第13話 飯田米太
弁財天 能力主:市川真美
絶対音感・・・7秒先の未来を見ることが可能。
酒呑童子・・・5分間だけ身体能力を大幅にあげることが可能。ただし、その後10分は動けなくなる。
美味美味・・・自分と、自分と親密な関係の人の傷を治すことが可能。
布袋尊 能力主:小田海斗
予言的中・・・数日後の正しい未来を50%の確率で見ることが可能。
疾風迅雷・・・風と雷を起こすことが可能。
幸福分別・・・今欲しいものが手に入る。一日一回使用可能。
俺達は4人ボートの上でコンパスを眺める。青いコンパスには、鉛筆が一本ついている。
コンパスの針の部分は使え無さそうだ。俺の胸ポケットに仕舞う。
「使えるのは...鉛筆1本...削ることは不可能か...」
「あ、あぁ...そうだな...」
「次の幸福分別では鉛筆削りでも貰うのかしら?」
日野は皮肉を込めた言葉を俺にぶつける。
「ごめんって...」
俺は謝ることしかできなかった。
「───ッ!」
飯田から一瞬声が聞こえる。俺たち3人はそちらを見る。
「これが...お前らの言ってた能力?」
「飯田!どんな能力だ?」
「俺の能力は...『御飯』だ!」
御飯 能力主:飯田米太
空腹回復・・・飢えを治すことが出来る。
食事提供・・・その場で、食事を提供することが可能。
「食事担当...これで、食料を幸福分別で出す必要はないのか...」
「飛鳥は何か能力を手に入れたのか?」
「私?私は持ってないよ...」
「そうか...」
”グラッ”
波に押されて船が揺れる。
「おい...あれ...」
飯田が指差す方向には───
「おいおい...早速ピンチかよ...」
巨大な雨雲があった。
***
俺たちは逃げようとするも、為す術もなくボートは転覆。そのまま、僕達は波と雨に飲まれて離れ離れに。
「あぁ...腹減った...」
俺は海のど真ん中で漂流していた。俺は木片を掴んで頑張って浮いている。
「こっから...どうしよう...」
俺の腹の音がなる。もう5日は何も食べていない。水分は、幸福分別で手に入れられるが食事までは手が回らない。もう、餓死しそうだ。そろそろ、飯田と合流しなければ───
”ブクッ”
一つ、大きな泡が海面上に現れる。小田は沈んでいった。極度の空腹により失神したのであった。
***
ブクブク。ブクブク。沈んでいく。
ぶくぶく。ぶくぶく。下がっていく。
ブクぶく。ブクぶく。没していく。
***
「ここは...どこだ?」
飯田と日野は一つの島に到着する。見たこともないような色とりどりの花が咲いている。紫色だったり、オレンジ色だったり。
「うわぁ!綺麗な花!」
「そうだな...残りの2人は...どこに...」
***
ブクブク。ブクブク。沈んでいく。
ぶくぶく。ぶくぶく。下がっていく。
ブクぶく。ブクぶく。没していく。
***
ブクブク。ブクブク。沈んでいく。
ぶくぶく。ぶくぶく。下がっていく。
ブクぶく。ブクぶく。没していく。
***
ブクブク。ブクブク。沈んでいく。
ぶくぶく。ぶくぶ───
「UREYYYYYY!!!!!!!オラオラオラオラ!見殺しにはできねぇぜぇ!」
沈んでいく小田を助けたのは、市川だった。
「オラオラオラオラ!逆に考える?そんなの知らないねぇ!上に上がるんだよぉ!」
小田を掴んで、市川は海面上に上がっていく。
「さて、飯田たちはどこに?クンクン...この匂いは...あっちだぜぇ!」
市川は人間とは思えないような速度で海を泳いでいく。
酒呑童子・・・5分間だけ身体能力を大幅にあげることが可能。ただし、その後10分は動けなくなる。
”酒呑童子”の力で、市川は酒に酔って性格が変わってしまった。実際に、酒を呑んだ訳ではないのだが。
”ゲホッゲホッ”
俺は目が覚める。俺は市川に掴まり、えげつないスピードで海を進んでいた。どこに、どこに向かっているのだろうか。
「真美!」
「海人!起きたのか?」
「え、あ、真美?」
市川の喋り方が変わっている。何があったのだろうか。
「URYYYYY!!!!!!!!!!泳げ、泳げぇ!」
色々と突っ込みたかったが、辞めることにした。市川も食事はないのに、よく生きていた。
「あ...まずいぜぇ!能力が...切れるぜぇぇぇ!」
「うっ、うおぉ!」
市川の動きは止まり、海中に引きずり込まれる。
「真美!真美!大丈夫か?」
俺は市川を抱き上げ、いつもの倍、足で水をかく。そうしないと、2人共死んでしまう。
「へへ...海人...ごめん...」
「真美!助けてくれて、ありがと!」
「えへへ...褒められると...嬉しいな...進んだ方向に...2人はいるよ...」
「そっか!じゃあ、向かう!」
俺は少し少し進んでいく。
***
”ザッザッザッザッ”
飯田と日野は島の中を進む。島は木々に囲まれて日陰になっている。時折、大きなキノコが見える。
「本当に...こっちで合ってるの?」
「元から、正解なんてないだろ?」
「まぁ...そうだけど...」
日野はオズオズとしながら、飯田に着いていく。
「こんにちは...飯田米太君!そして、日野飛鳥さん!」
2人の目の前に高身長の男性と、痩せ細った男性が現れる。
「だ...誰だ!お前は!」
「俺の名前は、国狭槌尊です」
「俺は豊雲野神だ!」
高身長の男性が国狭槌尊を、痩せ細った男性が豊雲野神を名乗る。
「日野飛鳥さんを...攫いに来ました!」
「なっ...」
飯田が反応するよりも先に、国狭槌尊は日野を捕らえる。
「米太!助けて!」
「飛鳥!飛鳥!」
「土壁!」
飯田は、国狭槌尊に殴りかかるも効かない。
「あなたは、市川真美さんと、小田海斗君を殺してください...いいですね?」
「そんなの...いい訳ないだろぉぉ!」
そう叫ぶも、国狭槌尊と、豊雲野神は消える。日野は誘拐されてしまった。