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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
アニュラス王国中立戦争

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テオの1日。怪しい老人。

ハーティと別行動するのは久々だ。


この日の僕は街をぶらっとしつつ、なにか依頼があれば受ける、という風な行動を取ることにした。


まずは朝の準備運動をこなし、カフェで食事する。


朝はやはりコーヒーとパンに限る。これはどこの世界でも共通だと思う。


この世界のコーヒーは苦味が少なく、口触りがいいので、日本のものより遥かに飲みやすい。


もっとも、苦味が少ない、といいつつも完全に苦くないって訳では無いのである程度砂糖など加えて甘くして飲む人もいる。


カフェインはしっかり入ってるようで、朝に飲むのにやはり相応しいだろう。


カフェイン摂取で目がバキバキ⋯とまでは行かないが、目覚めはかなりいいと思う。


行動するのに問題ないだろう。


食事のあとは広場の方に行くことにした。


あそこは子供達が集まる都合、小さな依頼が落ちてたりする。


子供たちの依頼をこなすことだって立派な仕事だ。


ああいう子はこの前の女の子見たいに、ギルドに発注するお金がなかったり様々な理由で依頼を出せないことが多いのだろうし、無料で受けてあげる。


その見返りとして、僕の能力をどんどん使い、覚醒に近づける。というのが出来るので、完全無償という訳では無い。


力の方はと言うと直近の記憶を見るのは安定してきたのだが、決まった時間の決まった記憶、というのを見るのはまだ少し難しい。


感覚としては記憶を見ているあいだはその人と同じ状態になるらしく、一時的に脳が処理しきれない部分も。


だから、自分が自分であると保てるラインである程度縛りが出来てしまう。


ここら辺を改善した時に、もっと深い記憶を覗くことが出来る気がする。


意識が吸われそうになったことは数回ほどある。その数回の経験から言うと、今僕に追える記憶は三年前くらいまでだ。


それ以上は意識がだんだん覗いてる人と融合して言ってしまう危険がある為、難しい。


もっともこの融合してしまう、という感覚。


これを完全に克服した時に譲渡ができるのだと思う。


記憶の譲渡は他人の記憶を自分の中に受け入れるといことであり、最初の感覚はとてもじゃないが気持ち悪い。


だが、それは能力を使う側次第では自然なものであるように感じるように出来るらしく、歴代の異世界人はみなその領域まで力を覚醒させている。


一方の僕はまだ力を制御しきれないどころか、譲渡すら出来ない。


メモリーストーンは、不完全な状態で能力を扱うが故の副産物なのだろう。


広場につくと、子供たちが遊んでいた。


今日はどうやら野良猫と遊んでいるらしい。


だが、一人の女の子が猫を持ち上げようとしたので、止めておいた。


野良猫は寄生虫がいる確率が高いがノミやダニなどだ。


故に、下手に触ると危険だ。


それを説明すると、残念そうに猫から離れ、餌をあげる方向になった。


餌を貰った猫は満足そうに去っていった。


子供たちはというと、特に異変はなさそうに見えたが

そこには見覚えのある顔がいることに気づく。


ああ、あの時の女の子だ。


母親とは上手くやれているのだろうか。


「あ、お兄ちゃん!久しぶり!」


「こんにちは。あの後、お母さんとはどうだい?」


「お母さんね、ちょっとだけ私に優しくしてくれるようになったの!」


いい方向になったらしい。


お母さんとの関係性は最悪そのものだったが、父親の残した記憶を父親と最後に話した人物から譲り受け、メモリーストーンにしてお母さんに見せることで、自分には父親との子供がまだ残っていることを気づかせた。


故に、母親の病状は少しだけ改善され、娘を受け入れるようになったと。


鬱病は様々な要因があるが、あの母親の場合は依存体質だったがゆえの大事な人物を失ったショックからくるものだ。


ならば、そのショックを和らげる物を用意してあげれば症状に変化があるかもしれない。


⋯というのはあくまで理想的な話だ。


実際はそこまで鬱病の人間が上手く克服できるはずがない。


今回はたまたま上手くいっただけであり、全員が全員そういう訳では無い。


でも、救えた、という事実はなにより誇らしく思う。


この実績は、精神的な部分で病んでしまった人をこれから救うのに役立つだろう。


PTSDとかね。


簡易的な記憶の譲渡はメモリーストーン経由のもののこと。


それはきっと僕自身が記憶を持つことがまだ出来ないため外に排出されてしまう、ということだろう。


慣れている異世界人ならおそらく、左手に記憶を覗きたい人や右手に記憶を譲りたい人、というふうに構えてノータイムで記憶の譲渡が可能だろう。


そんな感じの記載が、サブラスの極秘資料保管室の資料に書いてあった。


僕も早くその領域まで力をコントロール出来るようになりたいが、これがまた難しい。


力になれていない人間が力をコントロールするには、他人の経験と知恵がいる。


だが、今の僕にはそういった師匠と呼べる人物が居ないので、感覚と感だよりだ。


この先、独学でってのも限界があるだろうし、どこかで対策考えないとな⋯


子供たちの依頼を聞きつつこなしている一日を終えて、僕はだいぶお疲れモードになっていた。


ベッドダイブも考えたが、そろそろハーティが帰ってきているだろう。


ハーティは宿に帰ってるだろうし、宿までは頑張って帰りたい⋯と、帰り道。


酔っ払いに出会った。


不思議な酔っぱらいのおじさんで、おじさんはこちらをじっと見ては目が合うと目を逸らした。


明らかに怪しさ全開だが、僕がなにかしたのなら謝らなければいけない。


「あの、僕なにかしました?」


「ああ、君に少し妙な占いの結果が出ててね」


「占い⋯?おじさんは占い師なんですか?」


「ああ、そうさ。しがない街の占い師。そんなところだね」


「ふむ⋯占って貰ってもいいですか?」


「はて⋯見返りは求めるぞい?」


「これだけあれば⋯いいですか?」


僕は懐からお金を取りだし、おじさんに手渡す。何もしてないのに手渡す額としては結構な額出したと思う。


20ギルはだいたい日本円で換算すると2000円ほどだ。


「ほう、こんな身よりのないじじいにこんなに払うのかね?」


「おじさんが信用できると思いましたので」


「よかろう。何を占う?」


「そうですね⋯この世界のこの後の展開について、とか?」


「ははっ、面白いことを言う。いいだろう」


おじさんはそういうと瞑想のようなものを初めてその瞬間周囲の空気が変わった。


おじさんの周りだけ時間の流れがまるで早いかのように、空気が変わったのだ。


それは数分ほど続くがおじさんが占いを終えたと思われる瞬間、その空気は元の世界の空気へと戻る。


紙を取りだし、何かを記し始める。


その途中、これがこの後の世界の運命を分けるだろうと意味深な事を言われた。


手渡された紙には、難しい文字が書いてある。占いの結果、と言うやつだろうか。


「坊主、もし坊主の世話になってる国がヤバいってなった時、これをスーベルニカとの交渉の切り札にしなされ」


「それは⋯どういう?」


「そんなの詮索するのは無粋というもんじゃ。だが、占いの結果だけは教えよう」


おじさんはそういうと僕に紙を渡した後、再び元の位置に戻り、あぐらを書いて話し始める。


「この後、この世界は推進派の手によって機械化が今より進行するだろう。抵抗する国ももちろんあるじゃろうが、雀の涙程度じゃな」


「それは⋯機械が強いから?」


「まあそうじゃな。お前に、推進派は今より力をつけるだろう」


「⋯アニュラス王の暗殺が成功する、ということですね」


「それはどうだか⋯それはお前さんの頑張り次第だな」


否定をしない。


ということは、おじさんの占いの結果ではおそらく王様は推進派のトップとの謁見後、暗殺される。


そして中立の立場が崩れ、均衡が一気に崩れて推進派優勢に状況が一変するのだろう。


もしもしそうなれば⋯おじさんに渡されたこれが切り札、ということになる…のか?

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