初めての依頼。三人の最高戦力。
確かに記憶が見れた、とニコラは話した。
少女のどう生きてきたかの記憶。
そして、石の方は記憶を覗いたあとも特に変化はない。
触ればまたいつでも記憶が見れると言った感じだ。
本人に記憶が無くなる、という訳ではなくあくまでコピーに近いものだと思う。
不思議なことに本人は記憶を見ても何も感じないらしいが、本人以外が触れると、確かにその人の記憶を見るとこができる。
なお、記憶に関しては少し曖昧な部分があり、見れる記憶は選べないし、ランダムだ。
これは、ニコラに実験に付き合ってもらった時に判明した事実である。
ニコラはこの時期のこの記憶を覗けるか?と提案してくれ、言われた通りの記憶を見れるか試したが、無理だった。
もっとも、能力の制御を出来ている気がしないので仕方ないのかもしれないが。
ニコラは実験に付き合ってくれた後、1つの可能性を僕に提案した。
「お前、この力で戦争を未然に防げるかもしれないぞ
ぞ」
「それは、どういう?」
ニコラ曰く、今回の一件は推進派の意見をめぐって対立しているというらしいのだが。
これがまた複雑で、ちゃんとした情報が伝わっておらず、ある程度曲がった情報が伝わっているらしい。
そこで、僕がこの一件で重要な記憶を持ち込み、それを相手方の国王に見せることで何とかできるのではないか?
ということだ。
もっとも、情報というのは何かのきっかけで間違って伝わる可能性は充分にある。
だからこそ、正しい情報をお互いの国に伝え、誤解があればそれを解き、何とかできる可能性があるということだった。
正直、よく分からない力を使って行くことになるから自信はないが、僕としてもこのまま巻き込まれて死ぬのはごめんだ。
要は、逃げ道はある程度塞がれていて、やるしかない、という状況だ。
だが、そこら辺のケアはちゃんとニコラがしてくれていて、ある程度戦力になる人物数人に声をかけたらしい。
僕の護衛兼トラブル時の対処のためだ。
早くて明日には合流してすぐさま国を発つ。
その方向で進んでいるらしい。もちろん、一刻を争う状況だから、無理とは言えない。僕もそれに賛同した。
移動は今回は馬車を使うため、ある程度時間を短縮出来るとの事だった。
ここまで辿り着く時と違い、自分の足ではなく馬の速度で移動できるため、願ったり叶ったりだ。
片道で約2日~3日かかると言うが、ギルド経由で訪問することが伝わるため到着と同時に門を通ることが可能らしい。
正直、ニコラが有能過ぎてちょっと疑う。
準備がある程度完了してたことから、すぐに出発した。
ギルドのメンバーの中でも指折りのメンバーが三人ほど、旅に同行することになる。
道中僕は作戦の精度を上げるために三人にそれぞれ記憶を覗き、石にするという作業をする中で、もっと具体的な部分で石に出来るように訓練することになる。
記憶を除くの自体はそこまでなのだが、石にする時に少し体力を持ってかれる。
それをある程度の精度まで続けた方がいいということで、馬車の中ではひたすら記憶を覗き、具体的なイメージを掴めるように練習する。
「自己紹介しとくか。【ギルメイ=ミシュルト】だ」
筋骨隆々の正しく戦死タイプの男は、ギルメイ=ミシュルトと自己紹介した。
三人の中では一番実力があるんだな、とひと目でわかるインパクトのある見た目のため、覚えるのにそう時間はかからなかった。
「俺は【エルメロス=パメタ】だ」
赤髪で腰に携えた大きな剣が特徴の男は、エルメロス=パメタと名乗った。
ニコラ曰く、剣の腕ならサブラス王国直属のギルド内では最高クラスだと説明してくれた。いわゆる、現地における最高戦力だ。
そんな男が僕のためについてきてくれるのは正直心強い。
「私は【ハーティ=スペルベット】です」
この中で紅一点の女性は、ハーティ=スペルベットと名乗った。
どれだけの実力かは二人に比べてひと目で分かりにくいが、彼女は槍を二振り携帯しており、槍使いなのが伺える。
女性は男と比べて俊敏性がある場合もあるのがゲームとかの知識ではあるが、彼女もその例に漏れず俊敏なのだろう。
「こいつらが一応はサブラス最高戦力だ。向こうでもし戦闘になったら勝てるかはわからんが、少なくとも死人が出ることはないだろうな」
「おいおい、そこは勝てる、って断言して欲しいな」
ニコラの厳しめの発言に、ギルメイが意気揚々と突っ込む。
気前のいい兄ちゃんという印象で、この急造パーティーの中ではムードメーカーとなるだろう。
自己紹介は馬車が出発してから暫くした所でニコラの仕切りで始まり、その後は少しの情報共有と雑談を満喫した。
その後、ニコラがさて、と口にすると僕の方へ向き直る。
「そろそろやろうか」
「そうですね」
練習というか訓練の時間だ。
まずは、狙った記憶が引き出せるように訓練する。
まだ僕の実力ではランダムな記憶の引き出しが精一杯で、とてもじゃないが指定して記憶を覗くのは無理だろう。
そこで、ひたすらに訓練し、コツを掴む。という荒治療気味の訓練を行う。
馬車内で訓練を続けていると、途中で魔物の群れに遭遇した。
だが、少し様子がおかしかった。
魔物の群れは一疋を追いかけるように走り回っていた。
尋常ではない様子で追いかけ回しているので、ニコラがそこで一つ提案をしてきた。
「あの追いかけられてるやつ捕まえてくるからよ、記憶よんでみろよ」
「えっ?」
「訓練がてらなんでこうなってるのか調べてみてもいいんじゃねぇか?」
確かに一理ある。
この力が状況把握能力として機能するか、それも大事だ。
何よりこれからやりに行くのはそういう行動だ。到着する前により有用性を確かめたいという意図もあるんだろう。
ニコラは僕の答えを聞くより先に動いていた。群れに追いかけられている個体を捕まえて、簡易バリケードで魔物の群れが侵攻しにくいようにしていた。
もっとも、バリケード作成は簡易的なものとはいえ、他のメンバーも手伝ってやっとすぐ出来た、というレベルだが。
そうした状況を作り出したニコラは、僕にその個体を差し出し、力を使うことを推奨する。
「では、行きます」
魔物の身体に触れ、意識を集中させる。
道中の馬車で少しだけ感覚を掴んだのだが、集中し、より深く覗こうとすれば深い記憶。
少しだけ集中させないとより浅い記憶、と僕の集中力に比例して覗ける範囲が変わってくる感覚があった。
今回必要なのは直近の記憶。
あまり集中しなくてもその記憶を覗くことは可能だろう。
意識を能力に傾ける。
ー数時間前ー
今から数時間前、それは魔物たちのナワバリ争いからだった。
この個体は、他の個体達がナワバリとして使っている場所に無断で踏み込んだ。
もちろん、本人にナワバリだと知っている様子は無いので、偶然中の偶然だろう。
だが、そのナワバリを見張っていた個体達がほかの個体を呼びに行き、不法侵入を罰するかのように追いかけ回していた、ということだ。
この記憶は、共有するべきか?
いや、一応周囲と共有可能である、という信ぴょう性をより確実にするために石にするべきだろう。
と、あまり意識していなかったが、記憶を覗き終わると同時にカラン、という音と共に石が足元に落ちる。
僕はそれを拾い上げると、ニコラに渡した。
「まあよくあるナワバリ争いですよ」
「すげぇな、魔物も行けるか」
「そういえば、確かにそうですね」
あまり深く考えなかったが、確かにそういうことになるのか。
記憶を所持して保管できる生物なら問答無用、とまでは行かなくともある程度融通の効く感じだろうか?
今回は魔物で試したが、これがモドキに効くとは思えない。
「ふむ⋯とはいえ、ヒトガタの種族以外にも有効なのはでかい収穫だ。よくやったな」
ニコラはそういうと不器用に僕の頭を撫でて褒めた。




