猫彼氏な犬飼くんと、犬彼女な猫又さん 〜傍から見たら破局寸前!?でも本当は甘々ラブラブです!〜
短編です。かなり短いです。
パッと思い付いたのを文字に起こしただけなのでもしかしたら変な部分があるかもしれませんので、その時はご指摘お願いしますね!
ではお楽しみ下さい!
「犬飼くん!今日一緒に帰らない?」
全ては彼女のこの言葉から始まった。
普段クラスで全く関わる事が無く、性格も真反対で活発な彼女からそう言われた時俺は思わず「なぜ?」と口に出していたが、今思えばかなり冷めたやつに映ったかもしれない。
だが、彼女、つまるところ猫又日和は俺のそんな物言いも特に気にせずに、ずいっと俺に一歩近づいてまた一言こう言った。
「お願いっ!今日はどうしても犬飼くんと一緒に帰りたいの!」
その必死そうな様子から俺は一緒に帰ることを渋々了承し、2人は帰路についた。
~~~
どうやら下校ルートはほとんど同じようで、2人して最寄り駅の方に向かって歩いている。
空は茜色に染まり始めていて、周りには何だか良い雰囲気の男女が多く歩いている気がした。というか多分それは気のせいではない。実際男女で手を繋いで歩いている人達もいるくらいなのだから、そういう関係の人達なのだろう。
「ふぅ・・・緊張する・・・」
隣では先程から頬を空と同じ茜色に染め深呼吸ばかりしている猫又さんがいる。
「大丈夫?」
俺が素っ気なくそう聞くと猫又さんは「え?あ、あぁ!大丈夫だよ!この通り元気いっぱい!」とそう言って、ムフン!というセリフが聞こえそうなくらいに胸を大きく反らした。
「あっそ。ならいいけど」
俺はまた素っ気なく返し前を向くと歩く歩幅を猫又さんに合わせながら歩いた。
身長差が20センチ以上あるためか、俺の1歩が猫又さんには数歩分に該当してしまうらしい。だからまぁ、歩幅を合わせるのは少ししか出来ない俺からの気遣いみたいなものだ。
しばらく歩くと不意にブレザーの裾をクイクイっと引かれる。何事かと思って見てみるとそこには頬を先程見た時よりも赤く染め、そして何かを決心したような表情を湛えている猫又さんがいた。
「あ、あの・・・犬飼くんっ!」
「何?」
「そ、その・・・ね?突然こんなこと言われたら困るかもしれないけど・・・私、猫又日和は犬飼くんの事がずっと前から好きでした!もし良かったら・・・私と付き合ってくれませんか?」
すぐ前にある猫又さんの表情は、ほとんど祈りに近いものにへと変わっていた。それもそうだろう。ここから後を決めるのは俺だ、猫又さんじゃない。決定権が無いのならそれはもう祈るしかないだろう。
だが、すぐには俺は答えを出さなかった。
否。
出せなかったのだ。
誰かに好意を向けられるのが初めてな上に、その思いをこうして面と面で向かい合って直接伝えられたのだ。
正直俺は冷めている方の人間だと自覚しているし自負している。けれども彼女の、猫又さんの告白は俺の自覚も自負も全て消し去ってしまった。
まぁこんな事をずっと考えておいてなんだが、結論としてはそうだな。
びっくりするくらい嬉しかった。
だからこそ、すぐには返事を返してあげることが出来なかった。
「やっぱり・・・ダメ・・・かな?」
目の前では俺が全然答えを返してあげないがために、猫又さんは大きな瞳をじわりと涙で濡らしながらこちらを見てくる。
「あ、いや、その・・・。俺別に面白い話してあげれないし、というか俺と一緒にいて楽しいと思うことなんてほとんど無いかもしれないけど・・・それでも俺がいいって言ってくれるんなら」
俺はすっと軽く息を吸ってそして最後に一言目の前にいる猫又さん向かってこう言った。
「こちらこそお願いします」
~~~
猫又さんと恋仲になってから数ヶ月がたった今、俺の周りでは不穏な噂が流れていた。
[犬飼と猫又もうすぐ破局する可能性あり]
「犬飼くんってさ、彼女の日和に対して素っ気なさすぎるから愛想尽かされたって噂があるみたいだよ」
「えー。彼女に対して素っ気ないのはちょっとねぇ。彼氏としての自覚が足りないんじゃないのかな?」
「だよね。だから破局するかもって噂も流れてるしね。しかもサッカー部エースのイケメンくんが日和のこと狙ってるとも聞いたし、これは本格的に破局かなぁ。日和ってあの子犬っぽい所とかめちゃくちゃ可愛いし意外と人気だからさ」
「そうだよねぇ」
こんな感じでどんどん噂が広がっているらしい。だけどもそう簡単に根も葉もない事を信じられても困るというものだ。
「犬飼くん一緒に帰ろー!」
「ん」
確かに日和に対して少し素っ気ないってのは認めるけど。
学校からの帰宅途中、俺達はすぐには駅に向かわずに近くにある海辺を訪れていた。まぁ、簡単に言えば制服デートである。
本来の制服デートならショッピングをしたりスイーツを食べに行ったり映画を見たりなど、そんな感じなんだろうけど。あいにく俺にはそういった知識というものがあまり無いのでこういうデート系ではいつも日和に引っ張って貰っている。
しばらく砂浜に2人分の足跡を残しながら歩いていると、俺の手と恋人繋ぎをしている日和の手に少しだけギュッと力が入った。
俺はその日和の手を見たあと日和本人の顔を見る。
「ね、ねぇ犬飼くん」
「ん、どうした?」
俺がそう聞くと日和は目を伏せて頬を染め始めた。日和のその姿は純粋に可愛らしくて非常に抱きしめたくなる。そしてそれと同時に、この可愛い女の子は自分の彼女なんだという独占欲のようなものにも駆られた。
「あ、あのね・・・」
日和は伏せていた目を上げこちらを向くと、夕日に照らされて艶やかに光る唇を少し震えさせながら喋り始めた。
明らかに日和が緊張しているのが俺に伝わってくる。
「そ、そのね・・・」
「うん」
「き、キスをその・・・犬飼くんとしたいなーって思って・・・」
俺はそう言われて思わず黙ってしまった。あまりにも可愛い目の前の女の子に、日和に思わず見とれてしまったから。
「その、ダメかな?」
俺は日和の言葉でハッとする。どうやら見とれていて意識が一瞬遠のいていたらしい。
「いや、ダメというかその、もう少し段階を踏んでからでもいいんじゃないかと俺は思う」
「だ、だよね!ごめん、少し焦っちゃったみたい。あはは・・・」
日和は落ち込んだ様子を隠そうとするためか隠し笑いをするが、あからさますぎて逆に気づいてしまう。
俺達はその後何とも言えない空気感のまま駅に着いてしまった。
恋人繋ぎが解かれ日和は俺の方を見る。
「その・・・また明日ね」
そう言った日和の表情は少し寂しそうなもの。そしてそんな表情になっている理由は俺が1番分かってる。
だから俺は改札に向かおうとする日和の手を取って引き寄せた。
「ごめん日和。やっぱりさっきの無しで」
「え?」
日和の表情は寂しそうなものから困惑したものに変化している。
「キスの事」
「で、でもさっき犬飼くん段階を踏んでからって」
俺は日和にそう言われて、少し頭を掻きながら日和の顔をもう一度見た。
「ごめんそれ無し。やっぱり日和の事もっと知りたいし、日和を俺のにしたいから。だから目ちょっと閉じてて」
俺がそう言うと日和は「う、うん」と言って素直に目を閉じた。そして俺はすっと日和の唇に口付けをする。
周りの目なんか気にしない。今は日和に意識を集中したいから。
そして、ぷはっと軽く吐息を吐きながら俺は日和から顔を少し離すと日和の顔は真っ赤に染っていた。
「あ、あわ、あ・・・」
「その、少し強引になった部分もあったけど、これからも一緒にいてくれるか?」
「え、えっと・・・」
日和の顔は真っ赤に染まったまま伏せられている。
やっぱり強引なのはダメだったかな。
俺は自分の軽はずみな行動に少し後悔の念を抱いていると日和が顔を上げた。
「犬飼くん。そ、その、こちらこそこれからもよろしくお願いします!」
そう言った日和の顔は真っ赤に染めたままこちらを見据えている。
「俺、誰かと恋仲になった事なんて日和よりも前に経験したことないからさ、多分これからも少し素っ気ないと思う」
「うん」
「だけど、これからはもっと・・・なんて言うんだろ。その、日和に好きって事ちゃんと態度でも示していこうと思うからさ」
「うん」
「これからもよろしく」
俺がそこまで言うと日和は我慢が出来なくなったかのように俺に飛びついてきた。
「ひ、日和っ!?」
「絶対に離さないからね!犬飼くんは私の彼氏で私は犬飼くんの彼女。これからもずっと、ずぅーっと一緒だから!」
日和はそう言うと先程よりも俺の事を強く抱きしめてきた。抱きしめてくる日和の体は小さくて、でも俺にとっては大きい存在で、だからこそ大切にしたくなる。
俺も日和の事をギュッと優しく抱き返した。
サッカー部のエースくんには申し訳ないが俺と日和は別れるつもりはさらさらない。
だって心の底から俺は日和の事が好きだから。
どうもサチです。まずはこの「猫彼氏な犬飼くんと、犬彼女な猫又さん」を読んで頂きありがとうごさいます!
普段は「普通の男子高校生の日常が、こんなにたくさんの美少女に囲まれているのがおかしいと思うのは俺だけだろうか??」を連載しているのでぜひそちらも読んでみてください!
ではまたどこかで会いましょう!