第11話 鎮魂歌
”バタッ”
鎮魂歌は静かに奏でられる。青山の道連れになったのは───
「北島!やったか?」
「青山アァァ!」
酒井は北島の名前を叫び、永富は青山の名前を叫ぶ。
道連れは、永富結城だ。
「───!」
永富は悲鳴をあげるも、声にならなかった。そのまま、倒れた。
***
「あれ...北島と酒井は?どこだ!」
青山は花畑にいた。
「何を言っているんだ?」
そこには、永富がいた。花畑には優しい音楽が流れていた。どこか、クラシック調の音楽だが、心に響く。
「永富!付いてきてくれたのか?」
「付いてきたって...お前が無理矢理連れてきたんじゃないか...」
「え?どういうこと?何を言っているんだ?」
「俺とお前は死んだんだよ!」
「は?」
「だから、死んだの!」
「死んだ...の?」
「あぁ!お前が音の斬撃に突っ込んでね!」
「そう...なの?じゃあ、北島と酒井は?倒せたか?」
「ここに来てないなら...まだ生きてる...」
「死んだのは...俺らだけか...」
音楽はだんだん激しくなる。楽器で言えば、トランペットやサックスだ。
「これは...鎮魂歌か...」
「そのようだな...」
「永富!一緒に付いてきてくれるのか?」
「あぁ!北島に天国に来るように頼まれてるからな!」
「北島...勝手なことを...」
青山は北島の優しさに気づいていた。だから、北島を道連れにしなかった。北島は何か成し遂げてくれそうな気がして───
「それじゃ、行くぞ!天国へ!」
「あぁ!」
音楽は前奏を終える。青山の鎮魂歌は発動していた。永富を道連れに青山は死んだのだ。
2人は花畑を歩く。仲良く手を繋ぎながら...
***
「終わったのか...」
「あぁ...そうだな...」
僕達は2人の前で黙祷する。僕は今、初めて人を殺した。いや、土人形なので、人殺しではないのだろうか。
「それじゃ...行くか!」
僕達は歩みと続ける。梅染を助けるために。そして、死んだ2人を報う為に。
***
───時は遡って約1ヶ月前。
「なっ...これは...」
俺の名前は小田海人だ。
「この能力は...なんだ?」
俺は不意に頭痛がしたと思ったら、こんな能力を手に入れていた。能力の名前は『布袋尊』だ。
「『布袋尊』...だと?七福神か?」
布袋尊 能力主:小田海人
予言的中・・・数日後の正しい未来を50%の確率で見ることが可能。
疾風迅雷・・・風と雷を起こすことが可能。
幸福分別・・・今欲しいものが手に入る。一日一回使用可能。
「すごい...能力だな...試しに使ってみるか...幸福分別!」
俺の手の中にはPS5があった。欲しかったゲーム機だ。本物だ。この能力は、本物だ。
「なっ...この能力...すげぇな!」
俺は喜んだ。とても喜んだ。バンザーイ!バンザーイ!
「って、言っても、あんまり欲しいものはないんだよなぁ...」
俺は一度能力を使ってから考える。この能力は1日1回しか使えないのだ。明日から、何貰おうかと考えている。
「しかも...風はスカート捲りとかで利用するとして...雷って...マラソン大会の日ぐらいしか使い道なさそう...」
俺は、暇なので、彼女の市川真美のところに能力の自慢をすることにした。
「真美!真美!」
「海人!私ね!私ね!」
「「能力を手に入れたの!」」
俺たちの声はハモる。何?真美も手に入れたのか?
「え...真美も?」
「え...海人も?」
「えっと...能力名は?」
「私は...『弁財天』...海人は?」
「俺は...『布袋尊』だよ?」
「あ、2人共七福神の名前だ...」
「なら、他にも七福神の名前の能力の人も...いる?」
「あぁ...多分そうよね...」
僕達は互いに能力の概要を説明する。
弁財天 能力主:市川真美
絶対音感・・・7秒先の未来を見ることが可能。
酒呑童子・・・5分間だけ身体能力を大幅にあげることが可能。ただし、その後10分は動けなくなる。
美味美味・・・自分と、自分と親密な関係の人の傷を治すことが可能。
「俺も真美も...未来を見れるのか...」
「私は確定だけど、7秒後だけ...海人は外れるかもだけど数日後...か...」
「2人で穴は埋めていく感じか?」
「えぇ...そうね...」
俺たちは沖縄に住んでいる。
***
時間は現在に戻る。
「やっと退院できたか...」
久良は家に帰ってくる。すると、一つの手紙を見つけた。
「なっ...これは...」
その手紙にはこう書いてあった。
久良君へ
こんにちは。私は国狭槌尊です。
あなたが殺した堂島零士と加藤愛子を派遣したのは私です。
「久良義和を殺せ」と命令をして派遣しました。
あなたの身にはこれから何度も何度も危機が訪れるでしょう。
派遣元は、伊勢神宮にいますので。止めたければ自分の足で来てください。
あなたの無事を祈っております。
国狭槌尊
「なんだよ...この手紙...」
久良は手紙をビリビリに破る。
「こんなの...おかしいだろ...なんで...なんで俺は狙わけなきゃなんねぇんだよ!」
久良は破った手紙をゴミ箱に投げ捨てる。
「乗ってやるよ!その喧嘩!」
久良は北海道から、伊勢神宮へ向かうことを決めた。