80. 子供達
シノの言葉に疑問を感じた俺と彼女はそれぞれシノに尋ねた。
「子供達とは?・・・シノさんに子供がいるの!?」
先に彼女が尋ねる。
シノが答える前に俺はシノの顔を見て指示を出す。
「彼女が誤解しない様に!」当然念話で言葉に出してはいない。
「はい、まだ小さな子供達ですがご主人様や聖女様のお役に立てるかと存じます。」
「俺もシノに聞きたい事があるんだ!さっき子供達が調整していると言ったがどういう意味なんだ?」
彼女の後に俺も疑問を持った事を尋ねたが、ブラックウルフが逃げていった前方より人の気配がした。
「何かいる!」
俺はとっさに剣を構えて彼女の前に立つ。
暫らくすると、前方の茂みから1人の少女が現れた。
「子供!・・・?」
俺と彼女が驚いて声を出したが、子供は無言でいて笑顔でゆっくりと近づいてくる。
さすがに子供に剣を振り下ろす訳には行かないので、剣を鞘に納める。
子供と言えども油断はできない!ただ、並みならない程魔力が溢れているが、殺気は感じられない。
「どうしてこんな所にいるんだ?」
声を掛けても無言で、我々の前で止まりじっと立っている。
シノが傍に近づくと、少女はシノの手を握った。
「ご主人様!私の娘です。」
「えっ~シノの子供!?」
シノの言葉に驚いてしまった。
「予想より早く人族化になったのは、ご主人様の魔力に加えて聖女様の魔力が加わった為だと思われます。まだ言葉は話せませんが、戦闘能力は十分あり、お2人のお役に立てると存じます。」
「私の魔力で大きくなったの?」
彼女が不思議がるのは分る。
俺も全く理解できていないが、シノの子供であれば能力は申し分ないだろうし、女の子であれば彼女の妹として常に一緒にいても可笑しくはない。
「年齢は8歳~10歳位かな?彼女の妹として一緒に居させるのはどうかな?」
「私に妹?嬉しいわ~私には弟はいますが、妹は前から居たらいいなと思っていたので!」
「それは良かった~ただ言葉は今から覚えるとして、魔力制御を早急に出来るようにならないと、怪しまれてしまう。」
「まだ子供ですので、一度には無理ですが魔力制御は優先して教育します。」
シノの言葉は少し過激な気がしたが、彼女の安全を考えるとそれも仕方がないだろう。
「ご主人様と聖女様にお願いがあります。子供に名前を与えて頂きたいのですが?」
「シノさんの子供でしょ~私達が名付け親でいいの?」
「はい!是非ともお願いします。」
シノに押し切られるようになったが、悪い気はしない。
女の子なので、彼女に決めてもらう様にお願いしたら、すんなりと引き受けてくれた。
「藍!ランちゃんでどうかな?もし私に妹が出来たらそう呼びたかったの!」
「女の子らしい綺麗な名前だ!」
「聖女様ありがとうございます。」
シノは嬉しそうに、ランの頭を撫でながら魔力が勝手に流れ込む。
ランはまだ喋れないが、シノの魔力で情報が伝わるみたいで、理解した様子で笑顔を見せた。
ランはそのまま彼女の側に寄り添うと、手をにぎってきた。
「ランちゃん~これからよろしくね!」
彼女もランの手を握り返して優しく包み込む。
ランの件はひと段落したが、俺の疑問に答えてもらう。
「さてシノ~俺の質問にも答えてもらうぞ。」
「はい、ご主人様!」
「襲ってきたブラックウルフの数が、やけに調整されていたように感じたが?」
「偶然にもブラックウルフの集団が現れましたが、お2人の訓練に最適な数に調整しました。」
「数を調整?もっといたのか?」
「12匹いましたが、事前に子供達で間引きしました。先程逃げた3匹もランが処分しております。」
「道理で戦い易いと思った!」
「シノさんは私の事を案じてでしょう~しかもランちゃんが倒したなんて、凄いわ!」
彼女はランを褒めるが、その傍にロキもすり寄ってきて頭を垂れる仕草をする。
「あら~御免なさいね~倒したのはロキもだったわね!ロキもありがとうね~」
彼女がロキの頭を撫でると、嬉しそうにシッポを振るロキ!
「シノさん~子供達と言ったけど、ランちゃん以外にもいるの?」
「はい聖女様!ラン以外にあと6匹いますが、人族化には難しいそうです。でも戦闘能力は高くお2人のお役に立てると思います。」
「マァ~そんなにもいるの?女性として羨ましいわ~」
彼女は心底羨ましく思っていた。
「私は神獣ですので、聖女様が思っているような感情はありません。」
「神獣だろうが人間だろうが、好きな人の子供を産めるのは幸せだと思うわ!」
「タカはまだ結婚はしていなかったの?」
つい聞いてしまったが、これはセクハラになるのかな?
「していないわ・・・仕事に追われて彼氏も出来なかったから、シノさんが羨ましいの~」
聞いて後悔した。
「ごめん~俺も仕事に追われて彼女が出来なかった、と言うと嘘になる。俺の場合は振れれてばかりで彼女が出来なかったというのが正解だ!」
「コウはこんなに素敵なのに、振った彼女達は男を見る目が無いわね~」
「この姿とは違うよ~実際は俺は・・・・・」
言葉に詰まって何も言えなくなっていたら、彼女が俺の手を握って来た。
「容姿は関係ないと思うの!今の貴方は心が優しくて素晴らしい男性だわ!」
「ありがとう~そう言ってもらえると嬉しいよ!君の以前の事は知らないが、今と同じく優しく綺麗な女性であって、笑顔が似合う可愛い女性だろうと想像するよ!」
2人でお互いを褒めあって、顔を真っ赤にしていた。
そして2人からは制御出来ない程の膨大な魔力が辺りに漂い、シノにラン・それに従魔達にも影響が出る程温かい雰囲気に包まれていた。
2人は知らなかった。神獣や従魔達は膨大な聖魔力を浴びると、能力値が飛躍することを!
「彼女にもランが休める為のアイテムバックが必要じゃないのかな!」
彼女の安全を考えると、ランやシノの子供達も待機できる場所があった方が都合いい!
「アイテムバックを作るには錬金術のレベルが必要になると言っていたな~」
「その通りです。練習さえ積めば可能です。」
「よし早速訓練をしょう!」
「まずは材料集めを行い、聖女様のポーション作りも一緒に覚えて頂ければよろしいかと!」
「私も作れるの?」
「それは一石二鳥だ!アイテムバックが完成するまでは、ランは取り敢えず俺のバックで休む事。」
「それは少し寂しいわ~早く私のバックをつくりましょう!」
「手順はシノが教えてくれ!」
「承知致しました。お2人がご満足出来るように努めます。」
この世界を救う賢者様と聖女様!2人の間の親密度が上がる事が、神獣としての役目もあると理解しているシノだった。




