と兵器の間に絶対的な差を産むのだと、彼は言う。
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