83. テリオス商会の仕事
テリオス商会のソフィアから勧誘され、後日商会に行く約束をしてしまったコウ達。
朝早く彼女と朝食を済ませ、テリオス商会まで徒歩で行く。
深夜中シノとランは、俺と彼女の護衛を別々にしていたので現在はアイテムバックで休んでいる。
ラン以外の子供達も、何処にいたのかは分からないが朝方にはアイテムバックに戻ってくる。
シノと子供達のお陰で、どこで休んでも安心できるのはとても有り難いと感じている。
何か欲しい物は無いかと尋ねたが、俺の魔力を沢山貰っているからと遠慮されている。
ただランの願いは、タカの魔力を貰いたいらしいとシノから聞いている。
その願いを叶える為にも、アイテムバックの作成が急務となる。
店の入り口で一旦止まり、前回来た時も感じた古ぼけた扉を彼女が見て呟く。
「ここがお店?とても古く感じるけど、営業しているのよネ。」
「今にも壊れそうな扉に見えるけど、魔法で強化されてるはずだよ!」
彼女が店の雰囲気をチェックしている間に、アイテムバックにいるシノに念話で打ち合わせをする。
「店の中では魔力が漏れない様に注意して~タカの魔力もバレない様に!それと会話の内容や製造方法を記録しておいてくれ!」
「承知しました~ご主人様!」
準備が出来た事で、彼女とお店の中に入った。
「いらっしゃいませ~」
正面のカウンターに居た店員が声を掛けてが、俺の顔をみて驚いている。
「貴方はこの前の人ですね?・・・今日は彼女を連れて何かご所望の品物でもありますか?」
前回店を訪ねた時にいた店員さんだが、思いっ切り怪しまれている。
やはり鑑定魔法を使った事が問題だったかも知れないが、タカの姿を見て俺の彼女だと思ったという事は、彼女が聖女だとバレてはいないという事だ~隠ぺい魔法は機能しているようだ。
「今日は、ソフィアさんから誘われてお店の見学に来ました。」
ソフィアの名前を出した途端に、急に態度を変えてカウンターから飛び出してきた。
「申し訳ありません!どうぞこちらに掛けてお待ち下さい。」
前回、魔導士が座っていた部屋へ案内されて、彼女と一緒に椅子に腰掛けて待つ事にした。
暫く待っていると、奥の扉からソフィアが現れた。
「お待ちしておりました。」
我々も席を立って挨拶をする。
「早速ですが、仕事内容の確認と工房を見学させてもらい、2人で仕事を引き受けれるか判断させてもらってもよろしいですか?」
「問題ありません。それでは奥の部屋にご案内します。」
彼女は奥にある扉を開けて案内してくれた。
ここでは話が出来ないという事を理解した俺は、タカと一緒に彼女の後に続いた。
扉を通過した瞬間、魔法の壁みたいな衝撃を感じた。
「ここから奥の施設には結界魔法が張られていますので、外部からの影響は受けません。」
俺の違和感を感じ取った彼女は、別に隠す事も無く説明してくれた。
「結界魔法?・・・外部に漏れたらダメな奴ですね~そんな大事な企業秘密を教えてもいいんですか?」
「これから同じ仕事をしてもらう方に秘密はあり得ませんわ!それに既に気付いていらっしゃると思いましたが?」
ソフィアの言葉に乗らない様に注意しなければ!
「そんな事はありませんよ~我々は魔法には疎いですよ!」
「私も初めてで、何だか安心できる雰囲気ですね!」
2人それぞれ感想を述べながら通路を歩くと、大きなロビーのような場所に案内された。
綺麗な造りの客間という所だろう!
中央にテーブルとソファーが置かれており、そこに座ると別の入口から銀色の髪をした綺麗な女子が飲み物を持って入った来た。
「どうぞ~」
女子はテーブルに飲み物を置くと直ぐに戻った。
顔はよく見えなかったが、俺はその後ろ姿に釘付けになった。
細長く大きな耳に、丸いシッポ!・・・獣人?
彼女の後姿を眺めていると、タカが俺の袖を引っ張る。
「獣人は珍しくありませんが、彼女の名前はアニィーと言います。銀狐族の生き残りの子です。」
「銀狐族?・・・銀色キツネ!・・・生き残りとは?」
初めて聞く言葉と疑問が俺の頭を傾けさせた。
「強力な炎の魔法を使う銀狐族は、魔族との戦争で標的にされ、全ての集落が襲われました。彼女の集落も襲われ両親も亡くなり、銀狐族で唯一生き残ったのが彼女です。」
「そんな~可哀想だわ。」
「大丈夫ですよ~アニィーは強い子です。マーロン様が引き取って、今はテリオス商会の従業員として働いております。」
「魔族は惨い事をしたんですね!」
「全ての魔族が悪いとは言いませんが、指導者である魔王がこの世界を自分の物にしたかったのでしょう!あるいは誰かにそそのかされ利用されたかも知れませんが、今となっては分かりません。」
「先の戦争で魔族は負けたと聞きましたが、魔王は死んだのですか?」
「分かりません!ただ勇者が現れ、その者の活躍で戦況は一転して人族側に有利に働き、魔族軍は統制が取れなくなり降伏しましたが、魔王は勇者によって討伐されたと言われていますが信憑性は薄いです。」
「勇者はその後どうなりましたか?」
「その後の記録が残っていない為、詳細は分かりません。」
勇者が召喚されて、元の世界に帰った可能性は否定出来ない!
元の世界に帰る一筋の光が見えた感じがした。
「勇者に興味があるのでしたら、マーロン様から詳しくお話しを聞けますよ。」
「ホントですか!とても興味があります。」
隣にいる彼女と目を合わせ喜んでいると、ソフィアは俺達2人を・・・いや彼女を観察するかの様に凝視していた。
エルフ族は精霊に愛され、魔力を感じ取れると聞いている。
俺は直観的に魔力が漏れているのでは思い、話題を変えるべくテーブルに置かれた飲み物を口に運んだ。
「ソフィアさん~本題の話しをしたいと思いますが、具体的な仕事内容を聞かせてもらってよいでしょうか?」
彼女は無表情のまま無言でいたが、我に返ったように笑顔を見せると改めてソファーに座り直した。
「そうでしたね~先ずはテリオス商会の仕事内容を説明させて頂きます。」
彼女は商会の三本柱の分野を説明してくれた。
一つ目は薬品及び魔道具の販売、二つ目は工房での製作、三つ目はポーター呼ばれる派遣業務の仕事を取り扱ってると聞かされた。
彼女と2人で真剣に話を聞き、具体的な仕事内容等疑問に思った事はその場で話合った。
基本的な内容を教えてくれたが、特に怪しい仕事ではない、他の商会でもやっている内容だ。
「他の商会と変わらないのに、良い噂を聞かないのは何故ですか?」
「確かに商売方法は同じですが、扱う商品の価値がわかるお客だけにしかお売りしませんので、その事で妬む人があらぬ噂をしているだけです。」
「テリオス商会は売る客を選んでいるというわけですか?」
「価値ある商品の対価はとても大きくなります。故に理解できるお客だけの取引としております。」
「ここで扱っている商品は、他のお店にない商品を扱っているという事ですか?」
「その通りです。但し受注生産で且つ作成できると判断した商品だけです。」
ソフィアとのやり取りで、テリオス商会が扱っている商品が何となくわかって来た。
「今の我々に出来るの、商品の販売か輸送を担当する仕事しかできませんが、それでも雇っていただけるんですか?」
「もちろんですわ!貴方方はどの仕事でもこなせるでしょうが、気に入った依頼はどれれも受けてもらっても構いません。」
「有難いお言葉ですが、2人とも戦闘は苦手ですのでまずは薬品作りに専念させてもらいたいです。」
「もちろん構いませんが、作成する品物の材料が手に入るかどうかは貴方方次第になりますが。」
彼女は意味深な言葉でほほ笑んだ。




