82. 勧誘
コウからの伝言で、レイナとココはグラッサの町へ向かう事になった。
グレン達【銀狼の牙】パーティーは、レベル上げの為ギルドの依頼を積極的にこなすつもりでいた。
グレンに伝言を託してから、レイナとココ達と合流するまで日数が掛かると判断しているコウは、その間にやりたい事が有るみたいだ。
グラッサの町で活動する間は【迷える子羊亭】の宿を拠点にして、彼女のレベル上げと従魔達の訓練、特にランの教育に力を入れたいと考えていた。
朝早くギルドの受付に出向き、人族の姿に変身したシノとランを加えて4人でクエストボードから依頼書を選び受付を行う。
「おはようございます~美女2を連れての冒険では、男ばかりのパーティーから妬まれますよ。あれ~今日は子供さん連れですか?」
受付嬢のユリナが、タカと手を繋いでいる小さな女子に気付いた。
「彼女の妹だ!まだ冒険者登録は出来ないが、1人で留守番させるのは可哀そうなので一緒に行動をしているのだが問題は無いかな?」
「ギルドとしては全然問題ありませんが、何かあっても自己責任になりますのでご理解願います。」
ユリナの説明は当たり前の事だ!
俺が納得していると、何も疑問をもたないユリナは小さな女子に名前を尋ねる。
当然まだ喋れないので、恥ずかしいフリをして彼女の後ろに隠れる。
「この子は人見知りが激しい子なの!私の妹で名前はランといいます。」
代わりに彼女が答える。
「ランちゃんと言うのね~1人で留守番が寂しいのならここに遊びに来て構わないからね!」
ユリナが彼女の後ろに隠れているランに声を掛けるが、本人は恥ずかしがったままだ!
ユリナの行為は大変嬉しいが、ランには人見知りの芝居をしてもらっている。
ランはまだ子供で言葉が話せない上に、魔力制御が不安定だ!
取り敢えず隠ぺい魔法を覚えて魔力を隠す事が出来るまで、他の人との接触は避けておきたい。
今回の目的は、タカに妹のランがいるとギルドもしくは冒険者達に認識させる事だ!
今後は、我々以外の人が居る所ではアイテムバックの中で待機してもらう事になる。
ただ~タカの寂しそうな表情を見ると、いつまでガマンが出来るかは分からなかった。
ギルドの受付で、俺のシナリオ通りの芝居をしていると聞き覚えのある声がした。
「貴方の回りには優秀な人材が集まるようですね。」
振り返るとテリオス商会のソフィアが立っていた。
「冒険者としては、まだまだ経験不足です。」
彼女達に奥のテーブルで待っている様伝えて、ソフィアから距離を置くことを優先した。
「ところで、この前の話しは検討してもらえましたか?」
この前の話し?・・・思い出さない~
考え込む俺の姿をみて彼女は苦笑いしている。
「テリオス商会はあまり気に入らないようですね!」
「そんな事はありません~ただ今回の件で仲間が危険に合わないとも限りませんので、冒険者としてまた薬師として研鑽を積まなければいけないと考えてまして、商会で働くのはまだ無理かなと思います。」
「思っていた通りの人ですね!・・・テリオス商会はそんなあなた方にピッタリの職場だと思いますよ。」
彼女はニヤリと笑いながら答えた。
「以前お店に来られた時に工房の見学をしたいとおしゃっていましたが、薬師としてポーション作りのノウハウが必要でしたら当店は打って付けですよ。また冒険者として仲間のレベル上げの仕事も沢山ありますので気に入ると思いますが!」
彼女の柔らかい口調に引き込まれてしまったが、提案内容は悪くない。
「とても良いお話しだと思いますが、我々のレベルは低く満足いく成果は期待できませんよ~それに我々はセシール村に生産拠点を置いていますので難しいですね。」
「当店の従業員でなくても構いません!ギルドの依頼を受けるように当店の依頼も受けてもらえれば構いません。」
「我々の他にも沢山冒険者はいますよ~それもレベルも高いパーティーが!」
「テリオス商会の仕事は誰でも請負出来る依頼ではありません。」
「それは極秘依頼という事ですか?・・・それであれば尚更我々には無理ですよ!」
「あなた方にはその資格があると判断しています。」
「買いかぶり過ぎですよ~戦闘は仲間に頼っていますし、俺は荷物係りで彼女に至っては冒険者登録したばかりの素人ですよ。」
彼女はどうしても商会の依頼を引き受けてもらいたいのか、中々諦めない。
彼女の困っている表情を見るに見かねてか、テーブルで休んでいたタカが隣にやって来た。
「私達が出来る仕事で、好きな時に受けれるなら良いのでは~」
タカの一言でエルフ族の彼女は、手を握り満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうごさいます。ぜひ当店にお越し下さい~気に入った依頼だけでも構いません。」
タカが受けるのであれば、俺が断るわけにはいかなくなった。
「わかりました~それでは明日お店にお伺いします。」
お店に行く事を了承したことで、安堵した表情の彼女はお辞儀をしてギルドを出ていった。
テリオス商会に行く事を約束した俺は、タカと一緒にテーブルの席に着いて一息入れた。
「ごめんなさいね~私が口を挟んでしまって。」
「タカが謝る必要はないよ!いずれ行くつもりだったんだ。ただ、仕事内容がギルドでは扱わない極秘依頼と聞いたので、二の足を踏んでいただけです。」
「先ほどの綺麗な女性がいるテリオス商会は、そんなに怪しいお店なの?」
「噂では貴族や金持ちしか商売をしないと聞いていたんだが、実際会って見るとそんあ感じはしなかったんだが、相手を見て商売をするお店かな~特に店主の魔導士の婆さんは鋭い観察力の持主だし、鑑定魔法も使えると思っている。」
「先ほどのエルフ族の女性は、聖女様の手を握り魔力を調べていたと思います。」
「私~調べられていたの!」
シノの説明にタカは驚いている。
「間違いないだろうな~ポーション作りには魔力を多く保有していないと作成できないから、魔力を確認してから引き抜きに来たんだろう!」
「怖い世界だわ!・・・行かない方が良かったかしら?」
「心配はありません。聖女様はまだ魔力を全て出せていません。それに現時点でも魔力制御が出来ていますので魔力が多い僧侶様と認識したと思います。」
「私~そんなに魔力が漏れているの?」
「聖女様の魔力制御は一般人では認識できません~だから彼女は手を握って確認したのです。エルフ族は魔力に敏感ですので、触れた対象物から推測したと思われます。」
「俺も漏れているのか?」
「ご主人様は完璧に制御出来ています。彼女に触れられたとしても、一般の薬師の魔力だと認識するでしょう~・・・ただお店で鑑定魔法を使ったのがバレている可能性がありますので、反対に魔力の少なさに疑問を持たれていると思われます。」
「それを言われると痛いな~バレないと高を括っていたよ。魔導士の婆さんは侮れないね!」
「私もバレない様にしないと~何だか合うのが怖くなった来たわ!」
「取って食われる事はないだろうし、気楽にいこう!」
3人の話しの内容をただ黙って聞いていたランだったが、早くも言葉を理解して来ている様だ。
時折ランの視線を感じるコウだが、ニコリと笑うランを見ると何故だか安らげる。
パーティーの皆と合流するまでに、ランが話せるようになればいいのになと思うコウであった。
明日の打合せを済ませ、ギルドを出て宿に帰る。
宿の手前でシノとランは俺のアイテムバックで休み事になるが、少しでも一緒に居たいと彼女の要望を受けて、町の中を散歩がてらに探索し、お店の店員さんやお客と世間話をしながら英気を養った。




