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僕はこの国が好きだ  作者: 花浅葱
No.5 滅亡へ向けて
12/44

第12話 伊江村へ

布袋尊 小田海人

予言的中・・・数日後の正しい未来を50%の確率で見ることが可能。

疾風迅雷・・・風と雷を起こすことが可能。

幸福分別・・・今欲しいものが手に入る。一日一回使用可能。


 

 ***


 ───こちらも、現在。

「あぁ...腹減った...」

 小田は海のど真ん中で漂流していた。小田は木片を掴んで頑張って浮いている。


 ***


 どうして、小田が漂流することになったのかの、話をする必要がある。


 ───小田が漂流する一週間前のことだ。


「なぁ!みんなでボートに乗って伊江村に行かないか?」

 伊江村は沖縄本島に一番近い島である。片道9kmだ。本来はフェリーで移動するのだが、今回は俺の同じクラスの飯田米太(いいだこめた)と、日野飛鳥(ひのあすか)のカップルに誘われたので、俺と市川も参することになった。

「人数は?」

「ボートの大きさ的にも...俺ら4人だ!」

「そうか...なら、ダブルデートだな!」

「あぁ!」

 飯田は体格がよく、筋肉もついている。なので、ボートで伊江村まで向かうことも出来るのだろう。俺も飯田がいれば安心だ。そして、日野は弱々しい痩せ細った男よりも男っぽい。ボーイッシュな、女の子と言ったほうがいいだろうか。顔は健康的な小麦色で、髪はうなじの後ろよりも短い。そして、市川より巨乳だ。


「それで、行くのは?」

「もちろん、土曜日の明日に決まってるだろ!」

 こうして、予定は決定した。


 ***


「さて、行くかぁ!」

 俺たちはボートに乗りこむ。ボートの上には俺たち4人の他に、濡れたときの着替えや、お菓子が箱に入って、乗っている。もちろん、服の上からしっかり水着は着ているのだが、服は十分濡れる可能性がある。帰る時に濡れていては町中を歩けない。


 俺達はボートを漕ぐ。

「───ッ!」

 俺は不意に、予言的中を使った。すると、漂流している未来が見えた。そんな訳ない。だって、伊江村は9km先に見えているし、時折フェリーも通っている。漂流しても、気づいて貰えるはずなのだ。

「小田?どうした?」

「いや...なんでもない...」

「そうか!帰りに体力は残しておけよぉ?」

 飯田はそう言いながら、ボートを漕ぐ。俺の前にある飯田の筋肉のついた太モモが漕ぐのと同じペースで動く。


 ***


「なぁ?どうやって、『弁財天』と『布袋尊』はここまで連れて行く?あいつらは外国にいるぞ?」

「おいおい!沖縄は外国じゃねぇよ!」

「お前こそ、何言ってんだ!琉球王国は立派な外国だ!それに、蝦夷地も外国だろ?」

「はぁ...迦具土神(カグツチ)は昔に囚われすぎだな...」

「んん...何をぉ!」

「2人共!喧嘩はやめてくださいよ!」

 豊雲野神(とよくもの)が、迦具土神(カグツチ)国狭槌尊(くにさつちのみこと)の喧嘩を止める。

「『弁財天』と『布袋尊』は、私の能力で本州まで連れていきますよ!」

「あぁ!そうか!なら、豊雲野神(とよくもの)任せられるか?」

「えぇ!お任せあれ!」

「なぁ...迦具土神(カグツチ)?」

「なんだ?」

「あの、今同じボートに乗っている男に能力を授けたら...面白そうじゃないか?」

 国狭槌尊(くにさつちのみこと)の提案に、迦具土神(カグツチ)は一瞬目を点にするが、すぐにその言葉の意味に気づく。

「あぁ!面白そうだな!やろう!やろう!是非ともやろう!仲間割れが楽しみだ!」

 3柱は、ダブルデートが行われるボートを殺し合いの行われるボートに変えようとしていた。


 ***


「あぁ...空が青いなぁ...」

 俺は雲一つない空を、市川を腕の中に抱き寄せながら眺める。もちろん、ボートの上でだ。

「おぉい!空なんか眺めてないで、ボートを漕いでくださぁい!」

「あぁ...もう!わかってるよ!」


 ”ピュー”


 風が一度だけ吹く。水面には波ができ、ボートは大きく揺れた。

「うおぉ!」

「風かぁ...」

 市川は、被っていた麦わら帽子をその細く白い右腕で押さえる。

「あれ...伊江村は?」

 俺たちが進んでいた方向に、島はない。後ろを振り返っても、島はどこにも見えない。


 ───伊江村と、沖縄本島が消えた。


「なっ...嘘だろ?」

「島が...消えた?」

「いや...逆だよ...俺たちが...ここに来てしまったんだ...」

「ここは...どこなんだよ!」

「わからん...」

「そんなぁ...どっちに行けばいいのかわからないじゃない!」

「焦るな...焦るなよぉ?俺...今は...どうすればいいんだ...」

「小田!島の場所がわかれば帰れるんじゃない?」

「あ、あぁ!そうだな!何が...必要だ?」

「うぅん...コンパスとか?地図は...海だからわからないし...スマホもここは圏外でしょ?」

「あぁ...じゃあ、コンパスが欲しい!」

 俺の手元には、コンパスが現れる。だが、俺らが求めていたコンパスではない。そう、方位磁針ではなかった。

「なっ...なんで!」

「すげぇ!けど、これじゃない!」

「今の何?どこからコンパス出したの?」

「あぁ...そうか...能力とか知らないんだ?」

「能力って...なんだ?」

 俺たちは飯田と日野に能力の説明した。俺の手元にはコンパスがあったので、すぐに信じて貰えた。


「で、それで幸福分別を使ってそのコンパスが出た訳ね?」

「あぁ...失敗だ...」

「明日まで能力は使えないと...はぁ...」

 市川と飯田・日野は揃ってため息をつく。

「なんで、方角がわかるコンパスじゃなくて、円を書くコンパスを出しちゃうのかなぁ...」

 飯田は嘆くようにそう呟いた。

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