手がかりを探して。父親だった男の知り合い。
衛兵さんにスムーズに通して貰えたのは、やはり記憶屋が来る、というのを事前に知らせていたのがでかいだろう。
事情を説明中に僕たちが記憶屋であることを説明した途端、一気に話が進んだ。
この国にとって中立の立場を守れるかもしれない僕の存在は結構歓迎されているらしい。
もっとも、監視されてる、って感じらしいけど。
いい評判が沢山あればそれほど国からの信用も得られる。
そうすれば、この国での活動もやりやすいだろう。
それに、いずれはハーティの知り合いも探さねばいけない。
ハーティは幼なじみを探すのはもう少し待って欲しいと言っていたが、何かしら準備かなにかあるのだろうか。
その辺はハーティ本人ではないのでわからないが、ひとまずは依頼をこなして時間を潰そうってことになったんだったな。
さて、資料室までやってきた訳だが。資料はーー
「あ、多分これですかね」
ハーティが直ぐにみつけた。
もの探しをさせたらすごい才能を発揮し、めちゃくちゃすぐに見つけるようになった。凄い、まるで警察犬だ。
そんなこと言ってる場合じゃないな、よし、資料に目をとおそう⋯
資料には徴兵令を出した人間の名前を記しており、数名で一組のチームとして命令を出していたらしい。
そこで資料隣に生死の詳細が記録されていることに気づき、そして男のシュバルトという名前をみつけた。
生死の情報は⋯まあ、当然死亡か。
だが大事なのはそこではない。
そのシュバルトという男とチームを組んでた人間の中に、生存の文字が記されている人間が一人いた。
マウニ=サイモン。
彼は戦争でも数少ない生存者ということになってるらしい。
なら、彼ならば何かわかるはず。
そう思い、このマウニという男の詳細をギルドに持ち帰り、調べてもらうことにした。
国の名簿はギルドで共有されているため、忙しくてなかなか謁見の叶わない王宮の人間よりはギルドを頼る方が早いだろう。
結構いったりきたり往復してるが、それも苦ではない。
女の子の顔がとても悲しくて訴えかけてくるものだったから同情してしまった、というのはあるかもしれない。
あと、それと人の記憶でどこまで精神的なのもが変わるのか、という結果も見たいのかもしれない。
ひとまずはマウニだ。
彼を探し、シュバルトの生前の最後の様子を聞き出す。
そうすれば、今回の女の子からの依頼が完了するかもしれないとそう思って、僕たちは王宮を後にした。
ギルドに到着後に少し休憩を入れてから受付の案内人に、名簿帳の確認ができないか確認した。
そしたら快くOKを貰えた。
マウニという男がどこで何してるのか。
そこまで詳細なのは分からないだろうが、国にいるかとか、どの辺の居住かはわかるはず。
そうして、膨大な名簿からマウニを手分けして探す。
国全員の情報があるのだから膨大な情報量なのはわかりきってたことなので、なるべく早く見つかるように祈りながらやるか⋯
僕たちが名簿を必死に探していると、ギルドで飲み歩いていた数人の気のいいあんちゃんに声を掛けられ、なんと探すのを手伝うと言ってくれた。
後で賃金渡そう、チップで。
人手が確保できたことにより、その後の捜索はかなり順調だった。
名簿の真ん中くらいまで探していた時、ハーティがみつけた。
「ありました!」
「ほんと!?」
「マウニ、名前も一致します」
「よしよし、さて、詳細を⋯」
と、ここで手伝ってくれたあんちゃん達が反応した。
「あんたらマウニの旦那探してたんか?」
「ええ、そうですけど」
「俺たちはよく知ってるぜ!何せ、あの人の世話には何回もなってるからな」
「ほんとですか!?」
彼らいわく、今マウニは街の隅で防具屋を営んでいるらしい。
それも、ある程度高級趣向らしく、店をよく知る男たち曰く自分の防具で人が死んだなんて噂が広まっては困る。
ならば、確実に守れるように値段は貼る。ということだ。
確かに。
と、そうではないな。男たちにその店の場所を聞き、さっそく行くことにする。
男たちにはチップをお礼代わりに置いていった。
臨時収入だ!とめちゃくちゃ喜んでた。
任せたまえ、お金だけなら結構な額持ってるんだから。
店に行くと、確かに防具屋だった。
ただ、時間は時間なので、今の時間やってるかは怪しい。
とはいえ、いるかどうかの確認だけでもして帰ろう。
店のドアを叩き、反応を見る。
数秒の沈黙の後、ドアが開き、中へ案内される。
そこに居たのは、眼帯の男。
これは、おそらく戦争で失ったのだろうしまだ戦争の傷は癒えて居ないんだろうか。
「マウニ=サイモンさん、ですか?」
「ああ。その名前の男なら俺だな」
「お聞きしたいことがあって伺いました」
「俺にか?」
「ローニ=シュバルト、という男を覚えてますか?」
「ああ、あいつか⋯覚えてるよ。それが?」
「彼の生前の伝言などあれば、お聞きしたく」
「ふむ⋯なるほどな」
彼の事情を聞いてみると、とても納得できるものだった。
徴兵されてきたローニに、彼は妻と子供がいると知ってからは、自分の心配を優先しろとずっと言っていたと言う。
死んでしまったら悲しむからと。
死んでしまうのは惜しいと。
死ぬことより生きることのが難しいと彼にずっと言い続けたが、それは叶わなかった。
彼は、死んだのだ。戦争に負けて、死んだのだ。
マウニはその死に様を見ていた。
だからこそ彼の死に際、伝言を伝えられていたと言うが内容は、妻に対するものだ。
俺が居なくなっても娘を守ってくれ。そういう内容だったという。
だが、伝言が伝えられることはなかった。
彼の妻が、発狂するほど精神的に壊れてしまったと聞いたからだ。彼は躊躇ったのだ。
追い打ちをかけるように伝言を伝えてしまって良いのかどうかを。
結果的に伝えなかったしだからこそ、引けてを感じていたらしい。
僕は記憶屋であること。
彼の娘から母親と暮らしたいことを懇願された事を説明した。
自分の判断は間違っていたのかと自責の念に駆られていたが、それでも彼から記憶を譲り受けられないか交渉の結果は、まかせろ、との事だった。
彼の記憶から伝言をメモリーストーンにして、彼の生前の、死の直前の彼を直接見せれば⋯あるいは。
という期待からだ。
それから、彼からはよろしく頼むと頼まれた。頼まれたからには、
なんとかしよう、の記憶を届けて。
どうなるのか見届けてさらに壊れてしまったらそれまでだし、生前の彼の願いを受け入れてくれればそれでよい。
どちらに転んでも、正直いい結果と思いたい。
僕たちはそのままの足で再び闇医者のアジトへ訪れた。
記憶を確保したので試させて欲しいと説明すると、ふむ、実験じゃなとマッドな返答が帰ってきた。
この医者は怖いが、とりあえずはこの記憶を彼女に見せて経過を観察しよう。
彼女にメモリーストーンを触れさせる。
数分後、記憶を見終わったのが、反応を見るが、あまり辺かはないように思えた。
だが、彼女の目には先程なかった光が溢れてるように見える。
きっと、旦那の意図を理解してーー
「あああ!」
暴れられた。その日、一日中彼女は暴れていたらしい。
鎮痛剤も投与したが、暴れ続けた。
そして、暴れ終わったのに、彼女は反応が少し変わったと言う。
会いたい、節々に呟いていたので、最初は旦那のことかと思っていたが、どうやら女の子に会いたいということらしい。
これは⋯合わせるべきだろう。
女の子を迎えに行った。
要件は、母に会うこと、そして母の思いを知ること。
それだけであり、それ以上でもない彼女たちを引き合わせ、親子に戻すことが目標だ。
どこまで達成出来るかわからないが、それでもやらないよりは遥かにマシだしやって後悔のが僕は好きだから。
女の子を連れて、闇医者のアジトへ行く。
ここも結構慣れてきたが、それでも実験中のすごいのが沢山あるがこの人たち、感覚はあるんだろうか。
様々は事案に合わせた治験をしてると言うが、本当に様々過ぎて追いつかない。
足腰壊れて立てない人とか、手がない人とか。
鬱病患者とか、どの種類の医者なのか分からないくらいには治験の扱いが凄いことになってる。
これも全部推進派からの支援と援助あってのとこらしいが、そういう部分においては推進派は尊重されるべきだと思う。
問題なのは誰彼構わず機械にしてしまうその歪んだ思想であり、技術の発展に積極的な部分は褒められるべきだろう。
人のためになる技術なんていくらでもあっていいんだから、そこは素直に褒めるところだ。
と、そうじゃなかった。
彼女の記憶の母は今と変わらずだが、それでも久々の再開に喜んでいた。
そして、彼女に母親のメモリーストーンを渡す。
彼女が何を考えどう過ごしてきたのか、それを記録しているメモリーストーンだ。
同時に母親には娘が来たことを知らせ、経過を見る。
問題へ特には起きなかった。
母親は比較的安定した状態らしく、娘の方も嬉しいと言ってい母親にベッタリだ。
もっとも、そのベッタリを嫌がってないあたり、少しだけことが進んだ気がする。
母親は会話をすることが難しい状態だったらしいが、彼女が来てからなにかを言おうとしてる状態がずっと続いていた。
そこら辺はリハビリを重ねて何とかするしかないのだが、少なくとも闇医者は何故かものすごく喜んでいた。
どうやら精神的な部分における人の感情の揺れ動きを研究していた部分らしく、記憶ひとつでここまで症状が変わる、という事例を観測したことがすごく嬉しかったらしい。
どこまでいっても研究に研究で、頭がいい意味でおかしいな。
とりあえず、せっかくの親子の再開に水は差したくない。どこかしらで帰ることにしよう。
ハーティは⋯再開に喜ぶ女の子を見て、少し強ばっていた表情が緩んだが一安心らしい。
ならば、今日はこれで仕事完了でいいだろう。
宿に戻り、休もう。
ハーティには、もう少ししたら帰るように伝えよう。




