テオの提案。記憶屋へ。
スベラルの一件はこれにて完結。
僕たちはサブラスに帰り、このことを国王及びギルドに報告しなければいけない。
だが、スベラルの国王となったギルメイは国に残ることになる。
サブラス的にはギルメイという戦力を失うことになるが、スベラルとの友好関係の構築を考えたら安いものだろう。
それに、今回の一件で気になったこともある。改めて図書館に寄りたいと思っている。
「さて、帰るぞ」
「ですね」
ニコラの号令で僕たちは帰路に着くための馬車へ向かった。
馬車はギルメイがバタバタしている中で手配してくれたものだ。
また、同時に国王に対する友好の手紙を預かった。
国王が変わった知らせは近いうちに各国に渡るだろう。
そして、否定派を貫く元々のスベラルに戻ったことで、各国との関係値の修復が始まるだろう。
元々スベラルは友好的な国であり武力でこそサブラスには及ばないが、色々な派遣業を司っており、傭兵団的な一面もある国だと聞いている。
今回、ギルメイがトップになったことでそういった活動がまた活発になるだろう。
人手が欲しい国は五万とある中で、この仕事は大ウケだろう。
「さあ、帰ったらテオのこれからを話そうぜ」
「それなんですが、ちょっと気になることが」
僕は馬車の待つ城下町の出口である門につくまでに、この国で活動する中で感じた違和感や決めたことを色々話した。
身の振り方だが、この力で活かせる仕事がないだろうかということ。
また、それに伴った依頼等があればギルドに申し付けて欲しい、という相談だ。
そこに関してはまだちょっと分からない部分もあるので結論は出せないと口を揃えて言われたが、力を使った依頼などに関しては斡旋できるかも、ということだった。
ひとまず、仕事があれば食うに困らない。それに、ギルドのメンバーになれば住居が与えられ、生活基盤が整うまではサポートも受けられるということだった。
暫くはギルドに入ってくる記憶に関する仕事をこなしつつ、これからどうすればいいのか活かせる方法を探したらどうだ。ということだった。
異論は無いしもちろん、その仕事に関する部分でも調べたいことはあるし、とりあえずの仕事が入ってくるのであれば安心だ。
同時に、ニコラは今世界で起きていることを改めて話してくれた。
推進派による機械化が進み、何個かの国は推進派の勢力下に入ったこと。今回スベラルのように取り入られ来るってしまった国が出る可能性があること。
⋯そして、だからこそ記憶がこれから重要になるかも、ということだった。
そういえば、ニコラに最初にモドキの話を聞いた時、思想や人格は機械に移せても記憶は無理、って話だったっけ。
もし、この力を、メモリーストーンを誰かの記憶として譲渡する方法が確立できれば、もしかすると機械化された人たちをどうにか出来るかもしれないという話だった。
だが、そこの部分に関しては記憶がどこにあるものなのか、記憶とはどこに刻まれているのか。
という部分が重要であり、それが分からないからこそ推進派は記憶の引き継ぎを断念したという経緯があったらしい。
つまり、僕の力は完全にイレギュラー。何が起こるか分からないということだ。
「アドニスタさんに言われたんですよ、フェーゴ前王の記憶を何とかできないかって」
「うーむ⋯それは概念的な話かもしれないが」
「ニコラさん、逆に言うとそれが可能ならテオくんはもしかすると例の件、何とかできるかもしれませんよ」
「例の件?」
ハーティが説明してくれた。
今、この世界には失われた記憶が沢山あること。
その失われた記憶というのは図書館にすら保存されていない。
また、歴史の中で紛失してしまったものだと。
そして、この世界の言い伝えにはなるが、世界には記憶が宿るという言い伝えが誰しもが知るおとぎ話として伝えられていること。
世界の記憶、というのは土地自体が保存している記憶のこと。言わば、自然の歴史の記憶だ。
本当にそれを見ることが可能かは正直わからない。
だが、フェーゴ前国王の記憶がもし読めるとしたら、その世界の記憶へのアクセスが必要不可欠になってくるだろうと言うこと。
そして、ハーティは僕に一つ提案をした。
「ねえ、テオ。ギルドメンバーを護衛として使う気は無い?」
「ハーティ?それはどういう⋯」
「テオの力がもしこの世界に必要なものだとしたら、これからテオはその力を研鑽するために世界を回るべきだと私は思うの」
「ふむ⋯確かにテオは戦えないな」
世界を旅すしてそして力の制御をもっともっと精度をあげる。そうして、力を研鑽し、重ねていく。
そうすることで、可能性として浮上した世界の記憶へのアクセスの仕方を模索するのはどうか、ということだ。
「今のテオはまだ力の使い方もハッキリしてないんでしょ?」
「そうですね。感覚で何とかなってますが」
「世界は広いわ。もしかしたら力の使い方、わかる人と出会う可能性だってあると思うの」
「だがそんな力使える人間の話など聞いたことないぞ?」
「それは伝わってないだけかもしれないでしょ?私は少なくとも、テオが旅をするなら同行したい」
それはありがたい申し入れだった。
今回、ハーティの活躍はあまり無かったから、少しだけ気にしてる部分もあるのだろう。
実力をまだ疑われてるかも、なんて思ってる可能性だってある。
護衛という形にはなるが、確かに世界を旅することは一理ある。
流れでスベラルへ行くことになったが、僕はまだこの世界を全部は知らない。
世界を見て回ることで、よりこの世界への理解を深めることは大事な事だと思う。
「あー、俺はちょっと無理だな。すまん。案内はここまでだ」
「いえ。ニコラ、ここまでありがとうございます」
どうやらニコラはやるべき事があるらしく、旅には同行できないということだった。
同じくエルメロスもついていけないということになった。
内緒にしているが、エルメロスは暗部所属で国の管理下にある人間だ。
それが国を離れる、というのはかなり難しいのだろう。
つまり、必然的に今この場にいるメンバーで同行出来るのはハーティだけということだ。
「テオ、この土地に詳しくないんでしょ?」
ああ、そうか。
ニコラは僕のことを説明する時に、旅をして流れてきた放浪人、という説明をしていたのをチラッと聞いた。
今、この世界の人間でないことを知るのはなんとなく話したニコラだけである。
故に、ハーティはその事を知らない。
まあ、いずれは知られるだろうが、今は混乱をさせてしまうかもしれないから確実な情報になってから伝えた方がいいだろう。
主に、転移が可能なのかとか、異世界が存在するかとか。
もっとも、そこら辺は図書館には無い情報だ。どこで手に入る、という保証は無い。
「私、これでも戦えるし、料理も出来るの。だから、悪くないと思うわ」
今回はそもそも国総出で人手が足りてなかったのをたまたま何とかできそうな僕を立てたニコラが仕事として、依頼として持ってきた話だ。
ギルドから食料等の支給はされていた。
料理する、というのは必要ではない工程だったのだ。
そのため、ハーティのその辺の特技を活かすことは無かった。
旅をするーーということで、元の世界に居た時に、なんとなくそんな話があったな。
ということで、僕からもひとつの提案をした。
「ではこういうのはどうでしょう。世界を渡り歩き、人から人へ記憶を届ける仕事ーー記憶屋、を僕がやるというのは」
「ほう⋯記憶屋か」
反応は悪くない。
この力を使って記憶の在り方を探しつつ、人から人へ記憶を伝える役割を担う。
それが僕の提案だ。




