第10話 青山健治
大黒天 能力主:北島栄
黒色憤怒・・・相手に破壊力のある攻撃をすることが可能。
時間停止・・・時間を数秒止めることが可能。再度使うには何回か呼吸を挟む必要がある。
傲慢荼羅・・・自分の体重よりも軽い物質を好きなように動かすことが可能。
強引強欲・・・自分から重力を引き出すことが可能。
妬鬱怠惰・・・相手の首を絞める。使っている間は心臓が止まる。
恵比寿 能力主:酒井忠
物々交換・・・自分が持つものと価値の等しいものを交換することが可能。
五穀豊穣・・・1m以内にいる相手の傷を癒すことが可能。
大胆捕鯨・・・能力で作り出した鯨を呼び出すことが可能。
演奏 能力主:青山健治
多重共鳴・・・周りの生物を小規模に爆発させることが可能。
絶対音感・・・7秒先の未来を見ることが可能。5分に1回使用可能。
波長操作・・・音の波を変更することが可能。
英雄の凱旋・・・空間に穴を作り出し、そこから音を出すことが可能。
音の斬撃・・・爪から斬撃を放つことが可能。
満月の夜・・・自分の半径10mを暗闇にすることが可能。
千里馬タップ(ハープ)・・・自分の脚力をあげることが可能。
鎮魂歌・・・自分が死ぬときに相手も道連れにすることが可能。
「俺らは人を殺してない...潔白な人種なんだよ!北島!お前とは違ってな!」
青山は俺の方に向けて中指を立ててくる。
「僕だって...殺してない?」
「あ?何か言ったか?」
「僕だって...殺してない!誰も!みんな大切な友達だから!もう...死んじゃったけど!大切な仲間だったから!気持ちが通い合っていた仲間だったからだ」
「ハハッ!よく言うよ!デスゲームの生き残りの癖に...誰も殺してない訳...ないだろ?」
「僕は...本当に...殺していない!」
僕は青山を睨む。
「お前が...半径10mを暗闇に出来るのなら...よぉ?僕は...半径20mを照らしてやるぜぇ?」
「やってみろよ!北島!」
「あぁ!傲慢荼羅!」
「満月の夜!」
青山の周りが暗くなり、見えなくなる。だが、傲慢荼羅で自由に動かすことができる。暗黒に重さはないのだから。
「なっ...満月の夜が!」
「残念だったな!強引強欲!」
「うわぁぁぁぁ!」
「止まれ!」
”ドゥゥゥン”
時が止まる。僕は、空中で動きの止まった青山の前に行く。
「黒色憤怒!」
僕は青山を殴る。
”パチンッ”
「ぐふっ...」
腹の痛みが残ったまま、青山は俺の方に引きつけられる。
「終わりにしよう...青山...ごめんな...」
「なっ...終わりになんかさせるか!この未来は見えていた!多重共鳴!」
「妬鬱怠惰!」
”ドォォン”
遅い。僕の体の末端は爆発した。熱い。痛い。熱い。痛い。火傷したような痛みだ。そのまま立っていることでさえキツい。
「永富!」
「わぁ!わかってる!打撃豊富!」
「止まれ!」
”ドゥゥゥン”
僕は急いで時を止める。1発殴られたが、耐えられる痛みだ。
「はぁ...はぁ...死ぬ...死んじまう...」
僕は急いで酒井のもとに移動する。
”パチンッ”
僕の体の痛みは無くなる。酒井は失神していても、”五穀豊穣”を残していてくれた。
「ありがとよ!酒井!」
僕は永富の方へ走る。こいつは回復の能力を持っている、早くこっちを瀕死にまで持ち込まなければ。
「打撃豊富!」
「止まれ!」
”ドゥゥゥン”
「黒色憤怒!」
僕は何回も体に黒色憤怒を打ち込む。
”パチンッ”
時は動き出す。
「あぁぁぁぁぁぁ!」
僕は永富に何度も殴られる。なんでだ。黒色憤怒は効かなかったのか。
「はぁ...危なかった...金銀福富がなかったら、死んでたな...」
パラパラと永富の福の中から銀色の物体がこぼれ落ちる。これは鉄だ。
豊富 能力主:永富結城
身体豊満・・・仲間を回復することが可能。
打撃豊富・・・一秒に何十回もの打撃を与える。
金銀福富・・・体に金属をまとわせることが可能。
「なっ...」
「北島...さよならだ!」
”ザッパァーン”
僕の視界は暗くなった。
***
「北島!北島!大丈夫か?」
「痛...くない?」
「北島!起きたか!」
「なっ...酒井?」
僕は酒井の腕の中にいた。お姫様抱っこで持たれていた。青山と永富は巨大な鯨と戦っていた。
「時間稼ぎだ...鯨が勝てるわけがない...」
そう言うと、鯨は唐突に消える。
「北島...お願いできるか?」
「あぁ...任せとけ!」
僕は青山と永富の方へ走っていく。
「永富!もう一度...勝負だ!」
「お前は...俺に負けたはずだが?」
「もう一度...勝負だ!」
「断る!青山を倒してからにしろ!」
「青山を倒しても...お前が回復しちまうだろ!」
「約束だ...青山は回復しない!」
「なっ...永富?」
青山は驚いた顔をして永富を見ている。
「その代わり、酒井の回復も使わせない!いいな?」
「あぁ!それでいいぜ!」
───こうして、僕と青山の最後のタイマンが始まる。
「青山!最終ラウンドだ!」
「あぁ...北島!メッタメタにしてやるよ!」
「お前は一度...いや、二度死んだような物だ!」
1回目はデスゲームで、2回目は、僕に。いや、心臓を貫いたから3度だろうか。
「青山...お前は...もう人間じゃないだろ?」
「あぁ...バレてたか...そうだよ!俺は土人形だ!」
土人形。そんな言葉が、青山の口から出てきた。人形なのに、こんな性格に動けるのか。こんな本物を完全にコピーできるのだろうか。
「青山...人形...だったのか?」
「あぁ!そうさ!俺は偽物だ!人形だ!模倣品だ!コピーだ!クローンだ!ドッペルゲンガーだ!お前の知っている青山なんかじゃない!全くの別人なんだ!残念だな!お前が青山だと勘違いして流した涙は無駄だったんだよ!嘘だったんだよ!あぁ!本当に残念だな!本物にも会えないで死んでいくなんて...いや!本物は天国にいるから、死ねば...会えるかもな!」
青山を名乗る土人形は、そんなことを言う。
「もし...君が偽物だろうが..人形であろうが...別人であろうが...僕は、少しでも青山を思い出させてくれた...君に...感謝をするよ!ありがとう!」
「なっ...俺はお前にありがとうなんて言われる義理はねぇ!」
「それでも言うよ...ありがとう!」
「あぁ!もう!早速勝負だ!音の斬撃!」
斬撃は僕めがけて飛んでくる。
「さようなら!強引強欲!」
青山は、僕の方に飛んでくる。斬撃を通り越して。青山はバラバラになった。
「ありがとう...青山!」
「───!」
音にならない青山の叫びが空間に響く。
───そして、鎮魂歌は奏でられる。
鎮魂歌・・・自分が死ぬときに相手も道連れにすることが可能。
相手は、選ぶことができる。