第29話 友達
毘沙門 能力主:久良義和
剣神乱舞・・・日本刀を出すことが可能。
千手観音・・・自分の手を最大8本まで増やすことが可能。
不動明王・・・相手の動きを一瞬止めることが可能。
手抜 能力主:松本麻莉亜
抜手抜刀・・・自分の四肢を着脱が可能。
突刺指針・・・針を出すことが可能。長さは最大10cmまで。
空気抜吸・・・相手の近くにある空気を吸収することが可能。
「そうか...断るのか...麻莉亜ちゃんとは、友達になれる気がしたのにな...」
「私も同感です...でも、私は強欲なので、あなたにはここで死んでもらいます」
「へぇ?誰かに雇われているの?」
「そうですね。義和君...あなたを殺せば1000万円貰えるんです...私は1000万を手に入れて怠惰に強欲に傲慢に暮らしたいんですよ...私には親がいません...生活には困窮しているんです...」
松本はこちらを見てニコリと笑う。
「ねぇ、義和君?手抜きって...いいですよね?」
「手抜き?」
「えぇ...そうです...手抜きとは怠惰の代名詞でしょうか...私はそう思っています...」
「てか、さっき{戦うのは勤勉で嫌なのだけど}とか言ってなかった?」
「寝てるところを...1刺し...と言ったところがよかったのですけどね?」
「危ないなぁ...連れて帰ったら死んでたじゃん...」
「ふふっ!強欲になるためには、嫌なものも乗り越えて行かなければならない...私は今から勤勉を乗り越える!」
「よく言うぜ!傲慢な子だ!」
「突刺指針!」
こちらに針が投げられる。1本ずつ。
「そんな針で俺の剣に勝てるとでも?」
「だから寝てるところを狙おうとしたんじゃない!わからないの?」
「だよなぁ...でも、麻莉亜ちゃんを殺したくはない...」
「何で?」
「何でって...君とはいい友達になれそうだから...」
「へぇ、そうなの?」
「あぁ...」
「じゃあ、その友達の為に殺されて!お金になったくれるなら、いい友達じゃないかしら?」
「んな、傲慢な理由で...酷いなぁ...」
「何よ!酷くないわ!」
松本はプリプリと怒る。頬を膨らませていて可愛い。おっと、俺はロリコンじゃないからな?
「針を投げてるだけじゃ、何も進まないわね!」
松本の針を投げる手が止まった。今がチャンスだ。
「不動明王!」
松本の動きが一瞬止まる。その一瞬が命取りだ。
「まずは、針を投げられないように腕を削ぐ!」
”バシュッ”
右腕を切り落とした。そして、そのまま左腕も削ぐ。
”ボトッ”
地面には服の袖に包まれて腕が落ちていた。
「ちょっと!もう、酷いじゃない!いきなり腕を斬り落とすなんてぇ!」
何故だ。腕を斬ったはずなのに。断面から血が出ていない。
「でも、斬られたのが、腕でよかったわぁ!」
松本は、足を使って袖の中から腕を取り出し、肩に近づけた。すると...
”ピトォォ”
「なっ...腕がくっついたぁ?」
「えぇ!抜手抜刀は腕の四肢が着脱可能なのよ!どうした?驚いたかしら?」
「あぁ!すごく驚いた!絶対に五体不満足になれないのか!すごい体だな!よし、下半身と上半身の間でバッサリ行こう!」
「えぇ...か弱い女の子にそんな酷いことするのぉ?」
松本は座ってこちらを見る。男を誘惑するような目だ。13歳にして、どこで習ったのだろうか。
「やれやれ...初めて、人を殺すわね...」
松本は誘惑が失敗したことにいち早く勘付き立ち上がる。松本は袖が切り落とされてタンクトップのようになっている。
「空気抜吸!」
その瞬間、俺の周りの空気がどんどん無くなっていく。コーコーと音を立てて松本の方へ移動しているのがわかる。その証拠に、地面に落ちていた針が松本の方に移動しているのだ。
「なっ...空気が!」
「謝るのなら、今の内よ?窒息死なんて...怠惰ねぇ?」
空気は松本の周りに移動する。なら、松本の周りに直ちに移動すれば間に合うだろう。
いや、俺が近くに移動することで、松本の周りからも空気が無くなる。密着すれば完全な真空になると言うことだろうか。
「なぁ...俺がお前に近づいたら...どうなる?」
「酸素、吸えるんじゃないかしらねぇ?」
「そうか...ありがとうな...」
空気が持たない。急がなければ。
「なっ...」
俺は松本から急いで離れる。俺が移動すればするほど空気は多く松本の周りに移動する。ゴーゴーと風を切っている。
「馬鹿なの?窒息死したいの?」
もう喋れるほどの酸素は残っていない。口を開ければ、死ぬ。俺は松本の方を向く。そして───
”ビュゥゥゥゥウ”
俺は刀を松本の方に投げた。風の力がプラスされ想像できないほどのスピードで刀は松本の方に迫っていく。
”ブスッ”
「げふっ...」
松本はその場に倒れる。
”フュゥゥ”
一気に俺の周りに酸素がやってくる。そして、俺は立ちくらみに襲われる。
「はぁ...はぁ...やってのけたぜ...」
松本は起き上がらない。死んだだろうか。俺は松本を先程まで座っていたベンチの上に寝かせる。
「麻莉亜ちゃん...元気でな...俺はそろそろ次の街に行くことにするよ...」
俺は暗い公園から立ち去る。もう辺り一面真っ暗だ。刀は能力解除で消えたので、刺し傷だけが残り凶器は不明だろう。後、残るのは袖くらいだろうか。
「袖は、回収しておかないとな!」
俺は落ちていた袖を拾う。そして、俺は夜の暗い暗い公園を去った。
「あぁ、麻莉亜ちゃん...君とはいい友達になれたかもしれないのに...」