記憶の運び屋。国から国へ。
サブラスに帰った後、ギルドへ直行し今回の戦果報告だ。
ギルドを通じて国王にも知らせが行くので、洗いざらい報告することで国王は安心するだろう。
また、記憶屋開業の相談もした。ギルドの支援は旅をするなら受けられないが、その代わりに旅をする時の心得など様々な情報を貰った。
また、それに伴いハーティはギルドを脱退するための申請をしたようだ。
ハーティには付いてきてもらう。僕の護衛だ。
「記憶屋をやるなら記憶のやり取りで金は取るべきだな」
「いいんですかね?」
「記憶にはそんだけ価値がある。違うか?」
記憶には人の全てが詰まっている。
記憶を運ぶ、ということは人の人生を運ぶことだ。
故に、危険手当的な意味でも金を取るのは問題ないだろう、との事だ。
そして、ギルドでの支援こそ出来ないが各国に記憶屋が渡り歩くことは知らせが行くらしい。
宣伝だ。
宣伝することによって僕たちの存在を少しでも知らせ、僕たちを見つけた人たちが依頼しやすいようにするためだ。
記憶を運ぶ際、国から国へ渡る可能性も想定される。
故に、放浪の記憶屋、と名乗り行動する方がいいだろうとのことだ。
もっとも、記憶屋といってもそれだけでは何をやってる人か伝わりにくいだろう。
記憶を覗き、運べる人がいる。
その情報を各国に流しておくのだ。
取り合いには⋯ならないだろう。そこまでする価値があるかは正直自信がないから。
「ギルドの支援を受けれないのは誤算ですが、それでもサポートしてくれるのはありがたいですね」
「金銭のやり取りは正直自信ないです」
「そこら辺は私に任せてください!」
ハーティは所謂マネージャーポジションになってくれるらしい。
仕事の詳細や、どんなことをするかなど。
僕の仕事がやりやすいようにハーティがサポートしてくれると。
僕には記憶の運び屋に専念してもらいたい、という重いかららしい。
正直ありがたいが、何から何までハーティに頼りっぱなしってのは悪いことをするな、と思う。
本人はあまり気にしないだろうが、僕は気になっちゃうな。
色々手続き等終わらせ、ハーティはギルドを脱退、ということでこれまでの活躍に合わせ退職金が出た。
当面は困らない額だろう。とりあえず、暫くはサブラスに留まり、記憶屋としての仕事に慣れることから初めてはどうか?
というギルドの勧めもあり、ひとまずはサブラス滞在が決まった。
また、完全にギルドの管轄外にはなってしまうためサポート自体は出来ないものの、拠点としてギルドを使っていいとの事だ。
仕事の以来をしばらくはギルドが受け、それを僕たちが報告を受けて仕事しに行く形だ。
サポート出来ない、といいつつわりと手がたいサポートな気もするが。
ギルドが記憶屋の宣伝をするため、暫く広まるのに時間はかかるだろう。ちょっとの間暇になるな。
拠点こそ決まったものの、性質上決まった住居は持てないだろうから、宿に泊まることになる。
もっとも、その宿代も今回の仕事の功績もあり、ギルド割引を適用していいとの事だ。
今回仕事をしまくったのはギルメイなのだが、僕がそんな高待遇受けていいんだろうか⋯
「確かにギルメイありきの任務でしたが、それでもアドニスタさん達の記憶を届けてトドメを刺したのはあなたの功績です。自信もって待遇を受けちゃっていいと思いますよ?」
まるで、見透かされたように不安な部分をハーティに指摘され、自信もって記憶屋を名乗っていいと。
これから依頼が沢山来るかもしれない男がそんなに自信が無いとみんな困っちゃいますよ?と言われてしまったが一理ある。
記憶屋、を開業した所まではいいが、果たしてどんな記憶の運ぶ仕事が来るか。それは未知数だ。
依頼料も特に決めている訳では無いが、ハーティが仕事の危険度など総合して依頼料金を決める方針になった。
ぼったくりはやめて、と念を押しておいたので割高高額依頼、とかはさすがにやらないと信じよう。
「暫くは暇になっちゃいますね」
「そうですねぇ。でも、記憶は人にとって重要です。その分広まれば仕事は沢山あると思います」
「その、聞いていいかわからないけど、ハーティも過去なにか?」
「あー、それですか⋯」
ギルメイにシンパシーを感じている、と彼女は言っていた。
その事が引っかかっている訳では無いが、ハーティの事を知れば知るだけ彼女を信頼できる。
そういう思いも込めて、彼女に少し踏み込んだことを聞いてみる。
無理やり記憶を覗く、とかはしない。それは流石に倫理観が終わってると思うから。
ハーティは少しだけ沈黙した後、僕に過去の出来事を教えてくれた。
彼女にも兄がいた事。
その兄はギルドでも有名な腕利きの冒険者であったこと。
⋯そして、ここでも絡んでくるのが推進派であり彼女の兄は推進派の謀略により命を奪われたという。
もちろんどこまでがほんとかはわからない。だが、推進派が人の命を軽んじ、奪っているのはスベラルで実感した。
ハーティの兄は以来の途中でその力で武力的な行使を恐れた推進派によって不意打ちのような形で命を奪われた。
それは許されざることであり、推進派を恨むには十分だ。
改めて、記憶屋を通じて推進派に少しでも近づき、彼らの目的などを明確にして、見極めるべきだと僕は思う。
敵なのか味方なのか。
僕の力を使って判断する。その記憶は各国に持ち帰ってもいいし、広めてもいい。
記憶屋という仕事がこの世界のために活かされるならそれもまたいいだろう。
もっとも、推進派は技術の粋を集めた集団だ。
異世界の研究だってしてるかもしれない。
帰れる方法もあるかもしれない。
だから、推進派に接触することは僕にとっても重要なことであり、世界にとっても悪であるかを判断するのは大事な事だ。
ハーティには、推進派を見極めることを伝える。そのための旅であることも伝える。
いい顔はされなかったが、それでも彼女は僕の言葉に納得してくれた。
彼女もまた、この旅で兄の死の真相を知りたがっているようだったし、目的は一緒だ。
世界中に潜伏する推進派と接触を図る。それが当面の目的であり、旅の目標だ。
まあ、当面はサブラスで活動するが、サブラスである程度仕事をこなし実績を稼いだから国を飛び回る。
ギルド経由で記憶屋の扱いを伝えるらしく、おそらくは実績をしっかり積めればサブラスギルドと同じ待遇で迎え入れてくれるだろう、との事だ。
それは少しありがたい。ギルド割引で宿も取りやすいし、拠点としてギルドを使えるということは様々な情報が集まる場所で活動できるということだ。
それは、記憶屋にとってはとても大事だ。
もちろん、推進派と接触したいという目的を果たすためにも情報戦は有利に進めていきたい。
ちょっとでもいい方向のものがあればそちらを取るのは人として当然だろう。
誰だって悪い方向の物事は嫌だ。なるべくいい物がいい。そう思うだろう。
ひとまずはこの余った時間をどうするかーーと悩んだが、この時間を使って調べ物をしてしまおう。
「ハーティ。僕は大図書館に行きます。どうしますか?」
「あ、なら私も一緒に行きます。一人より二人のが効率もいいでしょ?」
確かにそうだ。
大図書館は広い。
一人では一日に調べられる量に流石に上限がある。手伝ってもらえるのは有難い。
ということで、ひとまずは大図書館で情報収集することにした。




