悪政をするもの。ホントの王家。
スベラルに戻った時、騒がしかった。
族が暴れて大変なことになってるらしい。
もちろん鎮圧部隊は当初の予定ではなかったが国の方で抑えるために奮闘している。もちろん、ニコラ達の姿もある。
族は意外と賢く、かなり苦戦している様子だった。
だが、僕にできることはないだろう。
戦闘要員ではないから、今はニコラたちに任せよう。
そう思ったのだが、ニコラが僕たちを見つけ、言葉をぶつける。
「戻ってきたなら好都合!王宮へ行くぞ!」
既に国は混乱で麻痺しており、今のうちなら王宮に忍び込んでも問題ないらしい。
緊急事態のため、仕方ないだろう。僕たちは全員揃った後、王宮へ忍び込む。
道中なるべく見つからないように、玉座の間へ急ぐ。
今は混乱中とはいえ、王宮内はきっと玉座の間に全員集めて会議中だろう。
そこで、アドニスタの記憶をばら撒く。
クーデターのようにはなるが仕方ないだろう。それもこれも全部マドマネが悪いのだから。
もっとも、マドマネの失脚で困るような奴らは軒並みギルメイ政権には不要。問題なく排除していい。
王宮内はアドニスタの案内でスムーズに王座の間へ到着した。
「な、なんだね君たち!」
すぐ反応したのはマドマネだった。
自分の命が惜しいらしい。何よりもまっさきに僕たちを警戒した。
そして、マドマネの号令でマドマネの警備が強くなる。
だが、直ぐに側近たちは顔を青くした。何故なら。
そこにギルメイとアドニスタが居たから。
本来居ないはずの二人が目の前にいる。
それだけで王宮内は大混乱。もちろん、指名手配はしていた。
だが、そんな指名手配中の男が目の前にいるのだ。
首を取られる、と思っても無理はない。
まあ、首は取らないが王座は取るのだが。
アドニスタは僕たちの前に出ると、ここにおられるのはスベラル王家本来の後継者である!
そう高らかに宣言した。空気が一気にピリつく。
今更何を⋯どこで何を⋯とか色々聞こえたが全部無視。
アドニスタは話を進める。
「今より見せるのは国王の悪事の数々!黙認している側近諸共王座の返還と共に追放させてもらう!」
そして話は続き、メモリーストーンを見せたのだ。
全員にこれでもかと言って投影するとかそういう芸当は無理なので、一人一人に見せていく形だ
。効率は悪いが、確実な方法を取るしかない。
反応は様々で、顔が青ざめる人や信じられないと王を糾弾したり様々だった。
おそらく、マドマネの悪事は一部の側近は知っていたのだろう。
そして、身近なもの以外には知らせてすらいない。
だからこそ、側近以外の人達はみなマドマネを糾弾する。こんなことは信じられないなど様々な声が。
マドマネは次第に追い詰められていく。
デタラメを!とか色々ほざいて居たので、マドマネにもメモリーストーンを見せてやった。
全員が同じものを見た。
そういった途端、膝から崩れ落ちる。
まさか、こうした形で引きずり下ろされる、なんてことは思ってなかったのだろう。
だが、次の瞬間マドマネの近くにいた側近が僕たちに襲いかかる。
王を侮辱された雪辱を晴らす、と言ったところか。
そこは冷静なギルメイ。
手馴れた手つきでそれを交わし、あっという間に襲ってきた物を地面にねじ伏せた。
そしてギルメイは続ける。
「スベラル王国は返してもらう!異論のあるものは!?」
当然、居ない。というか、居たとしてもギルメイの圧がすごすぎて無理だろう。
本来は王族の交代は正式な手続きを踏まなければ、だろうが今回は見せしめにする目的もある。
ギルメイにはひとつ考えがあったのだ。
ギルメイは城のテラスへ顔をだし、そして声を張り上げ国民全員に聞こえるように告げた。
「本日より我、ギルメイ=スベラルが王になる!俺が王である間は暴徒や推進派は許さぬ!文句のある民は俺の首を狙いに来い!」
その演説は続く。ギルメイが何を思い過ごし、何を思い戻ってきたかを国民に告げたのだ。
争っていた国の連中は静まり返りその後、暴徒達は大人しくなった。
鎮圧部隊は王が急に変わり、混乱しているようだった。
そして、ギルメイは鎮圧部隊の解散、及び暴徒達の声を聞くことを約束して国民たちに改めて自分が王になることを告げた。
そして、国中から上がる歓喜の声。
マドマネのやり方に不満を覚えていた国民たちだろう。
全員が全員ではないだろうが、マドマネ政権に不満を抱え、不安に過ごしていた人達はみな、ギルメイの宣言を肯定し許したギルメイの苦悩。
そして前国王の意向により本来の王家が帰ってきたことによる歓喜の声。
それに包まれギルメイは、再びマドマネの前に立つ。
「マドマネ。なにか反論は?」
「ぐ、ぐぬぬ⋯」
「王としてお前たち王宮に仕える全ての者に告ぐ!今より全国民の前でマドマネの王位失脚を見せしめとする!」
それは、マドマネを正式に王として解雇を宣言するものだ。
マドマネに辱めを与え、新たな王であるギルメイの力を示すのだがーーその前に僕にやることがある。
「ギルメイさん、その前にひとついいですか?」
「む、テオ。どうした?」
「今からマドマネの記憶を見ます」
「ふむ⋯」
「推進派とズブズブだったマドマネの記憶を見れば、何かわかるかも」
「それもそうだな」
そうしてギルメイはマドマネの拘束を命令し、マドマネは抵抗できずにそのまま拘束された。
そんなマドマネの前に僕はたち、マドマネの額に手を当てる。
集中するし推進派と関わったのはどの辺だろうか。
前国王を貶めるために画策したのはどの辺だろうか。
ギルメイの話やアドニスタさんの発言を元に探る。
記憶の波を掻き分けながら、僕の意識は完全にマドマネの記憶を深くまで見る。
⋯そして、見つけた。マドマネが王を騙し、陥れた時の記憶。そしてそこには怪しげな男の姿があった。
これはーースパイの男の記憶で見た人物と合致する。
姿こそ隠しているが、間違いない。推進派だろう。
そして記憶の中の推進派の発言に耳を向ける。
それは、王を騙しお前を王にすげ替える。そうすればこの国は推進派の手中に収まり、国民全員が機械の身体を得るだろう。ということだった。
衝撃だった。推進派は、国民全員をモドキにするつもりだった。
そして、マドマネは全員が機械になった暁には推進派の権力の強いポストに配置し、意見をあれこれ言えるようにする。
そう釣られ彼は推進派をこの国に根付かせようとした。
だが、アドニスタ初め王宮のスベラル王家派は抵抗した。
なんとしても推進派の息のかかるもの全てを取り除こうと足掻いたのだ。
結果的に追放されるのだが、それは同時に失策だった。
アドニスタ達が追放されたのはすぐにギルドへ知らせが言った。
そして、国民の不安を煽った。マドマネ政権を信じていいのか?という不安だ。
アドニスタ初めスベラル王家に仕えていた従者達はみな国民に寄り添う政治をすることで国のものたちから慕われていた。
そしてそんな人たちを追放したマドマネは信頼を失った。
その時点で推進派の目論見通り、という訳には行かなくなったのだろう。
それでもマドマネ政権は続いた。
王を継ぐものが不在のためだ。
そしてマドマネはあらゆる手で国を推進派へ落とそうと画策したがまあ、その全てが失敗だったが。
そしてそれら全ては隠蔽され、やがて人々の記憶から薄れていった。
だが、この記憶をばら撒くとこで国民の意識はまたマドマネを糾弾するだろう。
それが、彼に与えられたバツだ。
国民の声を無視し、自分のことだけ考え続けた男の末路だ。




