Episode Ⅰ
世界で人間の限界を超えた超人を作る研究が行われていた。
アメリカ政府はその、人間の限界を超えた超人『スーパーソルジャー』を作り全員がそのスーパーソルジャーで結成された国を守る騎士という意味から名付けられた部隊『ナイト』を設立しようと計画していた。そして、世界中のトップクラスの優秀な科学者を集め巨大な施設を作りそこで最新の研究を進めていた。
「さすがですね。ドクターサイラス」1人の科学者が話しかけた。サイラスと呼ばれた23歳くらいに見える男は落ち着いた口調で「この、細胞を活性化させる特殊な光粒子のエネルギー体『フォトンエナジー』はもう少しで完成しそうだ」と答えた。
この施設には研究する場所からスーパーソルジャーに耐えるための体を鍛える過酷な訓練を受ける場所まである。
さすがアメリカ政府の施設だけあって最新の設備が揃っている。
そして、最初は困難を究めたが、研究を始めてたった3年程でフォトンエナジーの完成が間近となった。これほど異常ともいえる程早く開発が進んだのも世界中からトップクラスの優秀な科学者が揃ったのと、何より若き天才科学者サイラスの存在が大きいだろう。
そしてその数ヶ月後ついにフォトンエナジーが完成した―が・・・あろうことか1人の科学者が裏切った。
ドンッドンッ!!銃声が響く。
「何をするんだ!サイラス!」研究スタッフが血まみれで倒れ、周りから悲鳴が上がる。 「やっと、フォトンエナジーが完成した、そしてこれを作れるのは私を含む、世界から集められたここにいる科学者だけだ。つまりお前達を殺せば私しか作れないことになる!」
ドンッドンッ!サイラスは躊躇う事無く科学者を撃ち殺していく。
「ここにある完成品もすべて私がいただいていく」
「何をやっているんだっ!!早くやつを取り押さえろ!!」施設の責任者達が大声を上げるが、すぐに「無理です!施設の全コンピューターが言う事を聞きません・・・!」と管理者が混乱しながら叫ぶ。
「なんということだ・・・相手が優秀すぎる故打つ手が無いというのか・・・」
全カメラが停止し、施設の機能が全て操作され騒ぎの中いとも容易くサイラスはフォトンエナジーを持ち出し、姿を消した。
数時間がたち、どうにか関係者が研究室に入った頃には中はもう滅茶苦茶になっていて見るも無残な状態だった。
「くそっ・・・」と責任者たちは怒り、それと同時に嘆いた。
普段は訓練兵は立ち寄れない研究スペースだがさすがに事が事だけに訓練兵も集まり、ひどい、と言う者や、それじゃあ俺たちスーパーソルジャーになれないっていうのか?と騒ぎが収まらない中、1人が偶然あるモノを見つけた。
「これ、フォトンエナジーじゃないですか!?」と声を上げ不意にそこにいた全員がそれに注目した。
「奇跡だ・・・」
責任者が顔色を変え呟く。
そして、「これがあったら、また作れるんじゃないか?」
「いや、もう世界にこれを解析できる者はいない。実物があっても量産は出来ない」
「では、これがあっても意味が無いというのか?」と騒ぎ始めた。
その最中に1人の訓練兵が落ち着いた口調で「では、これをここにいる誰かに使い1人でもスーパーソルジャーを作ってみてはいかがでしょうか?」という意見を述べた。
周りはしばらくザワついたが、全て奪われたと思われていたフォトンエナジーが見つかった事と、そのフォトンエナジーをどうするかという問題が新たに出たため次第に冷静になっていく。
その後何ヶ月もの期間が過ぎ、それまでのスーパーソルジャー計画のために使われていた施設はサイラスの電子ウイルスにより全ての機能が使えなくなったため政府は新たな施設を早急に作り直し、最後の1個となってしまったフォトンエナジーを誰に使うかで何度も会議を開き候補者の訓練結果から入念に審査していく。
そして、訓練兵の中で最年少であらゆる能力が高く優秀な成績を収める青年が正式に選ばれた。
「ネオ・プライナ。会議で何度も意見を出し合った結果、君にフォトンエナジーを使う事が決まった。今まで君はスーパーソルジャーになるために厳しい訓練をこなしてきた。これが最後の確認になるが、いいかね?」
「当然です!俺はそのためにここにいるんです!」
その後、ネオと呼ばれた青年にフォトンエナジーが使われ、1人のスーパーソルジャーとそれをサポートする為に結成されたチーム『ストライク』を設立し、元々設立されるはずだった『ナイト』の遺志を継ぐ最後の『スーパーソルジャー』という事からそれぞれの名前を取り『ナイトソルジャー』と名付けられた。
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12時、ニューヨークの街は人々で溢れている。ランチタイムで皆がいつもどおりに食事をしようとしているころだった。しかし、事件は突然起きた。
ある高層ビルに10数人の強盗犯が立てこもり「金を出セェーっ!ヒャーハハハッ!」と騒ぎマシンガンを乱射し辺りはパニックになりすぐにどのチャンネルもそのことを取り上げて街が騒ぎになる。
強盗団の1人がテレビをつけ、笑いながら「見ろよ!どのチャンネルも俺たちの事で持ち切りだぜ!!」とマシンガンを上に向けて撃つ。人質にされている人達が怯え床に手を着き悲鳴を上げている。
高層ビルの周りにはいくつものパトカーが並び警察たちが混乱している。
ビルの周辺は簡単には中に入れないようにそこら中に派手に破壊された跡があり更にバリケードまで設置されている。
「どうすればいいんだ!被害者をだす前に何とかしなければ・・・」
「しかし、これだけの高いビルを占拠されるとどうしようもないですよ。周辺も刃物やら爆弾やらで簡単には近づけませんし、下手に手を出したら人質がどうなるか・・・」
と、会話している中1人の青年が現れた。身長2メートル近くで金髪、青いロングコートを着こなし黒いサングラスをかけている。2メートル近い背で目を引くがよく見ると手に刀を持っている。
「な、そこのお前!何てもんを持っている!この忙しい時に不審者まで現れるとか。これ以上面倒な事を起こすな!両手を後ろに回して膝を付け!」
警察が大声でそう言ってもその青年は動じず、ビルのほうに歩いていく。
「聴いているのか!」
青年は落ち着いた口調で「あんた達だけじゃ人質の身に危険が及ぶ。負傷者が出るか、最悪死者が出る可能性もある」そうひとこと言いバリケードの真ん前で立ち止まった。
刀を抜き15メートル近く跳躍をし、軽々とバリケードを跳び越え容易に高層ビルまでたどり着く。そしてそのまままた15メートル近く跳躍しほとんど音を立てずに壁をまるで紙かなんかを切るかのように切りそのまま中に入っていった。これだけの巨大なビルの壁を切ったのに音がでないというのは説明が付かない出来事だった
青年は常人を超えた聴覚で強盗団の声や発している音を聞き場所を特定し歩いていく。
そしてその部屋にたどり着き「失礼」とひとこと言った。
強盗団はその言葉で青年に気づき「てめぇ!!どうやって入ってきやがった!!」と声を荒らげた。
「答える義理は無い」
「はっ、こいつよっぽど死にてぇみたいだな。だったら殺してやるよ!さっさと死んじまいな!!」
マシンガンを構えた次の瞬間、気づくとマシンガンは細かくバラバラにされ、強盗団から数10メートル離れた場所にいた青年は目の前に立っていた。
「・・・何しやがった、てめぇ・・・?」目を丸くするなか一瞬で青年は刀を持っていない左手で掌手を食らわし、犯人はまるで後ろからワイヤーで引っ張られているかのように壁の向こう側まで吹き飛んだ。
「化け物がっ、だがこっちには人質がいるんだ!こいつらを殺されたくなかったら・・・ヒッ・・・」そう言いかけた犯人は突然悲鳴を上げた。気づくと犯人の首のすぐ横に刀が向けられていた。その距離わずか1mm、刀が鋭く光を反射する。
「人質が―なんだって?」
そのあまりにも突然の出来事でそれを察するのに数秒の沈黙ができた。
「・・・たっ頼む。降参するから斬らないでくれ・・・・・」青年に、ほとんど声にならないほどのかすれた声で怯え、強盗団全員が1歩も動けなくなっていた。
「話のわかる人達で助かる」その数分後、10数人の強盗犯は青年と一緒にビルから出てきた。
ビルの周りに集まっていた警察達はありえない現状に驚き「あんた、いったい・・・」と呟いた。青年は「ナイトソルジャー―」と一言言い、後ろに振り向きそのまま歩いていった。
13時頃ネオはサングラスを外しハートビートというバーに来ていた。
かなり広く夜には何十人と集まり賑わう人気の店だが13時という時間帯という事もあってバーにはほとんど人が入っていなかった。
カウンター席に座り中年の37歳ぐらいに見える大柄なマスターに何にします?と聞かれマンデリンブレンドと注文する。
「コーヒーですか?」そう聞かれ、「俺はまだ未成年だ、アルコールは飲めない」と一言発する。マスターは明らかに、じゃあ何でバーに来たんだ?と言いたげな顔をして、コーヒーを淹れる。
店のテレビにはあの事件のことが放送されている。
「被害者ゼロで解決したみたいですよ」マスターがネオに話しかける。
「そうみたいですね」
「そういや、お客さんこのテレビに映っている人にそっくりだね」
「ああこれは、事件を解決した人の服がほしくなって急いで買っちゃったんですよ。恰好を似せているだけです」
「お客さんもしかしてヒーローマニアですか?分かりますよーその気持ち。ヒーローと同じ恰好してるとなんか強くなった気がしますよね」笑いながらそう言う。
コーヒーを飲みマスターとそんな何気ない会話をしながら15分位たち「また来るよ」そう一言言い店を出る。
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アメリカ政府の巨大な特殊施設、選ばれた一部の人しか入れないその場所にネオはいた。
ネオとネオの上官でもありその施設の責任者でもある男性が会話をしている。
「ネオ、休日だったというのに災難だったな」
「いや、被害者がでなくてよかった。犯人も話の分かる人達だったしな」
上官に対しタメ口で話しているが上官が気にしている様子は見られない。
これも、政府の中で唯一のスーパーソルジャーということもあり上官であろうと階級は無いに等しいのだろう。それだけネオは特別な立ち位置にいる。
とはいえ、国に仕える者なので大統領等にはさすがに敬語を使うのだが。
「それにしても、この日本の刀というのは本当に美しい。」
青い瞳のネオは「確かに。刀は世界でもトップクラスの優秀な武器だ。俺も気に入っている。特にこの俺の刀〝不動国光〟はな!」
「ネオ、君の持っているその刀は最近になって発見されたこの地球上で最強の金属ということから名づけられた〝テラメタル〟で出来ている。そして君にはスーパーソルジャーになった時に備わった電撃を放つ能力がある」
「それと、10トンの物を持ち上げる怪力、20メートルの跳躍力、50キロ離れたモノを見る視覚と100キロ離れた距離の人の会話を聞く聴力だろ。ニコル・ライナー」
ニコルは険しい顔をし「今も居場所は不明だがサイラスはどこかで政府に対抗するための計画を立てているに違いない。なんとしても我々は奴を止めなければならない」
ネオは「俺が止める―!」と真剣な顔で発した。
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ニューヨーク、深夜の時間帯にあまり人が通らない路地裏で30人ほどの暴走族が壁にスプレーで落書きをしていながら騒いでいる。
この暴走族がいなければ音を出すものは何ひとつ無いといってもいいくらい人通りの無い静かな場所だ。しかし、そういった所はこういうやからが集まる絶好の場所なのだろう。腰にはハンドガンとコンバットナイフを所持していて、あわよくば通りかかった人に発砲したり切りかかりそうな勢いで騒ぎ立てている。
そこに2メートルを超えるスキンヘッドの大柄な男が歩いてきた。
暴走族たちはその男を見て「おい、何ガン飛ばしてんだよ。死にたく無かったら金だしな!」と絡んでくる。男はそれを無視し歩いていくが、その態度が暴走族たちの反感を買った。
「テメー!無視してんじゃねーぞっ!」大声を上げコンバットナイフとハンドガンを抜く。
「今日の死体行きこいつに決定ー!見ろよ、こいつビビッて黙ってるぜ」と騒ぐなか、ついに男が動いた。
その巨体からは想像もつかないスピードで暴走族を片手に一人ずつ合わせて両手で2人の首を掴み一気に軽々と持ち上げた。そしてその首の骨をいとも容易く折り2人を殺した。
「何だこいつっ…!!」ビビリながら仲間がドンッと発砲するが銃が全く効かず「フンッ」と殴り飛ばされ一撃で原形をとどめないただの肉塊と化した。
次の日、テレビのニュースで路地裏で30人の死体が発見されたと放送された。
ネオは行きつけのバーとなったハートビートにランチタイムに足を運びテレビを観ていた。
「キリマンジェロ」
マスターはコーヒーを淹れネオに出し「最近いろいろ物騒ですね」と話しかけた。
テレビから流れる情報から死者はこの街を騒がす最近勢力を拡大している暴走族で、その死体は銃などを使われたわけではなくかなり大きな鈍器のような物で殴られでもしない限り不可能な原型を留めていない変死体という事が分かった。
いくらなんでも30人もの人数を原型をとどめない状態に殺すにはそれを超える人数でよっぽど過剰に殴り続けないとまず不可能だ。
そしていくら路地裏でもそこまでの規模の抗争があればさすがに騒ぎになる。
という事はかなりの少数でごく短時間に起きた事件という事になる。
まさか、スーパーソルジャーか?不意にネオの頭にその存在がよぎる。
だとすればサイラスが遂に動き出したことになる。そのデバイスに連絡が入った。
「どうした?」
「ネオ、街に爆弾を設置したという脅迫の手紙がアメリカ合衆国議会議事堂に送られてきたとの連絡が来ました。まだ犯行グループの潜伏場所は分かりませんが、念のためすぐに出られるように準備をしていただけませんか?」
それを聞き冷静に「分かったどこで待機していれば良い?そちらにすぐに向かう」
マスター、コーヒー美味しかったよ、とひとこと言い店を出た。
デバイスの情報通りに向かっている最中に突然ドーーーン!!と大きな爆発音が響き一瞬の沈黙の後、辺りが騒ぎ始めた。
ニューヨークの巨大ビルがゆっくりと傾いていく。
どうやら本当だったようだなと思い、仕方なく屋外モニターを観ると現場は辺り一面、粉塵が舞い、半径1キロから先に進めない状態が中継で映っている。
そのすぐ後にモニターが突然切れ、再びついた時には黒い覆面を被った男たちが映っていた。
不気味な雰囲気が漂う男たちは毒々しい口調で「我々の目的はこのアメリカの政治を正すことだ。今から我々の言うことを聞き入れないのであれば、今以上の爆薬を使ってこの街を爆破していく!ただちに国のトップと連盟議会のメンバーをここ、ニューヨークに集め我々と対等な立場で議論を行ってもらう!」
武力会議という訳か。何の罪もない人達を巻き込んで強硬手段に出て“対等な立場で議論”か。
しかも、武力会議をするにしても自分達がワシントンに行って提議するのではなく国会議員たちを自分達の居るニューヨークに来させるのは相当傲慢な態度だ。
ネオはデバイスでテロ組織の場所を調べている部下に連絡をした。
「どうだ?場所は分かりそうか?」
「もう少し時間があれば何とか・・・」
「分かったこちらでも探してみる」
ネオは短くそう言うと耳を澄ませ半径100キロの音を聞き分ける。普段は負担が大きいため聴力を抑えているが、集中する事で聴力をコントロールする事ができる。
人の声や足音、風の流れる音、など様々なものが聞こえる。バイクに乗ったまま街のあらゆる場所から音を聞き情報を集める。そしてある会話が聞こえた。
これでこの国は変わる。
しかし本当に大丈夫か?
心配するな、こっちにはスーパーソルジャーがいるんだ。
勝利は俺たちのものだ!
スーパーソルジャーだと?このテロ組織はあのサイラスとなんらかの繋がりがあるのか?この武力会議も奴が関わっているのか、そんな思考が頭をよぎる。
「まあいい、いずれにしても当たりだな。1200キロ以上も面積があるのに意外にも近い場所に潜伏しているんだな」
デバイスに向かって、部下に「テロ組織の居場所が分かった。向こうには俺と同じスーパーソルジャーがいる可能性がある、ストライク部隊を要請する。直ちに俺の言う場所に向かってくれ」と伝えその事を確認のためもう1回繰り返す。
ネオは90キロほど離れた巨大なビルにそのままバイクに乗って向かい40分ほどで到着し、そのすぐ後にストライクが到着した。
時間が無く、また相手がその気になればいつでも爆破できる状態なのもありしっかりとフォーメーションは組むが相手の出方をうかがう必要は無く、一気に突入した。
すぐにテロ組織がこちらに気づき激しい銃撃戦となった。
「ネオは先に上に行ってて下さい。ここは我々にお任せください」
隊員の1人がそう言う。
分かった、そうひとこと言い、音のする最上階に大跳躍をしてショートカットしていき辿り着く。
組織の幹部とそのリーダーと思われる数人を掌手で吹き飛ばし爆弾のスイッチを確保しようとしたその時、2メートルを超える巨大なスキンヘッドの男が現れた。
「あんたがスーパーソルジャーか。俺のコードネームはナイトソルジャー。あんたの名は?」
男はゆっくりと口を開き「アイアンタイタン!」と叫んだ。
ネオは刀を抜きアイアンタイタンに向けて振ったがガキン!と音が響き斬れない。
今度は男のほうからネオに向けて「フンッ」とでかい拳をぶつけてきた。
刀でガードしたがあまりの怪力に後ろへ吹き飛ばされた。
「なるほど、おまえの能力は体の硬質化か。テラメタルでできた刀でも斬れないほど硬くなれるとはな。力も俺より上のようだ」
「テラメタルでできた武器を持っているのはお前だけじゃない!」とやっと言葉らしい言葉を話し、すぐ横にある巨大なハンマーを手に取り、拳とハンマーでネオを圧倒する。
「あんた、サイラスの部下か?やつは今何処にいる。あんたの他にあと何人スーパーソルジャーがいる?」
ガキン!ガキン!と激しい音が響く。
アイアンタイタンは硬質化した拳で刀を弾き、ハンマーで吹き飛ばす。全宙をし攻撃をかわすが、徐々に後ろへ追い込まれていく。
「プロフェッサーサイラスは崇高なお方だ。俺はプロフェッサーサイラスに自由に暴れられる力を頂いた。ただそれだけだ」と言い渾身の力でハンマーを振り下ろされた時、ネオは左手を前にかざし掌から青い電撃を前方に発した。
ビシャアッッ!!バチバチッ!!激しい電撃による目紛るしい光と音が鳴り響き渾身の一振りを受け止めた。
掌から前方に電気の盾を放つ技 スパークシールド。今度はアイアンタイタンめがけて掌から青い電撃の塊を放つ。電撃の塊を球体にして飛ばす技 シューティングスパーク。
ビシャアァッという雷光と音とともに大きく吹き飛ばす。
「いくら硬くなれても電撃は効くだろ」そう口にし刀を構えた。
アイアンタイタンは立ち上がり、巨体でおもいっきり突進してきた。
「タフなやつだ」電撃で相手の動きを封じる技 スパークリストレイントで動きを止める。
歯をむき出しにして、どうにか電撃から抜け出そうと力を込めるが、全く動けない。
ネオの能力は普通に放つ技と武器に通して放つより強力な上級技が存在する。そしてこれがその上級技、スパークスラッシュ。ネオは刀に青い電撃を通しビシャァッと音が響き、テラメタルでできたハンマーごと硬質化したアイアンタイタンの体を焼き切った。
刀に通すことにより刀の鋭さと電撃による熱で威力と斬撃性が増す技だ。
アイアンタイタンは手に力が抜けたようにハンマーを落とし床に膝を着きゆっくりと倒れた。
決着がついたがゆっくりはしていられない。すぐに爆弾のスイッチを確保し、テーブルに引かれている地図を見ると、運のいいことに爆弾の仕掛けられた場所がマークされている。すぐに携帯端末で部下に、爆弾の位置が分かった。ただちに撤去に向かってくれ、と場所を打ち込んでいく。
数時間後、爆弾は全て撤去され被害者は出たモノの大参事は免れた。
部下に「ネオ、お怪我は大丈夫ですか?」と聞かれ、「骨が折れそうになったが問題ない。あんたは大丈夫か?」と会話する。
「ハッ、銃弾を喰らいましたがこんなのは大した事ありません」と姿勢を正す。
「頼もしいな。だがあまり無理はするな」と気さくに言葉を返す。
「ニコル、もういいか?」ニコルは「ああ、ひとまずはいいだろう。どこか行くのか?」「少しな」
そう言いサングラスを外しバイクで走る。1時間30分掛けてハートビートに着く。
店の中に入りエスプレッソとハンバーガーを注文しかなり遅れたランチタイムとなった。
「お客さん、なんだかボロボロですね。大丈夫ですか?」
「ええ」短い言葉で返し食事をする。
ふと、テレビを観るとここからそんなに離れていない場所で人質を取りトラックの上で大声をだしている男がニュースで取り上げられている。
「・・・やれやれだな」
ハンバーガーを手に持ちながら店を出て現場に向かおうとする。
今日は休める時間が無さそうだ――。
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どこにあるか分からない巨大な秘密基地に教授のような恰好をした男が立っている。
手にはフォトンエナジーを持ち「遂に準備が整った。私が、このプロフェッサーサイラスがスーパーソルジャーだけで結成された反政府組織『ディクテイターアカデミー』を設立し世界を我がものにする!」
知的な印象を与える顔だがどこか不気味な表情でそう不敵に笑う―。