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【完結】婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される  作者: 四葉美名
本編

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12/25

12. 秘密のお茶会

 


 私達が庭のガゼボに到着する頃には、すっかりお茶の準備が整っていた。コポコポと心地よい音をたてて、温かいお茶が注がれる。メイドや護衛は見える場所に下がらせたので、今は2人きりだ。これで私達の会話は聞こえないから、安心して「サラ」と「エド」で話すことができる。




「素敵な家族で安心したよ」

「ふふ、ありがとう。無理やり嫁がせる両親じゃなくて、良かったわ」




 権力主義者なら娘が何を言ったところで、隣国の王妃になれるかもしれない求婚を断る人などいないだろう。両親が娘を大事にしてくれる人で本当に良かった。




「相変わらず、苺が好きなんだね」




 テーブルには、苺を使ったケーキやジャムが所狭しと置かれている。入れたばかりの紅茶の良い香りが広がり、先程の話し合いの緊張がほぐれていくようだ。




「ローズも大好きだったの。それにこのジャムは、お父様が作ったのよ。お父様は休日にジャムやケーキを作るのが、趣味なのよ」




 今の父も家族をすごく愛していて、休日は領地で取れた果物でジャムを作っていた。その頃サラの意識は無かったけど、楽しかった思い出に思わず笑みが溢れる。




「それにしても、本当に同じ時代に生まれ変わったわね」

「少し年がずれてるけど?」




 うぅ……エドの言葉に棘を感じる。エドが少し口を尖らして拗ねているけど、無視して話を続けた。




「お父様やお母様とも会いたかったけど、今回はいないみたいで淋しいな」

「そうか……周りにはそれらしい人はいなかったの?」

「いないわ。まあお父様のことだから、今頃念願の農家か、いろんな国の果物を探し求める旅人か、いずれにせよ楽しく過ごしていると思う」



 お父様のことを思い出すと、ついクスクスと笑ってしまう。それより今日は苺を楽しまなきゃ! エドが「乗せすぎじゃない?」と言っているけど、無視してスコーンに苺のジャムをたっぷり乗せていく。うんうん、お父様の作ったジャムは最高だわ!




「エドはどうなの? 王子として生まれちゃって。勉強、頑張ってる?」

「まあ、二度目だからね。家族とは不仲ではないけど、前と同じで距離はあるよ。王族だからそんなものだと思っていたけど、サラを見ていると家族仲が良くて羨ましいよ」



 そういえば昔も魔術をしながら2人で話していた時、私の家族が羨ましいと言ってたっけ……



「まあそれでもフィリップは、国のため兄が王座に就いた時に支えるためにと、日々頑張っていたみたいだな」



 そう言ってエドは少し遠くを見ている。何かあったのだろうか? と考えていると、エドは真剣な目で私に向き合った。



「僕は今度こそ、あの時やり残した王族としての努めを果たそうと思う」

「え……?」

「前の人生で君と会えた事は嬉しかったし、後悔していない。でも王族としての努めを放棄した事は、悔やんでいたんだ」



 エドは今の人生では第3王子で王位は継がないけれど、前世では王位を継ぐはずだった。私の魂を取り戻すために、たくさんの葛藤や諍いがあったのだろう。



「キース王国は王族だけが贅沢をして、国民が苦しんでいる。そのせいで困窮しているというのに、さらに僕達の領土を奪おうとしているんだ。もしこの国がジーク王子に乗っ取られたら、今の平和なままではいられないだろう。僕もそしてフィリップも、しっかりと王族として戦う覚悟を決めたよ」



 キース王国が本当にこの国の領土を狙って、王族を抹殺したいと思っているのならエドは戦わないといけない。頭ではわかっていても、心が追いつかない。出会えたばかりなのに……



「まあそれでも、今回のことが片付いたらサラと結婚したいな」



 そう言ってエドは、テーブルの下でそっと私の手を握ってきた。ドクンと胸がはねる。



「君が16歳で僕が31歳くらいなら、なんとか……」

「エドがいろいろ言われそうだし、そこまであなたが独身でいられるとは思えない……」



 はあ〜と2人でため息をつく。テーブルの下では、エドの指がからまってきた。



「私は正直、王族には向いていないわ」

「僕ももう、疲れたよ」



 私はもちろんだけど、エドもどちらかというと政治に関わりたい人ではない。何かを研究したり作ったりすることで、やる気を発揮する。きっとこの指輪も楽しんで作ったんだろうな。



「次生まれるなら、繁盛している商家がいいな。何かを作って、売るのは楽しそうだ。」

「私は次こそはお父様達と一緒に、のんびり過ごしたいな。そうすると有無を言わさず果物農家か八百屋かも?」



 はっきりと今生きている時代では、私達の人生が交わらない事を考えたくない。エドも同じなのか楽しそうに、次の人生を語っている。



 私達の指は隙間なくからみあい、お互いの熱を感じていた。



「そういえばジーク王子は何の道具も使わずに、君の魔力量が多いと言ったんだよね?」

「うん。いきなり後ろから、話しかけられただけよ」

「……そうすると、ジーク王子こそが、魔術兵器みたいなものなのかもしれない」

「ジーク王子が魔術兵器?」



 どういう事だろう? 人なのに兵器になるとは? よくわからず首を傾げていると、エドが詳しく説明し始めた。



「以前君の事で昔の文献をたくさん読んだ時に、他人の魔力量を見る力を持つものは、特別な魔術師だと書いてあったんだ」

「特別って?」

「僕達は昔の文献から、魔法陣を習って作っただろう?」

「うん。型が決まってて、それに呪文を当てはめる感じだったよね」

「でも魔力量が見える者は、魔法陣も独自に作れるらしい」

「そんな事できるの!?」



 師匠だってそんな事できなかったし、周りにもいなかった。エドによるとその文献はかなり古くて文字もかすれていたため、なぜ魔法陣が作れるのかまでは分からなかったらしい。



「それでも文献の最後の1文が気になって、解読を頑張ったんだけどね」

「どんな内容だったの?」

「その魔力量の見える者は、何かを持っていない。あと、何かができないとあって、その何かがかすれて見えなかったんだ」

「す、すごい気になる……」



 師匠とエドのことだから当然修復の魔術もしたんだろうけど、読めなかったんだろうな。でもジーク王子に弱点といえそうな事があるのは、嬉しい情報だ。



「とにかくジーク王子は、かなりの魔術師だと思う。僕達の知らない魔術を使うのではないかな。気をつけるんだよ」

「気をつけなきゃいけないのは、あなたも同じ。ううん、標的はあなた達王族なんだからね」



 そしてもしそれが実行されるなら、私がエドを殺す燃料になるということだ。絶対にそんな事はさせない。



 落ち着くためにコクリと紅茶を飲み干すと、護衛達が控えている場所がざわめき始めた。なんだろうと思って振り向くと、護衛が止めるのも聞かず誰かが歩いて近づいてくる。



「またフィリップが一緒か」



 ぞくりとする憎しみを込めた声とともに歩いてきたのは、ジーク王子だった。


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