59. 収束
祝・20000PV達成!
アデル達の危機を救ったコウは皆から感謝されたが、心の中ではこの状況は非常にマズいと思っていた。
「グレンさん、ポーションの件は内密にお願いします。」
「コウ殿~もちろんだ!アデル達にも詮索しないように伝えている。」
グレンの言葉を聞いて、ホット胸をなでおろした。
アデルはニックとモーリス3人で、グレンはリナとユナに両腕をつかまれ、ガルテノはミエールと仲良く2人で歩く。
俺は・・・寂しくはないが・・・なんかむなしい~
待機していた馬車まで全員で戻ってきた。
「魔物は全て討伐したので、もう大丈夫だ!」
アデルが報告をすると、馬車の御者と相乗り馬車の乗客が安堵した表情になった。
「あんたら運がいいようだな!」
オリバーがアデル達の姿を見て呟いた。
俺は相乗り馬車に乗る前に、シノと念話で話をした。
「シノ!新たなゴブリンはどうなった?」
「はい問題なく始末致しました。」
「ダークナイトはどうだった?」
「1匹だけ私が、残りの5匹はダークナイトが始末致しました。」
「怪我とかはしていないか?」
「かすり傷ひとつもありません。」
ゴブリン相手では、物足らなかったかもしれないな~
「そうか助かった。アイテムバックに戻って休んでおくれ。」
シノはアイテムバックに、ダークナイトは召喚魔法を解除すると姿が消えた。
コウは誰にも見られないように、シノの回収とロキの召喚魔法も解除して相乗り馬車に乗り込んだ。
「用は済ませたかい?」
オリバーの言葉にドキッとしたが、平然と答えた。
「緊張していたのが、一気に緩んだみたいです。」
オリバーが笑い出すと、俺もつられて笑い出した。
3台の馬車は茂みから街道に戻り、グラッサーの街に向けて出発した。
**********
グレン達がいる場所にコウが移動したのを確認したシノは、召喚されたダークナイト引き連れその場から姿を消した。
まだこの場所に馬車が待機しているのに気づいていないが、危険が近づいているのには変わりがない。
「ご主人様の命令通り、こちらから危険を排除します。」
ダーグナイトに指示を出し、小さな黒蜘蛛の体からは闇属性の魔力があふれ出でいた。
新たな現れた魔物は、容姿はゴブリンだが赤い帽子を被っているレッドキャップ5匹と、5メートル位ある巨人のオーガが1匹だった。
なぜここに出現したのかは謎だが、レッドキャップはゴブリンとは似ても似つかない残忍かつ凶悪のBランクの魔物で、巨人のオーガはオークよりも強靭で村をたった一頭で壊滅させられるだけの脅威があるAランクの魔物である。
「ご主人様の命令は絶対です。私の指示通り魔物を始末しなさい!」
ダークナイトは無言のまま剣を構える。
レッドキャップの動きはブーツに魔法が掛けられており非常に機敏で、武器である片手斧でダークナイトに襲い掛かる。
レッドキャップの動きを見切っているかのように、ダークナイトは剣で受け止めそのままレットキャップの胴体を切り裂く。
1匹・2匹・3匹と、いとも簡単に切り落とす。
残りの2匹は片手斧の攻撃をやめ、杖による魔法攻撃を仕掛けた。
1匹は呪いの魔法を掛けたが、ダーグナイトは人ではないので効果がない。
もう1匹はファイヤボール(火球)の上級版でフレイムボール(火炎球)の魔法で攻撃したが、甲冑姿のダークナイトには一向に効かない。
慌てるレットキャップに向かって剣を振り下ろすと、2匹は地面に倒れ息絶えた。
残るのがオーガ1匹だけになると、オーガは逃げ出した。
しかし逃げるオーガの行く手を遮るように、巨大な黒蜘蛛の姿が目の前に現れた。
恐怖に駆られたオーガは樹木の棍棒で黒蜘蛛に殴りかかったが、蜘蛛の糸で手足を縛られ剛強な爪の一撃で首が胴体から離れて絶命した。
シノとダークナイトは、何事もなかったようにその場を離れ待機してある馬車の近くに戻り、コウの帰りを待っていた。
**********
冒険者達が戻ってくると、シノはコウの近くの樹木で黙って待機している。
シノはこの場所を護衛するというコウの命令通り動いただけで、討伐した魔物の種類やランクは報告する必要はないと判断していた。(聞かれれば即答するつもりのようだ。)
コウに報告を終えると、アイテムバックの中に入って姿を隠した。
3台の馬車は予定より遅くなったが、無事宿営地の場所に着いた。
「今日はここで宿泊します。各自休んで下さい。」
係員の言葉で馬車から降りて、皆一息ついた。
「オリバーさん、焚き火用の小枝を集めてきます。」
オリバーに声を掛けて、近くの茂みに移動した。
オリバーはコウの後ろ姿を眺めて、無言で焚き火の準備をした。
今日の出来事で、アデル達冒険者やグレン達も疲れたのだろう~見張り役を除いて静かに休んでいる。
そういう俺も今日は非常に疲れた。
主に戦闘はしていないが、召喚魔を2体呼び出し魔法も使用したのでMPが一気に減ってしまったようだ。MPがゼロになると魔力切れで動けなくなるとシノから聞いていたので、危なかったかもしれない。
休息を取ればMPは徐々に自然回復するので、今日はグッスリ休もう!
皆が休んで静かな暗闇のなか、コウのアイテムバックから小さな黒蜘蛛が6匹程出てきて近くの樹木にそれぞれ移動した。
シノはコウの疲れがピークであると判断し、今魔物に襲撃されたら自分の姿を現さないとお守り出来ないと考え、事前に自分の分身を哨戒に当たらせ何か見つければ対処するつもりでいた。
普段であればこの辺りは魔物が多く存在するが、オーガが出現していたお陰で魔物達はこの周辺から遠くへ移動していた。
3日目の朝がやってきた。
昨日の疲れはまだ全回復していないが、定期便の馬車は遅れることは避けたい。
「皆さん!疲れていると思いますが、すぐに出発します。」
係員の合図で、すぐに片づけ馬車に乗り込む。
まだ森林の危険地帯を抜けていないので、昨日と同じくガルテノとミエールが斥候として街道の安全を確認している。
昨日の遭遇が嘘のようにアリ一匹も見当たらない、
「何かあったのかしら?」
ミエールは周りの静けさに疑問を抱いていた。
「コウさんが何かしでかしたかもしれないな!」
ガルテノもミエールと同じ感覚だった。
何事もなく街道を順調に進む3台の馬車。
日も落ちる頃になると、森林を抜けて宿営地に到着した。
「皆さんお疲れです!グラッサの街まで残り2日です、今日もゆっくり休んで下さい。」
係員が声が少し弾んでいる。
いつものようにオリバーが焚き火の支度をして、俺が小枝を集めてくる。
早めの食事を済ませくつろいでいると、グレンとアデルが揃ってやって来た。
「コウ殿、調子は戻ったかな?」
グレンがいつものように果汁水を持ってきてくれる。
「コウ殿、昨日は疲れ果てていて、お礼も言わず申し訳ない。」
アデルが神妙な表情で、頭を下げる。
「気にしないで下さい。同じ冒険者で出来ることをしたまでです。」
「そう言ってもらえると有難い。」
「それより体の方は大丈夫ですか?」
「昨日ゆっくり休めたお陰でだいぶん良くなった。本来なら命を落としていたかも知れない所をコウ殿に救ってもらった。何かあれば借りは返すつもりだ~遠慮なく言ってくれ!」
「有難うございます。何かあった時は力を貸して下さい。」
「コウ殿、我々も同じです。」
アデルとグレンは似ているようで、男気がにじみ出ている。
2組のパーティーは、これからも成長していくだろう!
何かあった時に力を貸してくれる仲間が増えた事は、今後の活動の役に立つだろうと考えているコウであった。




