表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される  作者: 四葉美名
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/25

15. 最後の願い

 

 エドが目の前に現れたと同時に、ジーク王子が放った光が弾き返されるのが見えた。エドは倒れていた私にすぐさま駆け寄り抱き上げる。そのまま急いで近くの木の陰に隠れて、ジーク王子の様子を見張っていた。王子は倒れているけど、まだ油断ならない。



「エド……!」

「サラ! 大丈夫か!?」

「私は……だいじょう、ぶ。それより……さっきの」

「俺は大丈夫だ。魔力攻撃を跳ね返すよう、準備してきたから。それよりこれは……」



 エドは私の周りの様子を見て、目を見開いて驚いている。それもそうだろう。ようやく見つけたら、私の周りには人が大勢倒れているんだから。私はジーク王子が魔力攻撃で、王族を攻撃しようとしていた事を伝えた。



「ジーク王子は…魔力を持ってなかったのよ…だから…私の魔力を全部流し込んで…」



 喉が痛くて苦しい。咳き込みそうになるけど、ぐっと我慢して説明を続ける。



「そうすれば…あの人の体の中で、魔力が暴走して…」

「わかった! もう喋らなくていい」



 エド自体が魔力の巡りが悪くなって死んだのだ。どれだけ辛いか一番わかっているだろう。エドは周りに注意しながら、話を続ける。




「兄に頼んで騎士団をここに送り込むよう伝えた。俺の魔力を感知できるようにしたから、もうすぐ到着するだろう」




 騎士団がここに来る。そう聞いただけで心の底からホッとして、力が抜ける。




「それに陛下達の守りも大丈夫だ。万が一のために魔術師も近くで待機させている。国境の防衛も伝達したし、一応マリス王国にも使者を送ったよ」



 エドはあの時言った決意どおり、王族として国を守ろうと頑張っていた。私もなんとかエドを守れたようで、安心する。2人で抱き合っているとエドは木の陰からそっと顔を出し、ジーク王子の様子を伺った。



「……捕まえてくる」



 そう言ってエドは私を残して、ジーク王子のもとに歩いていく。あと少しで王子のもとに着くのが見えた瞬間、王子は体を起こし私の方へ魔術攻撃を放ってきた。



「きゃあ!」



 魔術攻撃の光は、私のすぐ横の木に当たった。まだコントロールはできてないみたいだ。それでもこんなに動けるくらい、回復しているなんて。まだ魔力を入れなくては! そう思ってジーク王子のもとに行こうと、立ち上がった。



「ぐわあああ!」



 叫び声に驚き振り向くと、エドがジーク王子の体に手を当て魔力を流していた。魔法陣がいっそう光り始め、ジークが再び苦しみ始める。



「エド!」



 ジーク王子はまだ動けているから、かなりの魔力を入れないと回復してしまいそうだ。私が考えていたより、ジーク王子の体は魔力耐性が強かったらしい。私はありったけの力を出して、よろめきながらエドのもとに行く。



「サラ。僕は王子だ。今度こそこの国を守るために、最後までやらなくてはならない」



 エドが私が来るのを止めた。それはエドの後悔とフィリップ殿下の決意が、混じり合ったものなのだろう。ここでジーク王子が助かってしまったら、きっと同じことを繰り返す。いや、今回のことでもっと残虐な行為をこの国でしようとするだろう。だからこそ最後は王族のエドが、責任を持とうとしている。それでも私の気持ちも同じだった。



「じゃあ、私も、王族としての責任を負うわ」



 私はそっとエドの隣に座り、ジーク王子の体に残り少ない魔力を一気に入れていく。ジーク王子はうなり声をあげたが、もうその声は弱々しい。私だってあのままエドと結婚していれば、同じ王族だった。私だって王族としての責務を放棄したようなもので、私が死んだ後は王家にも迷惑をかけたことだろう。



「サラ、サラはもう……しなくていい……離れてくれ」

「私と結婚、したいん、でしょ……? じゃあ私も同じ王族として……背負うわ」



 もう言葉を話すのも苦しい。それはエドも同じで顔は真っ青で、今にも倒れそうだ。ジーク王子も、もう抵抗ができず、ゆっくりと瞼を閉じた。



 ジーク王子の体は、魔力持ちと同じ状態になっていたのだろう。キラキラと体が光り始める。その光は一瞬大きく光り、やがて1つになって空に登っていった。私達はその光景を、呆然と見ていた。



「終わった……」



 私は緊張から解き放たれたことで、ガクリと力が抜けその場に倒れる。もう魔力はほとんど残っていない。今息をしているぶんだけだ。もうそろそろ尽きるだろう。それでも私達は国を守れた。2人でほったらかしにしてしまった責任を、今回はまっとうできた満足感はあった。



「サラ……」



 目がかすんで見えないけど、横にはエドがいた。エドの苦しそうな息遣いが、あの日のエドを思い出させて辛くなる。私、エドを救えなかった。幸せにもできなかった。体の苦しさより、その事が私の胸を苦しめる。




「はあ……次はもう僕は……君と結ばれるまで、記憶を思いだすのはつらいな……30年は、長かった……また今回もダメだった……次はもう僕には、苦しいかもしれない……」



 ポロポロと涙が出てくる。泣き顔を見せたくないのに、勝手に涙があふれて止まらない。



「また、君の涙を拭えない……」



 エドの手が、パタリと力なく地面に落ちる音がした。エドの体は光り始め、天に登っていく。私の手もキラキラと光り始めた。頑張ってエドの方に手を伸ばすと、ほんの少しだけエドの手に指先がふれた。まだほんのりと温かい。



 私は指先の温かさを感じながら、キラキラ光る自分の体を見ていた。









 だいぶ時間が経った気がする。私はやっぱりあの明るい光の場所に居た。




 ここも2回目ね。常連にはなりたくないけど、気持ちの良い場所だわ。そういえば1回目の時、私はエドの幸せを願ったのに叶わなかったな。



 でも私、次は諦めない! 今度はエドとどんなに年が離れていても、私はあなたを必ず幸せにする。他の誰にも渡したくない。



 エド、あなたはいつ現れるかわからない私のことを、30年も待ってくれた。だから今度は私があなたを見つけて、あなたと結ばれるその日まで、あなたが私を思い出すまで待ってる。




 エド、待っててね。必ず、幸せにしてあげるから。




 ああ、やっぱりここは眠いな……




 私はゆっくり瞼を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ