51. 工房
工房の下見をする為に診療所の受付にきた俺とシノは、エリスの姉であるアリスに工房の案内をしてもらう事になった。
受付部屋と治療者用控室の間にある倉庫の部屋を案内され、部屋の中に足を踏み入れた。
「薄暗い部屋ですね!アリスさんこの部屋は?」
「この倉庫は治療に必要な材料や、ポーションを保管する部屋です。部屋を薄暗くしているのは、少しでも劣化を防ぐため光を最小限にしています。」
棚には薬草が入っている箱や、何種類かのポーション液が入っている小瓶が置かれているが、在庫はあまりにも少ないと感じた。
「在庫が少ないように感じますが!」
「今までは在庫も結構有りましたが、最近怪我をする冒険者が増えて使用量が多くなっているんです。」
そういえば、昨日ギルドに入る時に診療所の入り口は人が多かったな。
「新人の冒険者が多くなったせいですかね?」
「それもあるかもしれないけど、街道に魔物が出るようになって通行人や荷馬車の護衛に雇われた冒険者が襲われるようになったのが原因よ。」
「いままではなかったのですか?」
「街道に現れるのは盗賊だけで、魔物が現れた事は無かったわ!」
レベルの高い魔物が現れれば、Eランク以下のパーティーでは厳しいだろう。
かといってDランク以上のパーティーでは、依頼料が釣り合わないので事情が無い限り受けないだろう。
「昨日も荷馬車が襲われて、護衛にいた冒険者パーティーが大怪我をして戻って来たわ。」
そういえば昨日ギルドに戻ってきた時、診療所の方が騒がしかったが其のせいだったんだ。
「彼らは回復用のポーションを持っていたので命に別状はなく良かったんだけど、危険を冒してまで来る商人が減るとますます物資の輸送が少なくから悪循環になるわ。」
「セシール村にとっては死活問題ですね。」
「そういう事だから、コウさんには大きな期待をしているんです。」
プレッシャーに押しつぶされそうだ。
倉庫の中にある種類等の説明を受け、奥にある扉の前に来た。
「この扉が、工房区へ繫がる出入口です。」
扉を開けると小さな部屋があり、左右に窓口みたいな扉と正面には頑丈な鉄の扉があるが、取っ手もなく締め切ってある状態だ。
「この部屋は配膳室で、正面の扉から先は登録した人しか入れないの。左の窓口は工房で出来た品物が運ばれて来るの。右側の小窓は病室で治療に必要な薬を受け渡す為で、残りの薬は先程の倉庫に保管する仕組みになっているわ。」
「工房への扉はどうすれば開くんですか?」
「エリスから渡されたカードをお持ちですよね。」
契約書と一緒に入っていたカードの事だな。
俺はアイテムバックからカードを取り出し、アリスに見せた。
「そのカードは登録カードで、扉の横にある小さなガラス窓にかざして次に登録する人物のギルドカードをかざせば登録が完了するわ。一度登録すれば、次からはギルドカードで入出できるようになるわ。」
アリスに言われた手順で俺とシノのカードを登録した。
「その後の登録は、コウさんの判断で自由に登録しても問題はないわ。」
「ただし、工房区内はコウさん達の住居も兼ねているので、プライベートも考慮して慎重に登録した方がいいですよ。」
アリスの言葉に戸惑いを感じたが、ここは笑ってゴマ化した。
「詮索はしないから安心して!私は工房区へ立ち入れないので、この先は二人で確認して下さいね。」
アリスの言葉で、自分のギルドカードを小窓にかざしてみる。
小窓が少し光った後、重そうな鉄の扉が静かに開いた。
「凄い仕組みですね!」
「錬金術師が作った、魔石を利用した魔道具の一種だそうですよ。」
「セキュリティーが厳しい研究所みたいですね!」
「ポーションの製造工房は機密事項でどこの国も秘密にしていますし、この場所も限られた人しか知りませんので公にしない様に注意して下さいね。」
「他国が狙っているかもしれないと考えると、俺なんかが独占してもいいのかな?」
「コウさんは問題ありませんよ!狙われるのは上級ポーションや価値の高い魔道具で、この時代に作成出来る錬金術師はいませんから!」
「そうですよね~初級ポーションも作れるかわからないのに、要らない心配でした。」
アリスに作り笑いをしながら目を逸らした。
「工房内を見てきます。」
「診療所やこの場所はいつでも自由に出入りして構わないし、好きに使っていいわよ。」
アリスは説明が終わると受付に戻って行った。
アリスが去った後、開いた扉の中に入った。
2人が入ると、鉄の扉は自動ドアの様にかってに閉まった。
「何か違和感がある場所だな!」
足を踏み入れた場所は狭いホールで、すぐ目の前には地下に続く階段があった。
「ご主人様!このホールには魔力を感じます。」
「魔力!不審者撃退装置でもあるのか?」
自動ドアの魔道具を作れるぐらいなら、撃退装置ぐらい作れるだろう!
俺はあまり気にもせず、階段を降りて行った。
階段を降りるとまたホールがある。
「このホールも魔力を感じます。」
シノの報告を聞いてから扉を開ける。
扉の奥は直線の通路で、左右に2ヵ所の扉と突き当りにも扉がある。
「とりあえず、全ての部屋の確認をしておこう。」
シノと2人で全ての部屋の中に入り、工房の全体を把握した。
左側の扉は作業部屋が2部屋、右側の扉は厨房兼食堂と寝室に繋がっている控え室があり、それぞれの寝室が3部屋、正面の奥はトイレ・洗面所・お風呂場と全て揃っており、綺麗に整理整頓がされていた。
ひと通り部屋を見て回り、作業部屋で休憩することにした。
「これだけの施設を地下に作るのは大変だったに違いない。」
「土魔法を使えば、そんなに大変ではないと思います。」
「シノは土魔法が使えるのか?」
「長く生きていますので、大抵の魔法は使えますが上級魔法は無理だと思います。」
「シノは闇魔法が得意だったな。」
「はい!全ての闇魔法は上級まで使えますが、ご主人様の魔力の供給が無ければ無理です。」
「俺の魔力はそんなに凄いのか?」
「シノを包み込む凄い魔力をお持ちです。」
「そんな実感は全く感じないんだがな~」
「レベルが低いと使用できる量が少ないためそう感じるかもしれませんが、ご主人様は全属性の魔法を使える賢者様です。錬金術に必要な知識と経験を積めば上級ポーションも可能です。」
「上級ポーション以上の物はあるのか?」
「ありますが賢者様では無理です。ただし聖女様の魔力であれば可能です。」
「聖女か・・・そういえば先に召喚されていた彼女はどうしているんだうかな~」
召喚されたときに目に映った彼女の顔を思い出していた。
今までの出来事を頭の中で思い出していたが、俺は運が良かったかもしれない。
今、俺がやらなければならない事を考えよう!
目の前には作業台があり、左右には型枠みたいね箱が置いてある。
「シノはポーションを作った事はあるのか?」
「申し訳ありませんが、作成に必要な聖魔法を扱えません。ただ作り方は知っています。」
「今から作って見たい!シノ教えてくれ!」
初級ポーションの材料であれば作れるとの事で、シノから手順を教えてもらった。
作業に必要な道具を探して作業台に並べ、ポーション作りの第一歩を踏み出す事になる。
2025年元旦
皆さま開けましておめでとうございます。
思い付きで書き始めた小説ですが、今日まで続いています。
読み手がいると思うと頑張れます。(PVが増えると嬉しいです。)
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