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僕はこの国が好きだ  作者: 花浅葱
No.5 滅亡へ向けて
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第18話 九尾

 

「おい...お前は誰だ?」

「誰って...河井隆貴!お前の師匠だ!」


「違うだろ?このウスノロがぁぁ!」

 僕は妬鬱怠惰で師匠の首を絞める。


 ───も、師匠は平然とした顔で立っている。


「どうした?急に苦しみだして...」

 偽物の師匠に能力が効いていない。だが、僕の心臓は止まっている。


「はぁぁぁぁ...」

 僕は能力を解除する。

「なんで...なんで効かないんだよ...」

 青山には通用したのだ。なのに、何故この目の前にいる偽物の師匠には通用しないのだろうか。

「おかしい...おかしいだろ?なんで...なんで効かないんだよ!止まれ!」

 僕は時間を止める。


 "ドゥゥゥン"



「黒色憤怒!」


 ”パチンッ”


「───ッ!」

 偽物の師匠は吹き飛んでいった。軽い。軽すぎる。

「もしかして...傲慢荼羅!」

「うおぉぉ!」

 偽物の師匠空中に投げ出される。僕の意のままに動いている。

「これは...尻尾?」

 僕は思い出す。九尾の狐を七尾の狐に変えたことに。もちろん、二尾減らしたので、それがどこかに無いといけない。だが、どこにも落ちていないのだ。


 ───その二尾が、師匠とフナに変化したのなら。



「尻尾なのか...尻尾の分際で、師匠の真似をしやがって...」

 僕はゆっくり七尾の狐に向かう。

「おい...狐!返事をしろ!」

「─なんだ!」

「僕の師匠を...侮辱したな?」

 僕は七尾の狐を睨む。


「師匠の侮辱は...許さねぇよ...僕はな!」

 僕は七尾の狐の方に走る。

「なんどこっちに来ても無駄だ!お前は尻尾で潰されるのさ!」

「強引強欲!」

 僕は重力で狐についたままの尻尾を引き寄せる。


 ”パッ”


 ”ドッ”


 ”スタッ”


「なっ!」


 僕は飛びついて尻尾の上に乗った。重力で尻尾を引き寄せられるので、どこにいても足場を用意できる。

「傲慢荼羅!」

 僕の後ろから切り落とされた尻尾が飛んでくる。それは、七尾の狐の顔面にぶち当たる。

「これで終わりにしよう...黒色憤怒!」

「嫌だね!」

 七尾の狐は僕の前に囚われた酒井を持ってくる。避けなければ、酒井に攻撃が当たってしまう。


「───ッ!」


 ”ドォォン”


「残念だったな...」

 僕は深呼吸をする。










「妖狐の野郎が...」



 僕の目の前では血を吐いて七尾の狐は死んでいた。


 ***


「ん...」

 僕は目を覚ます。僕の目の前には、酒井と九尾の狐が横たわっていた。酒井には外傷はないが、九尾の狐は、尻尾が2本千切れていて、心臓を破裂させて死んでいた。


「やっぱり、幻覚の世界だったんだな...」

 いつからが夢だったのだろうか。おにぎりを渡した女も、酒井の格好をした何かも両方妖狐であったのだろう。尻尾だけでも変化できたので、切った爪や切った髪でも変化できたのかもしれない。


「おーい!起きろ!おーい!」

 僕は酒井を揺さぶる。

「あれ...北島?」

「あ、おはよー!寝てた?」

「うん...ぐっすり...」


 ***


 妖狐との戦いは解説が必要だろう。

 まず、妖狐は女の姿で北島と酒井に近づいた。北島が幻覚の世界に入ったトリガーは「おにぎり」だ。

 北島は「おにぎり」を食べていないだろう。だが、能力発動の条件は「おにぎり」を見せることだ。食べさせることじゃない。


 そして、幻覚世界に北島のみを連れて行った。北島は酒井だけを信用していたので、酒井になりすましたのだ。


 なんやかんや合って、九尾の狐になる。幻覚世界での力を発揮するために現実世界でも九尾の狐になった。



 ───では、幻覚世界で妖狐が握りしめていた酒井は何だったのだろうか。


 答えは、「妖狐の心臓」だ。


 北島は酒井の味方だ。その味方を囚えていれば、その味方だけは攻撃しようとしないだろう。そこを狙ったのだ。自分の心臓を酒井に変化させて見せびらかす。誰も心臓だとは思わないだろう。


 なら、何故北島にバレたのだろうか。それは、変化の欠点にあった。


 妖狐は体は何にでも変化できる。なので、単数ならまずバレることはないだろう。

 だが、複数になると違ってくる。どれだけ数が増えようとも、妖狐が持っている喉仏の数は1個だ。

 いくら声を真似出来ようとも、喋れる人数は一人だけだ。

 なので、妖狐は「九尾の狐」と「酒井忠」の2人を演じ分ける必要があった。なので、交互にしか喋れない。


 なので、「酒井」として喋っていた時に、時を止める間に殴られた場合も、「酒井」のまま叫んでしまっていた。


 その上、切られた尻尾で「師匠」も追加で演じ分ける必要があったので、他の2つも疎かになっていたのだ。


 妖狐との戦いの解説はこれで以上にしよう。


 ***


「人を騙すのは...苦手だったようだな...妖狐さんよ...」

 北島は九尾の狐に向かって唾を吐く。師匠を侮辱された事で途轍もなく怒っていた。


 ***


国狭槌尊(くにさつちのみこと)!そろそろ、最後のペアも進ませるか?」

「あぁ...そろそろ進ませないと間に合わないだろうな...」

「わかった!だが、人間はそっちに派遣できそうにないが?」

「じゃあ...赤木の土人形でいいだろう...」

「そうだな!」

 国狭槌尊(くにさつちのみこと)によって『福禄寿』と『寿老人』の能力を持つ者のところに赤木梨優の土人形が派遣されていった。

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