旅に出よう。中立国、アニュラスへ
あらかた依頼をこなす日々を過ごし、ここで出来ることは終わった。
依頼が消化し終えたのだ。
そのタイミングで、ギルドから外の依頼を受けてこないかと頼まれた。
サブラスで依頼をこなしてる間にその噂がどんどん流れて色んな国に知れ渡ったらしい。
僕も軽い有名人だ。
そしてハーティには話してあったが、旅に出ることにした。
出発は明日の朝。
今朝方のがいいだろう、魔物が少ないから。
ということらしい。
まあハーティが魔物が現れれば上級下位くらいまでなら何とかなるらしいが。
もっとも、そんな上級魔物になんて出会いたくないのが本音だが、出会ってしまうのが世界の理というもの。さけててもどうにもならないこともある。
ギルドからは魔物よけのオブジェなど旅に必要なものを支給して貰えた。
それも、国からは離れるが所属はサブラスのまま、という扱いになるらしい。
その方がサブラスの保護下で色々動きやすいということだろう。
こちらにとっても様々な支援が受けれて得しかないので、そこは気にする事はないだろう。
さて、どこの国から行こうか⋯
迷っていると、ハーティから相談を受けた。
それは、一度顔を出したい国がある、というものだった。
理由は知り合いがそこにいるから、とのこと。スベラルでは無いのは確かだ。
「『アニュラス』というここから南西に位置する国です」
「アニュラス⋯そこは、推進派?」
「いえ、中立です」
「ふむ、中立か⋯」
中立ということは推進派も否定派も分け隔てなく受け入れる国だということ。
確かに行くなら情報の集まる方がいい。
僕としても中立国の様子を見れるのはありがたい。
願ったり叶ったりな提案だ。
ハーティにそれを承諾すると、さっそく準備しますと馬車の予約をしにいった。
馬車は明日の朝7時頃の予約。
そこから約2週間ほどの馬車旅だ。
キャンプすることに抵抗がある訳では無いが、無事にたどり着けるか、という部分ではちょっと心配が残るな。
それは推進派に目をつけられてるから、とかそういうのではなくハーティがキャンプ慣れしてなさそうに見えたからだ。
料理や家事全般はこなせるとは言ったものの、旅の経験が極端に多いわけではない。
そこら辺が少し心配だ。
物資自体は支給されたものがちょうど二週間分と緊急用にさらに一週分の約三週分。
物資の方に問題は無い。
旅慣れしていない二人がいきなり旅をして平気だろうか⋯
まあ、考えても仕方ないしなるようにしかならないのだから、今から考えても無駄だな。
よし、考えないようにしよう。
それよりも向こうでどうするかを決めておくか!
向こうでは僕とハーティはなるべく離れないように行動することになる。
もちろん風呂とかそういうのは別々だ。
護衛という大変な仕事をハーティが引き受けてくれたのは正直ありがたい。
ギルメイとエルメロスは戦えたし、同じくらいの実力と聞いている以上ハーティに任せておけば大抵はなんとかなると思う。
もしハーティでもどうにもならなければその時はその時だ。死を覚悟してない訳ではない。
ここから先はいつ命を狙われるか分からない修羅の道だから十分に警戒して望むようにしよう。
さて、ある程度方針は決まったしゆっくり休むか!
朝、1時間ほど前に目が覚める。
そこにハーティの姿はなかった。僕を起こしたあとどこかへ駆けていったのだ。
なにかの準備があるのだとか。
一体なんの準備だろうか?
ひとまず、僕はハーティの帰りを待ちつつ、長旅の荷物を再確認し待つことにした。
30分ほど経ったあと、ハーティが帰宅したので、そのまま彼女と共に馬車の元へ急いだ。
どうやらハーティは怪しい噂で街が少し混乱しているため、情報集めしに出てたらしい。
今は国の衛兵達が混乱を鎮圧。無事に元の生活に戻る人が多くなったという。
「その混乱の元ってなんだったの?」
「あー、なにやら怪しい人を数人見た、ったことらしいです」
「怪しい人⋯ね」
「探し回ってもそんな人居なかったので気のせいだってことで収まったみたいですよ」
「ふむ⋯警戒意識高めようか」
「それがいいと思います」
いや、まさかな。
サブラスにもスパイは紛れ込んでいるとは言っていたが、そこまで大きく行動を起こすとは思えない。
彼らは常に慎重に事を運ぶのが好きな人達だと僕は勝手に思っている。
ならば大胆な行動は彼らの意思に反する行動なのではないか?
それに、推進派とはいってもスーベルニカなのかアカルハイムなのかヘルナードなのかはわからない。
いずれ三国には足を運ぶことになるだろうが、その時はしっかり変装出来るようにしておいた方がいいな⋯
もっとも、僕たちがサブラスを離れてる間のことは全くと言っていいほど情報が来ないことになる。
そうすると、国との連携は少し難しい。
が、途中でエルメロスの暗部が潜り込んでいる事を思い出した。
なら、その人たちを頼ればいいかもしれない。
まあどんな人たちなのかは分からない部分はあるが、多分そのうち会えるだろう。
こんなことならエルメロスに聞いておくんだった。
「ハーティ。会いたい人ってどんな人なの?」
「幼なじみです」
「幼なじみなのにどうして別々の国に?」
「彼、私に勝つために武者修行に出たんですよ」
「あ、そうなんだ」
「でも、アニュラスで目撃した、という情報が何件かあるのでもしかしてアニュラスに根付いて修行してるのかもと思いまして」
「なるほどね」
これでもしその幼なじみが推進派の刺客だったらどうしよう⋯
という不安こそあるが、とりあえずもしハーティの説得で仲間に引き入れられたらそれはそれでいい事なのでとりあえずアニュラスで依頼を受けつつその幼なじみを探すことにした。
中立国、というのも少し気になる。
まあ中立を保ってるということはどちらかに肩入れするということはなるべく避けてるだろうが、それでも推進派は色々暗躍している。
中立が保てなくなるのも時間の問題⋯という不安もある。
ならば僕たちがそこで色々やってここは危険な人がいますよ、って警鐘を鳴らしたり出来るならそうした方がいいだろう。
推進派だって記憶を覗かれるのは避けるはずだ。
特に幹部クラスのこいつらがボロだしたら一発だから慎重になるだろう。
とりあえずはアニュラスで腰を据えて、僕たちの記憶屋が名前を広がる過程を楽しみつつ、なにか大きな依頼があればそれをこなして行こう。
「アニュラスって中立なのは教えてもらったけど具体的にどういう国なの?」
「うーん、そうですね。ヘルナードから様々な生活が便利になる機械を仕入れて卸業者に売りつけて売ってるとは聞いてます」
「それ、大丈夫なの?」
「危険性は無いみたいですよ。もっとも、推進派で今一番力があるのがスーベルニカなのでヘルナードは警戒を緩めていいかもですね」
なるほど。
モドキが推進派の中心にいる以上、モドキの技術を進化させ続けてるスーベルニカこそが悪であり、他はあまり意識しなくてもいい、というものか。
一理はあるけど本当にノーマークってのは流石にダメだろう。
警戒するに越したことはない。
それにヘルナードから色々流通してるならヘルナードの情報は手に入るかもしれない。
「ヘルナードにはそのうち行くから、情報はあればあるだけ有難いかな」
「わかりました。なるべく情報を集めるようにはしましょう」
「よろしくね、ハーティ」
「いえいえ。貴方を守ることが仕事なので」
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