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僕はこの国が好きだ  作者: 花浅葱
No.5 滅亡へ向けて
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第2話 池本朗

 

 ”キィィン”


 ”キィィン”


 もう数分は刀を交えている。

「あぁ!いい刀の使い方だ!ここで殺すのは惜しい!惜しいぞ!」

「クソッ!チャンスが見えない!」

 俺は困っていた。どうしても堂島に一撃を食らわせることができない。堂島を失神させることができれば、後は何とでもできる。だが、失神させることができない!

「はぁ...はぁ...」


 少しずつ俺の呼吸は乱れていた。


 ”キンッ”


「うおっ!危なっ!」

「いやぁ...今、チャンスだったのになぁ?」

 堂島は強い。体力が残っていなければ勝てない。どうすれば。どうすれば勝てる。

「もうそろそろ...終わりだぜ!」

 堂島はこちらを見てニヤリと笑う。

「不動明王!」

 俺は堂島の動きを一瞬止める。急いで後ろに下がった。

「千手観音!」

 俺の手は4本にまで増える。この手は今着ている服を通り抜けて生えている。


『毘沙門』 能力主:久良義和

 剣神乱舞・・・日本刀を出すことが可能。

 千手観音・・・自分の手を最大8本まで増やすことが可能。

 不動明王・・・相手の動きを一瞬止めることが可能。


「剣神乱舞!」


 俺は何故か最初から能力を使いこなすことができた。何故かはわからない。まるで本能で理解したかのように。


 ***


 時間は1ヶ月前に遡る。俺は自分の部屋の中にいた。

「なんだ...これ...」

 俺は不意に頭の中に『毘沙門』という能力の内容が頭の中に入ってくる。

「千手観音?」

 俺の背中から腕が3本生える。服を通り抜けて生えている。

「なっ...なっ...なんだこりゃぁぁぁぁ!」

 俺は叫ぶ。急いでリビングに向かった。

「母さん!母さん!」

「義和!うるさいわ...って...腕ェェェ?」

「これ...これ!何?」

「わからない...わからないわよ!何なのよ、それぇぇ!」

「消えて...消えてよ...」

 俺がそう呟くと、腕は消えた。どうやら、自分の意識で加減が効くらしい。

「腕が...無くなった?今のは...」

 母さんも驚いていた。幻覚を見たかのようにこちらを指差している。

「母さん...もう1回生やすよ?」

「え...生やせるの?」

「あぁ...千手観音!」

 次は腕が6本生えた。合計で腕は8本だ。

「腕が...8本...」


 ───そんなこんなで、俺は『毘沙門』という能力を手に入れた。


 ***


 ───久良が能力を手に入れた時と同じ時期。


国狭槌尊(くにさつちのみこと)!それで、梅染はどうするのだ?」

「あぁ...そうだな...それじゃ、今から攫いに行ってくるよ!」

「あぁ!行って来い!」

 迦具土神(カグツチ)に半ば強制の命令をされて、国狭槌尊(くにさつちのみこと)は梅染を攫いに行った。


 ***


 こちらも久良が能力を手に入れた時と同じ時期。


 僕達が淤加美神(おかみのかみ)を倒してからもう1年と5ヶ月が経った。デスゲームで起こったことは、昨日のことのように鮮明に思い出せる。忘れられない、忘れてはいけない記憶だ。

「ねぇ、北島?」

「どうしたの?梅染?」

「一緒に帰らない?」

「んぁ、あぁ!いいよ!」

 僕は梅染と一緒に帰る。

「なぁ!北島!」

「どうしたの?酒井?」


 酒井忠は、今年僕達の学校にやって来た転校生である。新しくここに来て友達がいない酒井と、友達が梅染以外死んでしまった僕はすぐに意気投合した。神は殺したから、もうデスゲームは起こらないと思っていた。だが、他の友達は作ろうとしなかった。友達を失うことが悲しいことだから。

「一緒に帰ろうぜ!」

「あぁ!いいよ!」

 僕達は3人で一緒に帰る。


「こんにちは!北島君と、梅染さん!」

 僕達の目の前には高身長の男性が立っている。僕達の名前はデスゲームで淤加美神(おかみのかみ)の創った島に3週間ほどいたので、クラス全員失踪事件として取り上げられていた。帰ってきた後、大量のインタビューをされたので名前は知られていた。だが、今日になって声をかけてくる人は珍しかった。

「こんにちは...どなた...ですか?」

淤加美神(おかみのかみ) の知り合い...かな?」

「なっ...お前は!豆鉄砲!」


 ”バキュン”


 僕はすぐに豆鉄砲を撃った。だが、簡単に止められてしまう。

「北島君、今は君には用はないんだ...」

「梅染!逃げろ!」

「私も戦うわよ!」

「梅染、逃げろ!」

「遅い...」


「きゃっ!」

 梅染は高身長の男に捕まる。

「梅染!」

「万物破壊!」

「土壁...」

 梅染の攻撃は効かない。梅染はそのまま動かなくなった。

「梅染ぇぇ!メントスコーラ!」

 僕は一瞬で高身長の男に近づく。


 ”バンッ”


「げふっ...げふっ...」

「北島君!」

「酒井!げふっ...来るな!」

「酒井君か...友達かな?ここを見られてるんじゃ、能力を授けるしかないよな?」


 何を言っているんだ。能力を、授けるだと?また、デスゲームが...


「おっと、名乗っておきましょう。名前は国狭槌尊(くにさつちのみこと)。伊勢神宮で待っておりますよ」


 そう言うと、梅染を連れた国狭槌尊(くにさつちのみこと)と名乗る高身長の男性は消えた。

「北島!北島!」

「梅染...が...」

 梅染が連れ去られた。梅染。能力。デスゲーム。淤加美神(おかみのかみ)。梅染。国狭槌尊(くにさつちのみこと)。酒井。師匠。デスゲーム。池本朗。


 ───池本朗。


 ごめん。池本。僕は梅染を守れなかった。僕は。僕は。僕は───






 《栄...久美を...頼ん...だ...ぞ...》






*補足*

池本朗も、デスゲーム参加者です。

北島に彼女の梅染を任せて、劇的な最期を遂げました。

作者の推しです。

ちなみに、2度目の名前回。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前編も読んでいるのですが、まだ追いつかずにいます。 先にこちらを読みました! デスゲーム系好きです……!面白そうな物語! って最初から不穏な空気が漂ってますね……。
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