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【完結】婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される  作者: 四葉美名
番外編

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約束の証 02

 


「じゃあ、読むよ」



 エドが神妙な顔をして絵本のページをめくる。正直子供の頃に学校で習ってからは、前世の戦いのことはすっかり忘れていた。楽しい記憶ではないということもあるけど、もっと忘れたい恥ずかしい出来事があったからだ。



 だって前世の記憶がなかった5歳の私は「悪者をやっつけるなんてすごい!」とか「女の子が戦ったなんてもっとすごい!」と自分を褒め称えていたんだから! ううう! 今思い出しても恥ずかしい……!



学校の授業だってそうだ。先生から偉人として自分のしたことを情熱的に話され、子供の頃言った言葉を思い出しては顔が真っ赤になった。



 そんな私が今日愛する子供たちによって再び苦しめられるとは……。エドがこちらを見てこくんと頷く。私も「かかってきなさい」とばかりに頷き返した。




「これは聖女ローズと英雄フィリップのおはなし」




 どうしよう、しょっぱなからキツイ。なんだかものすごく崇高な存在になってる。どちらかというと私なんて「死なせてたまるか」とエドのことしか考えてない私利私欲の塊だったのに。




「むかしむかし平和なこの国に、となりの国から悪い王子がやってきました」




 子供たちは「こわ〜い」など相槌を打つのでものすごく可愛い。クリスをぎゅっと抱きしめると、こちらを見上げて笑いかけてきた。クリスの可愛い笑顔のおかげで、落ち着きを取り戻してきたわ。かかってきなさい。




「悪い王子はこの国を自分のものにしようとたくらんでいました。しかしそれを知り、立ち上がった1人の少女がいたのです」




 ダメだ。嫌な予感しかない。私はガクリとうなだれクリスの頭の匂いをかぎ再び落ち着きを取り戻そうとする。子供の匂いって本当に癒やされる。




「その名もローズ。その少女は言いました。私がこの国を守ってみせると」




 言ってない。そんなこと一言も言ってない!




「すると王子が言いました。僕も一緒に戦おう!」




 そ、それは似たような事を言ってたかもしれない。なんだかエドの表情が誇らしげに見える。たぶんフィリップ様の感情が出てきてるんだろうな。




「2人は悪い王子がいる場所にのりこんでいきます」




 全然違う。お茶をしてエドとイチャイチャしてたら、勝手にさらわれただけだ。このあたりから絵本はどんどんおかしくなっていく。




「フィリップはドラゴンの剣を持ち、悪い王子に飛びかかります。ローズは薔薇の杖で魔法を使いました」




 え……? ドラゴンの剣? 薔薇の杖? なんのこと? 思わずエドを見るとエドもこっちを見て首を傾げている。絵本をのぞきこむとたしかにフィリップが剣を、ローズが先端に薔薇がついた杖を持っている。次のページをめくるとローズは杖から稲妻みたいな攻撃の光を出していた。フィリップの剣はドラゴンを召喚している。




「ふ、2人は、ち、力をあわせて……悪者と戦います……ふっふふ」




 もうエド、笑っちゃってるじゃない。私はあまりの捏造に呆れて口をあんぐりと開けていた。




「とうとうローズとフィリップは悪い王子をたおし、この国は平和になったのです」




 幼児向け用の絵本なので文字が少なかったが、それでもこれだけ違うとは。前世に関する本を見ないようにしているうちにかなり事実を捻じ曲げられていた。悪い王子と戦って勝ったという大筋だけが残っている。




「聖女ローズと英雄フィリップの魂は、ずっとこの国を見守っていくことでしょう。めでたしめでたし」




 そう言ってエドが絵本をパタリと閉じると、双子はそれぞれ膝から降りドタバタとキッチンに入っていく。なにごとかと見守っているとクロエは泡立て器をクリスはフライ返しを持ってきた。そしておのおのキッチン道具を天井に向けてかかげ、キラキラした目でこっちを見ている。




「わたし薔薇の杖がほし〜い」

「ぼくも! ぼくもドラゴンの剣ほしい!」



 そのポーズはさっき見た絵本の真似なのね……。 もう変な興味持っちゃって。私とエドはあまりの可愛さにクスクス笑いながら答える。



「絵本のお話だから剣や杖はどこにも無いでしょう? こればっかりはねぇ……」



 むしろ早く忘れてほしいと思っていると、双子は首をかしげキョトンとした顔でこう言った。



「「売ってるよ!」」



 う、売ってる!? 2人の発言に思わずガタッと椅子から立ち上がってしまう。



「はあ!? 売ってる? どこで?」

「お祭りのお店にたくさん杖あるよ?」

「ドラゴンの剣もいっぱいあった!」

「「ねえ、買って〜」」



 双子がじりじりと近づいてきて私にガシっと抱きついてくる。返答に困っていると外からよく知ってる声が聞こえてきた。



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