66. 奴隷市場
グレン達【銀狼の牙】パーティーと別れた後、彼女を引き取る為奴隷商人の店に向かった。
まだ地理が頭に入っていない為中央広場まで戻り、商館が立ち並んでいる通路を歩く。
日が落ちる時間が近づいているので急いで奴隷商館に向かうが、その途中で綺麗な女性が道端に立っているのをチラホラ見かける。
よく見ると、娼館らしき建物が多く並んでいる。
興味深々だが今はそれどころではない。声を掛けられない様に急ぎ足で駆け抜ける。
しかし教えてもらった場所は・・・娼館?
「どうみても娼館だな~」
教えてもらった場所をもう一度確認していると、綺麗なお姉さんが声を掛けてきた。
「お兄さん~入りにくいのなら私が一緒に入ってあげようかい~」
いきなり腕を捕まえられて、耳元でささやく。
腕に柔らかい物が当たっているのがわかる。
「違います!ヘッパー爺さんのお店を探しているんです!」
慌てて腕を払いのけて、後退りしながら尋ねる。
「なんだ~爺さんの店かい、そちらが好みかい?」
「お店を知っているんですか?」
「教えてあげてもいいけど~後でお店に来てくれるなら~」
返事が出来ず困っていると、急にお姉さんが笑い出した。
「真面目な人ね~爺さんのお店はこの娼館の真後の建物だよ!横の路地を入って裏通りに出ればすぐわかるはずさ。」
教えてくれたお姉さんにお礼を言って頭を下げ、周りの目が気になるので逃げるようにその場を離れた。
言われた通り横の路地を歩く。
思っていた以上に道幅が広く、そして暗く長い路地だ。
誰かに見られている感じがする・・・何か匂う?臭くは無いが獣臭が漂っている。
「ご主人様~気配が2体あります。排除致しますか?」
シノが念話で尋ねる。
「いや、ここでトラブルは問題になる。このまま進むが飛び道具は対処してくれ!」
「承知いたしました。」
アイテムバックから2匹の小さな黒蜘蛛が左右の壁に移動した。
初級の闇魔法は取得しているが、アイテムバックにシノがいると魔法を唱えなくてもダークアイの魔法が発動しているようで、暗闇でも問題なく回りが見える。
何事もなければこのまま気が付かないフリをしておこう。
緊張しながらも暗闇の通路を抜けると、明るい裏通りの広場に出た。
娼館の真後ろの方角を見ると、それらしき建物がある。
道を挟んで反対側には、露店風の店が並んでおり檻車が何台も置かれてある。
広場の回りには大きな商館が何件かあり、この場所の出入口は先程の暗くて長い路地しかなく袋小路の様になっている。
という事は、路地にいた連中は見張りの輩だな。
奴隷市場なのだろう!檻車の中には女達がいる。たぶん売りに出されている奴隷だろう。
大きな商館の前には、立派な馬車が何台も止まっている。
奴隷を買いに来ていると思われる、身分の高そうな人物もチラホラ見受ける。
馴染みのない俺には檻車の中にいる彼女達の姿は直視できないが、客らしき男達はニタニタしながら彼女達を眺め商人と話をしている声が見受けれらた。
俺はその場を直ぐに離れるように商館の中に入った。
「いらっしいませ!今日はどのような御用でしょうか?」
商館の中に入るとメガネを掛けた背の高い年配の男が声を掛けてきた。
「冒険者のコウと言う者ですが、ヘッパーさんに用事がありましてお伺いしました。」
「コウ様ですか、お話は聞いております・・・どうぞ、ご案内いたします。」
案内された部屋に入ると、ヘッパー爺さんが机の上にある書類を処理していた。
「これはこれはコウ殿!よく来たくれましたな~」
ヘッパー爺さんはソファーに座るよう勧めてくれると、仕事の手を止めて真向いのソファーに腰掛けた。
「立派な建物ですね!」
「それなりの扱う人数と防犯も兼ねると、この規模の建物になってしまっての~」
「外の檻車にいた奴隷もヘッパーさんの店ですか?」
「あの連中と一緒にしないでおくれ!ワシは奴隷を見世物にはしない!」
ヘッパー爺さんは険しい表情で怒っている。
「奴隷にも人権があるし、見世物にして商売をする連中の気がしれないの~」
「ヘッパーさんの奴隷は他の店とどう違うのですか?」
「ワシの店は主に冒険者を相手に戦闘奴隷と性奴隷を扱っておりますわい。」
以前話してくれた地下迷宮の探索に、パーティー内に奴隷の仲間を入れるメリットを話してくれた。
特に戦闘も出来る性奴隷はギルドでは重宝されるし、魔法が扱える奴隷は王宮でもギルドのどちらにも必要な人材で高く取引が行われるとの事だ。
「他の商館や外の檻車で商売をしている連中は?」
「隣の商館は各地にある国の直営店で戦争奴隷や捕虜を取り扱う為、辺境伯様が管理されておりますわい。その隣が一般奴隷を扱っておる店で主に坑夫や娼婦、外の広場にいる連中は他国から来た商人や違法スレスレの商売をしている露店商人ですわい。」
「この場所は奴隷の売り買いをする為に作られたのですか?」
ここの広場は外部と遮断されている見えない壁があるように感じていた。
「コウ殿は鋭いですな~おっしゃる通りこの場所は、外部から干渉されない様に結界が張られておりますわい!」
「結界!」
「奴隷の売り買いは国が認めている合法的な商売じゃが、誰でも行ってよいわけではないんじゃ~国王の許可が必要と場所も指定されておる。」
「なぜ場所の指定があるんですか?」
「奴隷の中には重要人物がいる場合がある。特に戦争奴隷じゃな~情報が洩れると彼らだけではなく関係ない奴隷までも危険な事に巻き込まれる恐れをあるんじゃ!それらを防ぐ為に場所を定めて外部から影響を受けない様にしておるんじゃ~」
「奴隷達を守るためなのか・・・結界は魔法攻撃を防ぐためですか?」
「そうじゃな~それもある・・・が・・・奴隷の中には魔力持ちがたまにいるが、国やギルドにとっては活用できる人材を貴族や金持ちの道楽に使用されたくないのが本音じゃ!ゆえに魔力が感知出来ないように魔道具が設置されておる。」
「そういう魔道具があるんですね!」
「一般には知られてはいない魔道具じゃがの~」
そういう魔道具を作れる人物がいるのも、秘密にして置かなければならないはずだ。
ここでは魔法を使うこと自体禁止だな!
「我々奴隷商人同士で、魔法や戦闘の才能がある奴隷は騎士団かギルドが優先的に買取が出来る仕組みになっており、この場所以外での奴隷の売り買いは違法じゃ!その他の場所の取引されるのは闇商人と思って間違いがないから気お付けて下され。」
闇商人に加担する人さらいの盗賊団が横行しているので、捕縛又は討伐すれば報奨金が出るらしい。
ヘッパーは奴隷制度の必要性や奴隷市場の仕組みを色々教えてくれた。
暫らく話し込んでいると、扉がノックされ小奇麗な少女が入って来た。
「お呼びでしょうか?」
少女の顔に見覚えがある。
「メルンさん?」
「はいメルンです。」
「服装が違っていたので、見間違えました。」
輸送中の檻車の中のメルンはボロボロの布服だけで肌も荒れてホコリだらけだったが、今の彼女は綺麗な服に身を包んでいる。
「メルンにはコウ殿からお預かりしている大事な人の世話をさせておりますわい。」
彼女はお辞儀して答える。
「タカ様の怪我は、足の骨折以外は順調に回復しており、落ち着きを取り戻しております。」
「そうですか~それは安心しました。骨折は時間が掛かりますからね~」
「それが・・・回復のスピードが普通より速いです。」
メルンの戸惑いの顔色をみて、彼女の召喚の事が頭をよぎった。




