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機械の技術が発展した異世界に召喚された僕が記憶屋として成功するまで  作者: 凪笠シメジ
スベラル王国編

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王として。見てきたものとして。

ギルメイは覚悟を改めた。

アドニスタの話を聞き、今のスベラルを許してそのまま滅ぶのであれば、自分が王になると。


少なくとも今の王より遥かにマシな国の運営ができると。


兄、フェーゴ=スベラルに誓うと、そう言った。そして、ギルメイは名前を隠すことをやめ、改めて王族の身分であることを証明することにした。


ギルメイ=スベラル。それが彼の本当の名前であり、誇り高きスベラル王家の正式な後継者であると。


その決意にアドニスタは喜んでいた。


そして、アドニスタは今の自分の身体の状況を説明する。この身体は推進派と戦った傷だということ。


推進派をかしかけたのは現国王であること。


そしてなによりそれはやつを王座から引きずりおろすのに十分な情報だった。


国民は否定派が多い。そんな彼らが現国王の「マドマネ=マチャチャ」が旧王宮の一員を推進派をけしかけ重症を負わせたなんて知られれば、国民からの信頼は無くなり、王である立場も危うくなるだろう。


なにより、他国が黙ってない。今回の戦争、スベラルが一方的に侵攻を進めている。


もちろんサブラスは国防の為に防衛軍を設立したが、あくまで力を誇示し、推進派であるマドマネに危険であると思い知らせるためだ。


武力を見せるのは力があることを示し、強者である事を知らせるためではない。


スベラル王家の人間は、弱者を守り、責務をまっとうするのが強者の勤めだと理解している。


故に、今回王族ではない王宮の一員をここまで追い詰めたマドマネの悪行を知られたらスベラル含めた否定派の国が動くだろう。


それは、マドマネを引きずり下ろすためだ。


おそらく、マドマネを王座から下ろしたあとの王に据える人間はなんとかするだろう。


だが⋯今は違う。本来の王家の人間がここにいる。そして、マドマネの悪事はこうしてメモリーストーンになっている。爆弾になり得るのだ、この情報は。


アドニスタの受けた仕打ちを公表する。それも、確証のある情報として、メモリーストーンを使うのだ。


王は信頼がなくなり、失墜する。


そして、戻ってきたギルメイは国民から王座につくことを許されるだろう。


もっとも、今回ギルメイがサブラスでギルドのメンバーであることが功をそうすることになる。


サブラスから来た使者が国のピンチを救うことで、ギルメイへの信頼も揺るがないものになるはずだ。


今、スベラル国内ではニコラ達が作戦を決行中だ。上手くいってるかはまだ分からないが、おそらく成功しているだろう。


先程から、国の方から煙があがっている。


ニコラが作戦成功の暁には分かりやすいように色つきの煙をあげる、と言っていたしそれだろう。


「アドニスタさん。全ての準備は整っています。協力してくれますか?」


「もちろんです。その前に、ギルメイ様にお願いがあります」


「なんだ?」


「王宮を追われたものたちを国へ戻すことを約束してください」


「当たり前だ。マドマネの信頼のある側近など置いておきたくない」


その条件を受け入れ、いよいよアドニスタを連れて国内に戻る。


帰りの道はスムーズだった。アドニスタさんが何かあればという状況の為に近道を用意していたのだ。


行きが三時間ほどなら、帰りは一時間くらいだ。それほどまでにショートカットできるのだ。


帰りの道中、より鮮明に何があったのかを教えてくれた。


現在旧王宮のメンバーたちは世界各国に散らばっており、ギルメイ即位の際にいつでも戻れるように準備を進めていると言う。あとはギルメイの戻ってこい、の号令があれば王宮は元通りだ。


途中、ギルメイはこれまで見てきたことを話した。王宮時代には出来なかったことを色々やった事。


サブラスの人達と触れ合う中で、より良い王とは何かを考えていた事。そして、アドニスタと再会し、その答えが出たこと。


ギルメイは決意し、民を守るための力を振るうと。


民を守るための戦いをすると。


それは、推進派との戦いだ。アドニスタに推進派が接触した以上、それはもう国の問題だ。


推進派とズブズブになったマドマネ政権はいずれきっと国民を推進派に差し出すだろう。


推進派の考えを広めるより先に国民を全員機械化する、なんてやりかねない。


そんな王に従うやつは間違っていると。


王の横暴を許してしまえば、国民に倫理を説いた時に間違ってしまうと。どれだけ政治が苦手でも、どれだけ力を持とうとも、必要なのは人との繋がりであると。


どこまで行っても人間は信頼できるものについて行くと。


無理やり従うことになる推進派の今のやり方は許せない。


それに、従わないものは逐一排除するのはやり方として間違っている。


彼らを止めるため、ギルメイは即位を決意した。民を守ることを決めた。


政治に優れた兄のようになれなくても、自分には民を守れる力があると。


力をつけた意味はそこにあったかもしれないと。


ギルメイはアドニスタを守れなかった。


だが、アドニスタはそれを許した。それはギルメイに力を与え、立ち向かう勇気は王になることへ向き合う決意だ。


そして、アドニスタさんは道中、ひとつの提案をした。


「テオさん⋯もし、いつか死人の記憶を読めるようになったりしたら、フェーゴ様の数年の記憶をギルメイ様に与えて下さりませんか?」


「どうしてですか?」


「フェーゴ様はギルメイ様の力へ憧れがありました。そして、ギルメイ様が逃げた後、彼とちゃんと向き合えなかった自分を悔いておられた。

⋯そんな後悔が、きっとフェーゴ様を推進派へ変えてしまったのでしょう」


死人の記憶⋯か。


難しいかもしれない。


現状僕は人に触れた時にしか記憶を読めない。


死人の記憶を読む、というのはその場に居ない人間の記憶を見ることになる。それが出来てしまえば、全ての記録媒体より優秀になってしまう。


それは世界の理が許すだろうか?


わからない。


だけど、無理ともいいきれない。


何かのきっかけでこの力はいくらにも大きくなる気がする。


だから今は彼を安心させる為にも、その提案を受け入れよう。


わかりましたと言おう。それで、誰かの心を救えるなら。


きっとその方がいい。


「さっきの煙は僕の仲間から、作戦成功を伝える合図だと思います。きっと国に戻ればそのまま国王を引きずり下ろすために直接対決になると思います。二人とも、覚悟は?」


「俺はできてる」


「わたくしも、この命既にスベラル王家に使うと決めておりますので」


二人の覚悟は固まっていた。あとは、何があっても逃げ出さないという覚悟を僕が持つだけだ。


きっと彼らに協力する限り、僕の命は安全だろう。


この作戦は、自分の命をより安全に保証するためでもある。


ギルメイを王にし、吉報を届ける。


今はそれだけ考え、無我夢中になってしまおう。


その足は少し早歩きになっていた。


一刻も早く安心したい、という気持ちがないとは言えないだろう。


僕だってまだこの世界に来て戸惑いが無くなったわけではない。


突然の新天地。突然の超能力のような力。振り回される毎日。訳の分からない毎日。


帰りたいという気持ちが無くなったわけではない。流れに身を任せ、なるようにしかならないと何となく察しているから、少しだけ僕は冷静になれた。


この戦いが終わればきっと今より安心できるだろう。


自分の命が安全なことを保証されるし、なにより寝ることが出来る。


安心して寝ることは精神の安寧に繋がる。安心して寝るために戦おう。


僕は直接戦えない。


だから、僕は僕の戦いをする。


それは、この記憶を確実に届け、ギルメイの即位を確実にするためだ。


身の振り方、後で考えよう。

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