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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
アニュラス王国中立戦争

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探していた男。推進派の内部。

ヘルタ。探していた男が今目の前にいる。この状況、好機だがどうするか。というか、ハーティはこのことを知っているのだろうか。いや、それよりもーー


「何故、僕のことを?」

「ああ、すいません。推進派は貴方を目にかけてまして。⋯とまあ、ハーティから事情は聞いてると思いますが」

「推進派が⋯僕を?」

「ええ。推進派は貴方を既に異世界人と認定しています」

「それは⋯能力的に?」

「まあ、それもあるでしょう」


なるほど。やはりアニュラスに来る途中に狙われたのは既に推進派に目をつけられてるってことか。納得した。だが、そうだとすると疑問はこの男の目的だ。推進派に引き込むのなら、わざわざ直接会いに来なくていいだろう。それに⋯恐らくはハーティの事も既に耳に入っている。


「あー⋯そうですよね。警戒モードになりますよね」

「推進派と聞いたら、ね」

「では、一人の男として話しましょう」

「一人の男として⋯?」

「ハーティは僕の会いたがってる。違いますか?」

「それは、あってる」

「なら、全力で阻止してください」

「それは⋯何故?」

「理由はまだ話せませんが⋯」


ハーティは会いたがってる。一方の当の本人は合わせては行けないという。これは、どちらを信用するかを試されてる、そんな気がする。信じるか、共に旅をしてきたハーティを信じるかだ。


その二択ならもちろんハーティ⋯なのだが、推進派が絡んでるとなると話はかわる。ならば、僕が狙われる以上にハーティが狙われる理由もなにかある、ということだろう。彼が言いたいのは、今推進派とハーティが接触してはまずい、ということだろうか?


「⋯都合が、悪い?」

「まあ、とても」


彼は推進派の深いところまで知っている。ならば、どこで何が起こるかも知ってるし、どれだけ危険かも知っている。そんな彼が、合わせてはダメ、そういったということは、危険度的にかなり高い⋯ということになるだろうか。


今ここでこっそり記憶を覗くのも手だが、推進派がどこで見てるかわからない。要は、従わないなら殺される。従ってもいずれ殺される。死期を選べと言われている状態、という認識のがまだいいだろう。


ハーティが接触すると都合が悪いこと⋯何があるのだろう。


と、考えても仕方ない。今は一旦彼を信用しよう。


「⋯推進派のトップ、いつ来るんですか」

「テスレル陛下は明後日、朝方に」

「なら⋯その時間、依頼を入れることにしましょう。ハーティには僕からはぐらかしておきます」

「⋯感謝します」


彼は深々と頭を下げた。少なくとも、頭を下げられて信用するな、はちょっと日本人としてダメな気がする。


ハーティには接触させない、というのは簡単だが、彼にも一応は立場というものもあるだろうが、情報という彼にとっても大事なものを担保にするべきだと思う。


脅しに対して脅しに返す訳では無いが、彼は情報を渡した。という事実で手を出すのを躊躇ってくれる、と僕は判断した。故に、聞き出す。

トップの情報を。


「推進派の今の一番権力のある人間はわかりますか?」

「権力のあるーーああ、そういうことか」


彼は直ぐに理解したらしい。周囲を警戒すると、自分の身だしなみを整えるように、セルフボディチェックをする。盗聴器とかそういう類があるかを僕の前で確認させるという目的もあるだろう。彼は襟元から盗聴器を取り出すと、それを踏みつけ、壊した。


「まあ人とぶつかってうっかり壊れたとかそういうふうにいえば問題にはなりません」

「⋯わかりました。でも、口頭で言うのはリスクは高い、そうですよね?」

「とはいえ、今のあなたではいらない情報まで見る可能性はある。違いますか?」

「うっ、それは⋯」

「ですので、これを」


彼は懐からなにやらを取り出した。機械、だろうか?形は元の世界におけるUSBのようなものなのだが、とてもじゃないがこれを挿せるようなものを持ち合わせていない。


「形はあなた方の世界の情報管理端末を参考に、ですがこれは下の方のボタンを押すと情報を開示するようになるでしょう」

「わお、近未来⋯」

「これはあくまでも僕が進入して得た情報の四分の一ほどです。ですが、あなた方の目的のための力にはなるかと」

「これを渡す代わりにハーティを近づけるな、ですね?」

「そういうことです。これを使う時は適当に拾ったとか誤魔化してください」

「⋯わかりました」


ここでこんな情報を得られるとは正直思ってなかった。というか、記憶を覗けるのも、僕がどこまで覗けるのかも彼は把握しているようだった。


どこまで推進派に情報が漏れてるのかわかる無い以上、僕も警戒を改める必要があるだろう。今以上に慎重に行動しないと、首元刺されるなんてこともあるかもしれない。


彼の言葉はあくまで忠告であり、守るかどうかは僕次第。だが、僕が最悪な一手には興じない。そういう信頼の元これを渡してきたんだろう。監視とか諸々が激しい中で、命があるか分からない状況で。


「ひとまずここに長くいるのはマズイ。僕は何も知らぬ顔でここを離れますよ。ご武運を」

「ありがとうございます」


彼はそう言うと、まるで忍者のような足乗りでその場を後にした。


僕は宿に帰り、持ち帰った情報を整理しようと思ったら、ハーティも帰宅してた。どうやら不発に終わったらしい。と、そうか。接触禁止令出さなきゃ行けないのか。


ハーティはトップが来ること知ってるんだろうか。まあ知らなくてもいいか。どっちにしろ連れ出すんだから。


「ハーティ。明後日、空いてる?」

「え?まあ、はい」

「ちょっと遠出しよう」

「いきなりですね」

「ちょっと近郊の依頼が入ってね」

「なるほど⋯わかりました」


思ったよりあっさりOKがでた。もっとこう、抵抗してくるかと思ったのに。思わずマジかと口に出そうになったが、必死に抑えた。接触については問題ない。次は情報だ。ハーティもいるし、ちょうどいい。


僕は懐から例の端末を取り出す。不思議そうな顔をするハーティに適当に裏組織から高値で買ったといっておいた。すぐ信じてくれたが、流石にここまで信じすぎるとあとが怖い。この子、変なのに騙されなければいいけど⋯


さて、情報はっと。推進派の深いところまで書いてあるが、これでも一部らしい。書いてあったのは、異世界人の扱いについて。おそらくこれをみて推進派に気をつけろというヘルタからの忠告だ。肝に銘じよう。


さて、内容は結構過激なことが書いてある。推進派が確保した異世界人はまず、脳の波形を確かめられる。異世界人はこの世界の人間とは違う波形を出すらしい。そのため、脳波で調べるというわけだ。


そして、能力を使った際の波形も調べられ、徹底的に脳を調べられる。次に、記憶の譲渡。これを研究するために脳を色々いじられるらしい。


たくさんいじり尽くした脳みそは悲鳴を上げ、最終的には廃人同然の状態にされた後、能力を使えるか実験されるらしい。


それは、歴代の異世界人全てでは無いが、推進派に捕まった異世界人は全員同じ末路だと言う。だが、未だに記憶を扱う術は完成していない。記憶の保存という部分でかなり苦戦しているようだ。


それはそうだ。一般の人間にも使えたら困る。それに、調べたらこの世界を救う可能性のある異世界人にだけ発現する能力らしいし、簡単に扱えるものではない。


廃人にされた異世界人のその後は、機械化されたモドキにされ、推進派の重鎮達にとって都合のいいことだけをするマシーンに成り下がるらしい。とんでもない尊厳破壊だ。


彼らはもしも元に戻っても脳みそがぐちゃぐちゃすぎて元には戻らないらしい。なんて、酷なことをする。

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