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雪だるま

作者: 清澄涼

 駅の改札を出ると、積雪が月明かりと街灯に照らされ、ぼんやりと青白く、いつもと異なる風景だった。


 銀世界、という程のものではない。

何しろここは都内の住宅街だ。


 ここまで積もるのは何年振りだろう。

俺以外誰も歩いていない。早く帰ろう。家路を急ぎ、キュッキュッと革靴で雪を踏み締め足跡をつける。


 足跡をつけるなり、次から次へと舞ってくる雪で跡は埋められ消えていく。


 通勤時、いつも通り過ぎる公園の入り口で積雪を眺めた。

 家路を急いでいたのに、誘われるように足が勝手に公園の中に入って行った。

 こんな寒い夜、公園にいるのは俺しかいない。

 園内の隅にある自販機で、温かいほうじ茶を選び、ベンチに積もった雪を退けて腰掛けて飲んだ。


 ここは通勤途中にある公園だが、子供時代に遊んだ場所でもある。

 あの頃よく遊んだ青色のシーソーがまだある。

ペンキがかなり禿げていることが、歳月の経ったことを示していた。


息が白くなる。鼻も赤くなっているだろう。早く帰ればいいのに。

立ち上がった瞬間、俺は咄嗟に雪玉を作っていた。


 更に雪玉をコロコロと丸めて大きくしていった。冷たくて手が痛くなっていることも気にせず、夢中で雪を丸めた。


 雪玉が大きくなるのに比例するかのように、

俺は童心に戻っていった。

最後に雪を触ったのはいつだったろうか。


 俺はもういい大人だ。

 きっと、普通なら子供に付き合って雪だるまを作ってやるような歳だ。

 だが、俺は誰のためでもなく、ただ雪に触りたかった。あの頃の気持ちに戻りたかった。


 公園内に落ちていた枝や木の実を利用して出来上がった雪だるまは、なかなかのものだった。


 スマホの写真に撮ろうかと一瞬思ったが、俺の心の中にだけ収めておいた。


きっと、次の朝には溶けているだろう。


2022年1月の大雪の時の設定。

年内に投稿しておこうと思いました。

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