番外編⑤ 駆け出し冒険者の計画
ナターシャの満面の微笑みに、恐怖を感じたいたロトとポエム!
「この表情は、前にも見た事がある!」
「親に内緒で隣村迄3人で旅する計画や、近場の洞窟で冒険者をまねた遊びを言い出した時の顔だ!」
2人は彼女の無謀な計画で、親達からこっぴどく怒られた事を思い出していた。
「昔の話はしないでね~あの時はまだ子供だったから仕方なかったのよ!」
「今もそんなには変わらないけど~」
「怒るわよ!今の私の容姿を見なさい~(モデルの様に回って見せる!)・・・私はもう大人の仲間入りをしているのよ~」
身体は大人の女性に近づいてもまだまだ子供だな~と2人は心の中で思ったが声には出さなかった。
「大人になったナターシャの計画はきっと完璧だろうな~」
2人から嫌味を言われるが、全く気にしない彼女は真剣な表情で今度の計画を説明した。
子供の時からいつも彼女が立案者であったように、今回もいつもと同じで彼女を信頼している。
3人はテントの外に声が漏れない様に、輪を組んで小さな声で話し合った。
彼女の説明が終わると、2人は納得した表情を見せた。
「流石はナターシャだ~お前にしか立てられない計画だ!」
「方向性は良いけど、想定外の事も考えておいた方もいいかもね!」
「そうね~冒険には想定外がつきもの~何が起こるか分からないからね!」
子供の時から親の影響で冒険に憧れていた3人は、親が居なくなってから冒険の怖さも知るようになっていた。
「そうと決まれば早く寝て、明日も薬草採取に頑張ろう!」
3人はいつもと同じに並んで寝床に付く。
ロトとポエムは直ぐに眠りについたが、ナターシャは中々眠れず隣りで寝ているロトの手を握り目を閉じていた。
翌朝も薬草採取の行う3人の姿があった。
比較的安全な群生地の薬草は新人冒険者達によって、殆ど採取され尽くしていた。
「これ以上の採取は今後の事を考えたら難しいわね!」
「そうだね~あと可能性があるとしたら・・・」
ナターシャとポエムがお互い腕を組みながら考えていると、ロトが綺麗なお姉さんを見つけた。
「あのお姉さんが持っている籠には薬草が沢山入ってる!」
ロトが指さす方向に、町娘のような服を着た綺麗な女性が1人で薬草採取をしている。
「あちらの方向は初心者冒険者が立ち入らない場所だけど、何者かしら?」
ナターシャは只者ではないと警戒心を見せるが、ロトは彼女がいる方向に歩き出した。
「待ってよ~ここから先は僕らには危険が多いよ!」
ポエムも行くべきではないと判断し、ロトを止める。
「あのお姉さんは村の住人で危険な人じゃないよ!」
「危険なのは彼女ではなく、彼女がいる場所よ!」
ナターシャは自分たちが危険な場所に入り込んでいるのに気が付いていた。
「この場所も危険だ~早く街道まで戻ろう!」
ポエムも理解したが、ロトは一向に気にしない様子だ。
「あのお姉さんさんが魔物に襲われたら大変だから、俺達が助けてやらなければ!」
「そもそもあの危険な場所に1人でいる事態がおかしいよ!」
「それでも冒険者なのか?お前達はここで待っていろ!俺1人で行ってくる。」
ポエムの忠告を無視して、ロトは1人で彼女がいる場所まで走り出した。
ポエムとナターシャは、仕方なくロトの後を追うように走り出す。
思ったより距離があったみたいで、彼女の傍にたどり着くと少し息が切れていた。
彼女は3人が近づく前から気付いていたが、殺気は感じられなかったので何事かと思って採取の手は止めなかった。
「お姉さん~ここは危険な場所ですよ・・・1人で迷い込んだのですか?」
息を整えながらロトは尋ねた。
後から追いかけて来た2人も合流する。
「あら~子供達でこんな場所に来てどうしたの?」
彼女は優しく微笑みながら話す。
「俺達は冒険者なんだ!初心者だけど~それよりお姉さんこそこんな場所で1人いるのは危険だよ!」
「あら~私を心配してくれてここに来てくれたのね!」
「この場所はイザベェルの森と言って狂暴な魔物がいる場所で、ギルドからも注意されているんです。」
ナターシャも彼女に説明し、早くこの場所から逃げた方がいいと促す。
「知っているわ~正確には森の手前なんですよ~でもDランクの魔物は結構いるわよ~」
彼女の平然として落ち着いている様子をみてポエムが尋ねる。
「この場所にDランクの魔物が現れるとわかっていて、薬草を採取しに来ているんですか?」
「私の仲間が薬草を必要としているので、この場所で探しているの!」
「薬草採取なら危険な場所ではなく、安全な群生地で採取すればいいんじゃないですか?」
「確かに貴方の言う通りだわ~でもその場所は新人冒険者の聖域で私はこの辺りが丁度いいんですよ、それにここは広くて見晴らしが良いから丁度いいのよ~」
彼女の言葉に驚く3人の表情を見て、さらにほほ笑む!
「貴方は高ランクの冒険者なのですか?」
「ギルドでの買い取りに必要なので冒険者の登録はしていますが、今日は仲間の依頼に応える為にきているだけですよ。」
新人冒険者の為に安全な群生地ではなく、あえてこの場所を選んでいる。
彼女の行動に感動を覚えたナターシャは、目を輝かせながら彼女に提案した。
「お姉さんに惚れました!」
ナターシャの声にびっくりする2人!
「私達はFランクの新人冒険者です。ギルドでは薬草を2倍の価格で買い取りを行っています。きっと薬草を大量に必要とする事態が起こっての事だと思います。お姉さんの仲間の方も薬草が足りなく困っている様でしたら、私達が譲ってもいいですよ!」
彼女の申し出に戸惑っていたが、笑顔で返事をした。
「大変嬉しい申し出だけど、貴方達は依頼の報酬を貰うべきだわ。それに依頼の達成はレベル上げにも必要だわ!」
「大丈夫です!依頼分以上の薬草を採取しています。」
ナターシャの計画とは違う行動に戸惑う2人。
しかし2人は口を挟まない!なぜならいつもと同じ想定外の出来事で、ナターシャの事は良く知っている2人だった。
少し困っていた彼女だったが、子供達の申し出を無下には出来ないと考えていた時、茂みの奥が大きく広範囲に揺れ動いた。
彼女は無言で子供達を自分の背中に隠す様に身構えて、短剣を取り出した。
子供達も魔物の気配が分かったようで、声を押し殺していた。
前方の茂みから飛び出して来たのは、ホワイトボアの集団だった。
先頭の一匹が彼女達に突進してくるが、短剣を構えたまま慌てる様子がない彼女の姿が信じられない様子で見ている子供達。
子供達の目には、大きく狂暴に見えるDランクの魔物!
恐怖のあまり、逃げたくても体が動かない!
唯一ロトだけが、剣を構えて彼女の横に並んで立つ。
ただ足は震え、剣を握る手のひらは汗で濡れていた。
目の前に魔物が近づくと、ロトは無意識に大きな悲鳴を上げてしまった。
その瞬間、目の前の魔物の姿は真横から飛び出した白い物体によって弾き飛ばされていた。
「えっ~!」
驚きの悲鳴と共にもう1匹の魔物が飛びかかってきたが、今度は反対側の方向から黒い物体により同じく弾き飛ばされ正面の魔物の姿は消えていた。
「今のは!・・・何が飛んで来たの?」
一瞬の出来事で、目の前で何が起こったのか分からない子供達!
子供達を庇っていた彼女が、何事もなかったかのように振り返り笑顔を見せる。
「大丈夫かな~怪我はしていない~」
ナターシャとポエムは、平然としている彼女は何者か?それに目の前で左右に飛んでいた物体は?
2人の思考回路はショートしたかの様に呆然としていた。
2人とは対照的に剣を構えたまま悠然としているロトは、・・・・・立ったまま気絶していた。
その後は魔物が現れる事は無かったが、前方の草むらでは魔物の断末魔の叫びだけが聞こえていた。
「ロト!ロト!しっかりしてよ~怪我をしたの?」
ナターシャが返事をしないロトを今にも泣きそうな表情で慌てている。
「ナターシャ~ロトは大丈夫だよ怪我はしていないよ!・・・気絶しているだけだから!」
ポエムの説明で、急に恥ずかしくなって両手で顔を隠したナターシャの姿が微笑ましかった。




