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僕はこの国が好きだ  作者: 花浅葱
No.5 滅亡へ向けて
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第4話 入院生活開始

 

 俺は目を覚ます。ここは、どこだ。天井には蛍光灯が優しく光っている。

「ここは...」

 確か俺は、堂島によって凍ったはずだ。ここにいるということは、堂島は死んだのだろう。起き上がろうとするが、痛い。体中が痛い。

「うぅぅあぁぁ...」

 俺は鈍い悲鳴をあげる。声の低い悲鳴だ。体の底から沸き上がるような悲鳴だ。

 俺はベッドの上に寝ていた。隣には仕切りもある。そう考えると、ここは病院だろう。

「えっと...誰かー...」

 俺が声を上げても沈黙が続く。


「誰かー...」



「あのー...」


 俺は一人呟く。だが、誰も反応しない。

「これ...自分で行くパターンなのか...」

「ナースコールすればいいわよ」

 不意に仕切りの奥から声が聞こえた。

「あ、ありがとう...その...君は?」

「名乗るなら...自分から...じゃない?」

 口調と声色からして若い女性だろう。中学2年生から、高校2年生辺りだろうか。

「あぁ...ごめん...俺の名前は久良義和。ナースコールがどれかわからずに困っている!」

「しょうがないわね...押してあげるわよ...」

 仕切りの奥の女性はナースコールを押すような動作をする。


「で、名前だっけ?加藤愛美(かとうえみ)よ...」

「ありがとう...加藤...さん?」

「あんた何歳?」

「俺?俺は...15歳の中3だ...」

「そう、同い年か...なら、呼び捨てでいいわよ、久良!」

「あ、はい...か...加藤...」


 ナースがやってくる。

「愛美ちゃん、呼んだ?どうしたの?」

「久良君が、起きたみたいよ...」

「あら、そうなの?教えてくれてありがとうね!」

「まぁ、ナースコールがわかってなかったみたいなので...」

 仕切りの奥からナースがやってくる。俺の方が窓側らしい。

「こんにちは!」

「こ...こんにちは...」

 30代位のナースがニコニコしながらこちらを見ている。


「意識を取り戻しましたね、よかったです」

「あの...俺は?」

「あぁ!久良君、何でここにいるのか、わからない感じ?」

「はい...すいません...」

「久良君、自分のお腹のところ、見てみ?」

 俺はナースに言われた通りお腹を見る。グルグルに包帯が巻かれていて、少し赤く滲んでいた。

「うっ...腹が...」

「そう。久良君、通り魔に腹を斬られたみたいなの。鋭い刃物でね。まぁ、死なないだけマシやね」

「あ...あの...他には...」

 堂島の名前は出さなかった。友好関係があると疑われたくないから。

「あぁ...1人ね...頭から刃物に刺されて死んでしまったわよ...」

 俺らの戦いは第三者の通り魔事件ということにされていた。それは、そうだろう。「能力」のことを言ってもどうせ誰もわからない。大人は信じてくれない。こんな孤独でいるのに。


「そう...ですか...」

 堂島は死んでいた。やはり、俺の作戦は成功したようだ。負けた時に相討ちにまで持っていく作戦だったから、まぁ。勝ちとは言えない。負けたのであろう。


 ***


 一通り診断が終わった後、俺はまたベッドに寝かされた。

「診断、お疲れ様」

 隣で加藤が話しかけてくる。

「お、おう...サンキュー?」

「へへへ...」

「なぁ...聞いていいかどうかわからないが...一つ聞いてもいいか?」

「えぇ...何?」

「どうして...ここに入院してるの?」

 場に沈黙が流れる。仕切りの奥からは何も聞こえない。

「あぁ!ごめん!聞いちゃ駄目だったよね!ごめん!」

「白血病...」

「え?」

「白血病よ。私が入院してる理由は」

「と...倒置法...お、お前!さては!」

 俺は唾を飲み込む。

「倒置法使いなのか?お前も!」

「なっ...何を言っているの?あなたは...」

 加藤も俺のギャグに乗ってくれた。2人は笑い合う。何だろう。この子とは、仲良くしていけそうだ。


 ***


「久良君、体の様子はどう?」

「うぅん...まだ少し痛いです...」

「そう、なら無理は禁物ね。しっかり寝てて頂戴ね!」

「はぁい...」

 数日、俺は入院していた。加藤が起きている時は話をしているが、加藤が寝ている時は暇だ。何もすることがない。

「はい。愛美ちゃん。おはよう」

「んぁ...おはようございます...」

「体調はどう?」

「最近は...元気ですよ」

「そう。なら、今日は散歩に行かない?」

「あ、はい。いいですね。散歩」

「なら、行こうか。立てる?」

「はい。立てますよ」

 仕切りの奥ではゆっくりとポールのようなものに掴まった加藤がいた。

「それじゃ、行こうか!」

「あの...」

「あら、愛美ちゃん。どうしたの?」

「久良君の姿を、一目見てもいいですか?」

「えぇ。いいわよ」

 ポールを持った女性はゆっくりゆっくりこちらに近づいてくる。加藤はどんな顔をしているのだろう。


「んぁ...」


 俺が見たのは───



「あ、久良君...こんにちは...」

「こ...こんにちは...」


 俺がみたのは、顔がとても綺麗な女性だ。「綺麗」や「可愛い」などという言葉でしか表せない。ただでさえ語彙力が少ないのに、美女が目の前にいるともっと語彙力が下がる。容姿淡麗だ。胸は豊かだ。とても大きい。学生とは思えないほどの大きさだ。ピンクの入院服を着ているが、その胸の大きさは隠せていない。胸以外も、華奢な体つきをしている。


「ふふ、よろしくね!」


 加藤は俺に微笑んでくれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「モンスターが現れた。倒すぞ!」→「美少女を助ける」→「仲間になったぞ!」→「魔王が現れた!」→「倒した! 世界の救世主になった」 みたいな、テンポの良い展開が、この作品の味の一つだと思い…
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