71. 冒険者の仕事
冒険者に絡まれて対処に困っていた所、偶然知り合いになったDランクの冒険者レクサに助けてもらった。
彼らのパーティー【風月】は中堅でも、結構名が売れているようだ。
そう言われるのも、彼らが迷宮探索をメインに冒険しているからだ。
ここグラッサの町は別名迷宮都市と呼ばれており、街の北側にあるダルリア第Ⅰ迷宮と第Ⅱ迷宮がこの街の特徴だ。
この町に集まる冒険者は迷宮探索が目的で、迷宮で見つかるお宝を売り生計を立てている連中が多い。
ただ迷宮に入れるには、ダルリア第Ⅱ迷宮はDランク以上のパーティー・第Ⅰ迷宮はCランク以上でなお且つ第Ⅱ迷宮をクリアしたパーティか、ギルドが許可したパーティーしか入れないという厳しい条件がある。
なぜ条件があるかと言うと、迷宮内にいる魔物が狂暴で数が多く冒険者の被害が多かった為、ダリア辺境伯の先代が犠牲を減らすために設けた決まりだそうだ。
一時期余りにも犠牲が多く迷宮に挑戦する冒険者達が二の足を踏むようになり調査が滞った為、辺境伯はギルドへの支援や討伐報奨金を出資し冒険者が集まりやすい町になるよう力を入れている。
理由はわからないが、そこまでして迷宮深層部の調査が必要みたいだ。
当然迷宮の入口には辺境伯の私兵が見張っており、冒険者達の安否確認の為のチェックも行っている。
冒険者ギルドは、辺境伯の依頼で迷宮を攻略できる高ランクの冒険者を優遇している為、ここではランクが実力と名声の証になる。
しかし迷宮探索は一歩間違えば命を落とす危険が有る為、皆が迷宮攻略を目指しているわけではなく、
自分の食い口と遊ぶ金があれば十分という冒険者も、このグリッサの町には住みよいようだ。
「コウ・・御免んなさい~私が変な男に絡まれて・・迷惑をかけてしまって・・」
タカは、自分のせいでコウが怪我でもしていたらと考えると胸が痛くなっていた。
「タカは悪くないよ!どこの世界でもああゆう輩はいるから、いちいち気にしなくていいよ!」
彼女にそう言いながら、クエストボードから薬草採取の依頼書を取り、受付後すぐにギルドを後にした。
薬草の採取場所まで無言で歩いたが、現地に着くと壮大な草原と雲一つ無い青空が心のモヤモヤを飛ばしてくれた。
「気持ちいいわ~」
彼女は両手を広げて大きく深呼吸をした。
「さて~お仕事をしましょう!」
彼女は俺に向かって笑顔で話しながら、ギルドで見せてもらった図鑑の絵を思い出しながら薬草を探し始めた。
俺には【採取】のスキルがあるので薬草と雑草の違いがすぐ分かるが、スキルもなく初めての薬草採取は非常に大変な仕事だ。
しかし冒険者の誰もが通る試練は経験しておかなくてはならない。
俺は周りの安全を確認しながら彼女の近くで採取を行った。
「コウ!だいぶん取れたけどそっちはどう?」
彼女は採取した薬草を俺に見せる。
「何本かは雑草が混じっていたけど、初めてにしては凄いよ。」
「えっ~雑草が混じっているの?おかしいな~間違いないと思っていたけど結構大変な作業ね!」
「薬草は冒険者にとって身近な物だから、すぐに慣れるよ!」
彼女が採取した薬草と雑草を分けて、必要な分だけ束にまとめて彼女の布袋に入れた。
「有難う!そうやってまとめるのね。やり方が分かったわ!」
彼女は呑み込みが早い!次からは要領よく採取し、まとめて布袋に入れている。
彼女の布袋が薬草で一杯になった頃合いをみて、声を掛けた。
「そろそろ休憩しませんか!」
「そうですね、これ以上布袋には入りそうもないです。」
彼女も丁度キリが良かったのか、すぐに手を止め休憩にはいる。
見晴らしの良い場所で大きな石の上に腰を下ろし、アイテムバックから朝もらった飲み物とパンを取り出し彼女に手渡す。
「有難う!」
「初めての仕事はどうですか?」
「思ったより大変な作業だわ~でも楽しいわ!」
彼女は飲み物を口に流し込み、眩しい位の笑顔を見せる。
飲み物とパンを食べ終わると、俺は彼女に自分のステータスを見るように指導した。
「頭の中でステータスと唱えると、目の前に画面が現れるよ。」
彼女は言われるように行動すると、画面が見えた様だ!
「凄い!ナニコレ?名前や年齢・やけに数字が多く見えるわ!」
「現在のタカのレベルを表示しているよ。ちなみにその画面は自分しか見れなくて、他の人は見る事は出来ない。ただし鑑定魔法を持つ人は自分より高いレベルであれば見る事が出来る。」
「そうなんだ~私あまりゲームはしないので意味がよくわからないわ。コウは鑑定魔法を使えるの?」
「先に謝っておくね。1回だけ鑑定して中身を見たんだ~御免んね!」
俺は申し訳なさそうに頭を下げた。
「あら!全然気にしないわ~私が見ても意味わかんないし、コウならいつでも見ていいわよ!」
彼女はステータスを覗かれた事を全く気にしないどころか、中身を説明してほしいと頼んできた。
ゲーマーであれば他人には知られたくはない情報だ~だが彼女にとってはわけのわからない不必要な情報だという事だ!
俺は彼女に断わってから鑑定魔法を発動した。
【名前】 :【タカ・ヒメ】 【HP】 :【15】
【種族】 :【人間】 【MP】 :【65】
【年齢】 :【16歳】 【ATK】:【 F 】
【レベル】:【レベル1】 【DEF】:【 F 】
【ファーストジョブ】:【 見習い僧侶 】 【魔力】 :【・・・】
【追加ジョブ】 :【・・・】 【AGI】:【 F 】
【システムスキル】 :【 生活魔法】 【魅力】 :【 E 】
【鑑定】 【LUK】 :【 E 】
【初級聖魔法】
【経験値スキル】 :【 ・・・】
彼女にステータスを説明したが、職業である【見習い僧侶】が何をするのかが分かれば後の説明は聞き流していた。
魔力が表示されなかったのは、まだ条件をみなしていない可能性がある。
「無事ステータスも確認出来たし、今後はレベル上げのクエストを受けて冒険者としての生活を始めよう!」
「うん!コウに任せるからよろしく!」
休憩が済むと彼女に生活魔法を説明し、今使用できると思われる回復魔法の使い方も教えた。
「魔法があるのよね・・・私も使えるの?」
「使えるよ~たぶん威力は俺よりも凄いと思うよ!」
生活魔法はイメージさえ出来れば問題はない。回復魔法も経験すれば理解出来るようになるはずだ。
「知り合いのパーティーに職業が【僧侶】の女の子がいるので、今度話してみましょう。」
「有難う~【百聞は一見にしかず】だね!」
「薬草以外にも役に立つ物がありますので、もう暫く採取を続けて一度ギルドに戻りましょう!」
「そうですね~見せてもらった図鑑にはまだまだ色んな種類の薬草が乗っていましたよネ。」
「冒険者には必要な材料になるので、気付いたらいつでも採取する習慣を持ちましょう!」
「心がけるわ!」
その後暫らく採取を続け、満足した表情でギルドに戻った。




