第6話 氷
毘沙門 能力主:久良義和
剣神乱舞・・・日本刀を出すことが可能。
千手観音・・・自分の手を最大8本まで増やすことが可能。
不動明王・・・相手の動きを一瞬止めることが可能。
氷結 能力主:堂島零士
物質凍化・・・触れた物質を凍らせることが可能。
絶対零度・・・-100℃もの温度を出すことが可能。
氷結耐性・・・温度変化に耐性が付く。相手にも付与可能。
加藤が病院服を来て自分のベッドに戻っていた。どうして、どうして凍ったのだろうか。
「もしかして...」
俺の頭の中には堂島の顔が浮かび上がる。堂島は死んだはずじゃないのか。まだ生きているのか。そんな訳ない。ナースの人も、「死んだ」と言っていた。堂島は死んだはずだ。いや、待てよ。誰も「堂島が死んだ」なんて一言も言っていない。なら、堂島はまだどこかで生きている。どこかで、俺を凍らせようとしている。
「堂島...どこに...」
そして、俺は気づく。俺の能力の千手観音を。
千手観音・・・自分の手を最大8本まで増やすことが可能。
という能力だ。注目するのは、「最大8本まで」というところだ。数に制限があるのだ。千手観音なのに、100本腕を生やせないのは何故か。制限があるからだ。なら、他の能力にも制限があるのだろう。凍らせるのにも範囲はあるはずだ。もし、この前戦った痕跡だったとするのなら、探すことは困難だ。だが、近くにいることを賭けるしか無い。
***
私の名前は加藤愛美。この病院には、2つの理由があって入院している。
1つは、白血病を治すためだ。そして、残りの1つは久良義和を殺すためだ。神から授かりしこの能力を使って。能力名は───
***
俺は堂島を探す方法を思案する。堂島は死んでいないと仮定し、ナースが言っていた通りにするならば、堂島は傷一つつけずに生きている。なら、元気のまま病院に来ているということだ。とすると、誰かのお見舞いのフリをして来ているはずだ。
いや、待て。ナースも堂島の味方かどうかわからない。ナースが嘘をついているのかもしれない。もしかしたら、怪我をした堂島を死んだことにしているだけなのかもしれない。
「はーい!久良君!食事の時間だよぉ!」
そんなことを考えていると、ナースがやってきた。
「あ、ありがとうございます...あの...」
「何?どうかしたの?」
「通り魔事件の殺された少年って...堂島...ですか?」
「えぇ...ニュースでも見たの?」
「は、はい。スマホで...」
「そう。堂島君よ。堂島零士君。私は久良君に伝えるために堂島君の本名を知っているけど、普通の人は知らないから、言わないでね」
「わ...わかりました...」
ナースは食事を準備し終えると、部屋を出ていく。
「なっ...なんでだよ...」
堂島は死んでいた。ネット記事で「堂島」と名前が出ていたら確定だ。近くに「堂島」という苗字の人がたまたまいたのかもしれない。
いや、それはない。俺はスマホを見ている。「堂島」という戸籍は大阪や京都に多いとされる。日本にいる「堂島」さんの数は約80人だとされている。なら、いる訳がない。旅行で来ていたのかもしれない。だが、両親たちがインタビューを受けている記事があった。なら、父親や母親でもない。なら、この「氷」は何なんだ。
「なんで...堂島は...」
「義和?どうしたの?」
加藤が話しかけてくる。先程のこともあったので、少し気まずい。
「話しかけないでくれ...集中したい...」
「あ、ごめん...」
この「氷」は一体どこから来たんだ。
***
ふふふ。馬鹿ね。本当に馬鹿。すごく愚か。頭の硬い男だ。義和に出来たのは「氷」だ。ただの「氷」だ。誰も「堂島の氷」なんて言っていないのだ。それなのに、義和は勘違いしている。見ていて楽しいわ。嘲笑うのは我慢しないと。
私の名前は加藤愛美。この病院には、2つの理由があって入院している。
1つは、白血病を治すためだ。そして、残りの1つは久良義和を殺すためだ。神から授かりしこの能力を使って。能力名は『純愛』よ。
純愛 能力主:加藤愛美
強欲性愛・・・自分の欲しい体を手に入れることが可能。
妬心深愛・・・相手を凍らせることが可能。
愛情遊戯・・・相手に警戒されることなく近づくことが可能。
無償慈愛・・・自分を犠牲に誰かを助けることが可能。
贈愛自他・・・愛する相手に愛を贈ることが可能。
狂愛偏愛・・・この能力にかかった相手は自分の半径5m以内にいないと死ぬ。
***
「ねぇ?義和?」
「話しかけるな...」
「ねぇ?義和ってば?」
「───」
「よー!しー!かー!ずー!聞いてるのー?」
「───」
「ねぇねぇ!よー!しー!かー!ずー!ねぇ?聞いてるんでしょ?ねぇー?なんで無視するの?ねぇー?」
「うるさいな!考え事してるんだよ!話しかけてくるんじゃねぇ!」
「何?そんな事言うの?怖い!」
「うるさいな!お前が悪いんだろ!いちいち話しかけやがって!」
「私がその悩みの答えを知っていると...言っても?」
「あ?どういう意味だよ、それ?」
「私が{氷}の答えを知っていると言っても?」
「おい!加藤!お前は知ってるのか?おい!教えろよ!」
「義和が、黙れって言ったからなぁ...黙っちゃお!」
「教えてくれ!加藤!頼む!教えてくれ!」
「しょうがないなぁ...私の能力は『純愛』よ!はい、教えた!」
「『純愛』...お前も...敵なのか?」
「んー...敵?敵じゃないと...思うな?だって、私は戦えないし!」
「{氷}の答えを...教えてくれよ!」
「しょうがないなぁ...いいよ!教えてあげる!」
「本当か?」
「えぇ!まずは1つ目、その{氷}は、私の能力”妬心深愛”で作ったもの!」
俺は驚きで口が動かなくなる。開いたままだ。
「2つ目!久良義和!お前は私の5m以内にいないと死ぬ!」
ベッドとベッドの間は大体3mほどですね。