新種の魔物発見。故郷の味。
旅の道中は順調だった。
あ、そういえば道中面白いことがあった。
ハーティが道中珍しく馬車酔いしたのだが、これがまた不思議で、馬車酔いからの吐瀉物のコンボで馬車は止まって少し休んでいたのだが、なんと吐瀉物に釣られて魔物が現れた。
ハーティ曰く新種の魔物だそうで。そりゃあ吐瀉物に群がる魔物とか珍しいにも程があるだろ。
新種の魔物ということでギルドに報告すると賃金が貰えるとハーティが教えてくれたので、死体を持ち帰ろうと思ったのだが、もっと手っ取り早い方法があることを思い出したので一応メモリーストーンにしておいた。
とはいえ研究材料として死体の回収が必須なので、死体を回収する。
普通に死体回収だけだともちろん腐るので、ここで役に立つのがギルドから支給された防腐剤。
本来は長期保存したい食料に使うもの(体内に入れても平気らしいよ!)なのだが、珍しい新種ということで抜かりなく使わせてもらうことにした。
すごく珍妙な形をしている生物で、ネズミというかなんというか⋯
小さきものなのはそうなのだが、顔がものすごく不細工だった。
どれくらいかというと、欠伸した時のブルドックくらいの不細工さで、流石のハーティも顔面見た時に引いてた。
魔物は沢山見てきたが、ダントツでやばい顔、らしい。
ちなみに見てみて!と馬車引きの人には見せたがこれまた面白い反応をした。
ドン引きというなの何それ!?という反応。
もちろん見たことない魔物なので、発見したことを喜んでいたが。
まあ目新しいものってみんな好きだよね!僕も男の子なので大好きである。
ある程度ハーティの酔いが覚めたところで、少し馬車を引いたところには魔物の巣があった。
もっとも、低級魔物の群れなので、ハーティひとりで何とかできる数だったのであっという間に片付けていた。
その後、ハーティはなれた手つきで魔物の肉と毛皮を剥ぎ取っていた。
余ったぶんの肉は到着するまでの時間を計算し、少し多めに持つように防腐剤を。
必要な分は今日の食料として確保した。
毛皮はギルドに申請すればその量によって適正な報酬金をくれる。
それは、その国のギルド所属でなくとも受け取れる制度になっているようだ。
その辺は旅人が一定数居るので、旅人が路銀に困らないようにするためだろう。
まあもっとも貰える額は大した学ではないらしいが。
この辺が魔物狩りの依頼が人気ない理由だろう。
報酬のしぶさがその辺が足を引っ張っている。
まあもっとも業者的な人が居ないので、ある程度の人が狩らないと生活が回らないため、仕方なく狩って報酬受け取ってる人もいるとか。
今回のやつはイノシシ型の魔物で、一般的な魔物だからそこまでにならないが、中級くらいの魔物だと報酬がちょっと増えるらしい。
というのも、中級くらいの魔物はギルドである程度実力がないとそもそも依頼を斡旋して貰えないくらいには強いらしい。
僕がついて行こうものなら多分死ぬな。
ハーティは中級くらいなら軽くひねれますよと言っていたが、すごく怖い顔をしていた。
ハーティに逆らうのはやめよう。何があるか分からない⋯
とまあ、道中最初の方はそんな感じで順調だった。
問題は距離にして半分いくかいかないかくらいの時だ。
何故か馬が通れないように馬よけが仕掛けられていた。
誰が何のために設置したが分からないが、旅人はこれだと困るだろうということで、見つかったものに関しては壊しておいた。
馬よけはこの世界の馬が嫌いな魔物の形をしてたり、匂いだったり様々だが、今回は嫌いな魔物の形のハリボテタイプだったので、壊すのは比較的簡単だった。
まったく、迷惑すぎる⋯誰がこんなもの設置したんだろうか?
僕に土地の記憶を読めるほどの力があればそれもわかったのだが。
とはいえここは中立国の領地。
推進派が設置したとは少し考えにくい。
ハーティは念の為のハリボテを回収していた。
話によると、アニュラスには指紋や血液から人物を特定する技術が技術同盟の三国から卸されており、その精度も年々上がっているという。
推進派を否定してる立場の彼女たちが利用するのは問題ないのかと聞いたが、普段生活する分に不便がないようにと作られたものに関しては手をつぶっているらしい。
モドキの様に露骨に敵対意識のあるようなものでない限りは、世界の発展のためと見逃されているということだろう。
もっともこれから行く国は当たり前のように国民がそういった技術を日常的に利用する国だ。
変に使うのを躊躇って争いを産むよりかは確かに有難く使わせてもらうのがいいだろう。
にしても、まんま元の世界でいうところのDNA特定の技術だな。
異世界人のなかに医療系を取り扱う人が今までにいたってことだろうか?
もしそうなのだとしたらその人の話も聞いてみたい。
「やはりテオのいた世界にもそういう技術が?」
「ありますよ。医療だけならこの世界より遥かに発展してると思います」
「そこまで!?た、例えば?」
「うーーーん⋯あ、ハゲが治ります」
「えぇ!?ハゲが!?」
いやまあそこに関してはまだ発展途上の技術だから確実というはけではないのだが、どうやらこの世界の人間もハゲは悩みの種らしい。
子供みたいにハゲが治せる技術の話に食いつくハーティは少し幼く見えた。
⋯というか、ハーティって大人しくしてれば美人なのにこういう子供っぽいところ目立つな。
ムカつくとかは無いが、たまに心配になる。
悪い人に騙されないかとか、そう言う心配。
「アニュラスで使われている移動形式は移動する床だったり移動する箱だったり様々なんですよ」
移動する床、はおそらくエスカレータータイプの床のこと。
移動する箱、はエレベーターだろう。
すごいな、そこまで発展してるのか。推進派の技術は。
正直もっと昭和あたりとかそういう技術レベルを想像していたが、どうやらかなり現代に近い技術で色々発展しているらしい。
異世界人は近しい時代から呼ばれてる、ということなのだろうか⋯?
異世界人はみな軒並み殺されたという話だが生き残りが居ない、という可能性については濁されている可能性もあるしその可能性がむしろ高いという話だ。
だが、異世界人は今まで離れた時代に呼ばれているため、仮に生きててももしかしたらモドキになっているかもしれないともエルメロスは言っていた。
確かに、そういう知識あるやつをモドキにするのは一理あるが、だが記憶は引き継げないという話だった。
単に異世界の人間がモドキになることに意味があるのだろうか?
そこら辺の推進派の考えはわからないな。
当人ではないし、僕はまだ狙われてると確定した訳でもないし。
だが、もし見つけたら解放してあげよう。
人として形を保っていたら、の話だが。
「さて、ごはんにしましょう」
「今日は何にするの?」
「今日はイノシシの肉が手に入ったのでシチューにしますよ!」
「おお、シチュー!」
「あの、それでなのですが」
「うん?」
ハーティは少し恥ずかしそうにしながら、もしよければ僕の世界でどういうシチューがあったのか教えて欲しいと言ってきた。
なるほど、僕の口に合わせて作った方がいいかも?ということだろう。
そろそろ僕も元の世界が恋しくなってきてない、といえば嘘になる程度にはちょっと恋しさがあるし、ありがたい話だ。
ということで、僕の持ちうるシチューの知識をありったけ叩き込む。
⋯まあ、大体の場合僕の家ではシチューの素使ってたけどね。




