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僕はこの国が好きだ  作者: 花浅葱
No.5 滅亡へ向けて
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第7話 偽りの愛

 

「5m以内にいないと...死ぬ?」

「えぇ!5m以内にいないと死ぬのよ!」

「そんなの...嘘だろ?」

「嘘だと思うなら離れて見ればいいんじゃないかしら?」

「そんなの...本当に死んだら、駄目だろ!」

「じゃあ、疑わないでちょうだいよ!」

 俺は仕方なく加藤の言うことを聞くことにした。確認することが出来ない。死んだら元も子もないからだ。


 ***


 俺が加藤から離れられなくなってからもう早くも一週間が経った。加藤の病気が不調なので、加藤が散歩に行くことはなかった。俺の腹の傷の糸は抜かれる予定だ。

「明日、お腹を縫った糸を抜くからね?」

「あ、はい...それって...手術室に行きますか?」

「えぇ!行くわよ?大丈夫!麻酔はつけるから!」

「そ...そうですか...」

 まずい。このままでは、非常にまずい。加藤から離れてしまう。手術室に行く前に死んでしまうかもしれない。


 ナースはどこかに行った。

「ねぇ?義和?ピンチね?」

「あぁ!わかってるよ!解除...してくれないんだろ?」

「えぇ!だって、あなたを殺すためにここに来ているんだもの!」

「クソ...どうすれば...」


 純愛 能力主:加藤愛美

 強欲性愛・・・自分の欲しい体を手に入れることが可能。

 妬心深愛・・・相手を凍らせることが可能

 愛情遊戯・・・相手に警戒されることなく近づくことが可能。

 無償慈愛・・・自分を犠牲に誰かを助けることが可能。

 贈愛自他・・・愛する相手に愛を贈ることが可能。

 狂愛偏愛・・・この能力にかかった相手は自分の半径5m以内にいないと死ぬ。


 俺は一昨日加藤に説明された能力の概要をまとめる。この6つの能力と、俺の3つ能力の全てを利用するんだ。待てよ。もしかしたら...


「なぁ?加藤?」

「何?どうしたの?」

「一週間前に...俺にあんなにベタベタ触れたのは...愛情遊戯を使ったのか?」

「えぇ!そこで、愛情遊戯と贈愛自他・妬心深愛を使ったわよ!」

「そうか...なぁ?もう1つ...質問をいいか?」

「何かしら?」



「お前の白血病...お前の愛した人から無償慈愛で奪った病気だろ?」


 ***




「お前の白血病...お前の愛した人から無償慈愛で奪った病気だろ?」




「なっ...どうして...それを?」

「図星か...」

「どうして!どうしてわかったの?」

「お前が優しい女の子だって知ってるからな!」

 隣の仕切りの影が動く。そして、義和がこちらにやってきた。

「なっ...義和?」


「お前は...優しいよ...俺は...わかってる!」

「騙されない...騙されないわよ!」

「お前は...俺のこと、好きなんだろ?」

「なっ...な訳ないでしょ!」

「おいおい!”贈愛自他”は愛する人にしか使えないんだぜ?」

「あ...」

「それに、俺はお前が好きだ。どんなに、ブスだろうが、俺はお前を愛してやるよ...」

「本当?」

「あぁ!お前は、好きな人に一生懸命になる健気な可愛い少女だからよ!」

「私の...本当の顔を見ても...笑わない?」

「あぁ...笑わないよ!それに、笑わせないよ!」


 私は、強欲性愛を解除する。私の「本当の」顔が現れる。義和は何一つ嫌な顔をしなかった。


「あぁ...加藤...お前は綺麗だ...」


「───」


 私達はキスをした。


 ***


 俺は加藤に近付く。思ってもないようなことを口で言う。綺麗事を並べるだけで女性は喜ぶ。


「あぁ!お前は、好きな人に一生懸命になる健気な可愛い少女だからよ!」

「私の...本当の顔を見ても...笑わない?」

「あぁ...笑わないよ!それに、笑わせないよ!」


 加藤は強欲性愛を解除する。そこには、ブクブクと肥ったお世辞にも可愛いとは言えない女性がいた。

 学校では男子から「豚」などと言われ、笑われ者にされるような体型だ。だが、ここで嫌な顔をしては行けない。ここは、自分が生きるためだ。背に腹は代えられない。


「あぁ...加藤...お前は綺麗だ...」


 俺は加藤にキスをする。流石に舌を入れられたくはないので、すぐに唇を離した。


「あ、あぁ...」

 加藤は戸惑っている。上手く喋れていない。


「あぁ...加藤!俺は嬉しいよ!」

「ど...どうして?」

「そんなの、決まってるだろ?好きな人にキスが出来たからだ!」

 俺は思ってもないことをペラペラと口から出す。


「そ...そうなの?」

「あぁ!もう...もう!俺は...心残りはない!」

「な...何を言って...」

「俺はもうここで、死ぬことにするよ!」

 俺は1歩ずつ後ろに下がっていく。一歩ずつ。ゆっくりと。俺は偽りの愛を語る。

「何を言っているの?やめて!ねぇ!」

「いや、お前の唇の感覚を忘れる前に死にたいんだ!いいだろ?」

「そんなの...キスくらいいつでもしてあげるから!」

「いいや!最初のキスがいいんじゃないか!」

 俺は1歩1歩後ろに下がる。もう3mは離れているであろう。壁際で丁度6mほどだろうか。

「ねぇ...やめて!離れないで!」


「あぁ...加藤!いや、愛子!好きだ!大好きだよ!」

 俺は加藤から5m離れる。俺の命は───





 奪われなかった。


「はぁ...俺の勝ちだな...」

 加藤は死んでいた。俺の代わりに。無償慈愛で俺の死を自分に移行したのだ。


「かー!ぺっ!」

 俺は痰を吐く。急いで、口を洗いに行った。


「あんなブスにファーストキスを奪われちまった...最悪だよ...」


 次の日、俺は糸を外したので、その後すぐに退院することができた。

次回、北島達に戦いの幕は移動。


残り4人の新キャラの登場までしばし待て。

実際、いつ出すか迷ってるところ。

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― 新着の感想 ―
[一言] あー、そっか....。 この駆け引き、見ていて楽しいです。 すこし、登場人物のクズさが目立ちましたが、教室に一人くらいそういうキャラがいてもおかしくはないと。 栄の良人ぶりが..。評価が…
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