表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊滅師  作者: シクル
7/68

第七話「首吊」

「良い……? 開けるわよ……? 覚悟は出来た……?」

「早く開けろよ。覚悟がいるのはお前だけだっつの。一言で三つも疑問符使うんじゃねえ」

理科室の前。ドアに手をかけて躊躇する月乃に、亮太は苛立ちを感じていた。

「開けるわよ……」

「しつこい」

月乃が、ゆっくりとドアを開ける。

「……いるな」

ドアを開けるには開けたのだが、中々中へ入らない月乃の後ろから、中を見ながら亮太は呟いた。

理科室の中央辺りに、首吊り死体があった。

「ほら、行くぞ」

「う、うん……」

亮太に促され、月乃は恐る恐る理科室の中へ一歩踏み出した。

月乃の背筋を寒気が走る。怖い。

一歩ずつ。一歩ずつ。ゆっくりと死体(というか霊)の方へ歩み寄る。

そんな月乃の様子を、亮太は苛々と眺める。

ピタリと。霊の目の前で月乃が止まった。

「で、どうするんだ?」

「ど、どうするんだって……同じ霊なんだから、あ、アンタがやってよ……」

「それじゃお前が霊に慣れれないだろ」

「多分、この様子じゃ一生慣れれない……」

月乃の言葉を聞き、亮太は深く溜息を吐き、仕方なく霊の所まで亮太が近付いた。

その時だった。

グルリと霊の身体が回転し、こちらを見る。

「ひ……っ!」

月乃が短く悲鳴を上げた。

『ァアァ…………』

「――――ッ!?」

シュルシュルと。開けたままの霊の口から舌が伸びていく。その舌はの行く先には、月乃がいた。

「い……嫌……っ!!」

「代わるぞッ! 月乃ッ!!」

すかさず亮太は月乃の身体と自分の身体を重ね合わせた。

一瞬の快感。亮太は月乃の身体に憑依した。が、タイミングのせいか攻撃は避けられなかった。

霊の舌は月乃の身体の亮太(以下亮太)に巻きつき、しっかりと絡め捕るとそのまま放り投げた。

「ぐ……ッ」

飛ばされ、壁に背中から激突する。

背中に激痛が走る。

『シ……ネ……』

「コイツ…………」

亮太は霊を睨みつけた。

『既に……悪霊化してる……!?』

「ああ。行動を起こしてなかっただけだ……。この首吊り野郎、とっくの昔に悪霊化してやがった……!!」

亮太は、背中の刀を白い布から取り出すと、乱暴に布を放り投げた。

鞘から刀を抜き、鞘を適当な場所に置くと、亮太は刀を構えた。

『ゥアゥ……』

シュッ!と音がして、今度は先程より速い速度で舌がこちらに伸ばされる。

亮太は身をかがめて舌を避けると、下から霊の舌を刀で斬り上げた。

斬られた下から凄まじい量の血が飛び散り、亮太の頬に飛び散る。

『私の顔に霊の血なんか付けないでよっ!』

「仕方ねえだろうが!」

亮太は刀を構え直すと、霊に向かって駆けた。一気に片をつけるつもりだった。

『今何か引っかかった!』

「何――――ッ」

首に感じる違和感。慌てて首を手で押さえると、そこには縄があった。

いつの間にやら吊り下げられた縄に、亮太の首がかかっている。

『何やってんのよ!!』

「とにかく外すぞ!」

亮太が急いで縄を外そうとするが、徐々に縄はきつくなっていく。

その上身体がぐいぐいと引き上げられていくではないか。

「か――――ッ」

喉が絞まる。酸素の供給が困難になる。

それでもまだ、縄は引き上げられていく。

ふと霊の顔を見ると、その顔はニヤリと笑っていた。

まるで仲間が出来たことを喜んでいるかのようだった。

『もう…………ダメ……っ』

これ以上締め上げられるのはまずい。

亮太が諦めかけたその瞬間だった。

「ッ!?」

不意に、開放感に満たされる。と同時にドサリと身体が地面に落ちる。

「ゴホッ! ゴホッ!」

縄が緩くなり、亮太はゴホゴホと咳き込んだ。

何だ?何があった?

咳き込みながらも亮太は辺りを見回した。

「間一髪ね。大丈夫だった?」

優しげな女性の声だ。亮太が振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。

巫女装束に身を包んだ美しい女性。

腰辺りまで長く伸びたその黒く美しい髪。

そして巫女装束に隠された抜群のプロポーションが、亮太を一瞬魅了した。

が、彼女の手には巫女装束には不似合いな、彼女の身の丈程もある大鎌が握られていた。

恐らく、あの大鎌で縄を切ったのだろう。

『巫女さん……?』

「ええ、巫女よ。……あら、その身体、二つの魂で共有してるのね」

『っ!?』

今の月乃の声が聞こえた上に、月乃の身体を亮太と共有していることにすぐに気づいた。

「詩祢さん。もしかして、あの首吊ってる奴が今回の目標ターゲットですか?」

巫女の隣にいた着物姿の少女の霊が問う。

「うーん……。それはないと思うわ。あんな貧弱な霊には危険度Aなんてつかないもの」

『危険度Aですって……!?』

巫女は亮太を無視して霊の方へ歩み寄る。

『ァ…………』

舌が来る。亮太がそう思った時だった。

「成仏してね♪」

―――――一閃。

大鎌が振られ、霊の身体が切断される。

大鎌の範囲は広い、亮太がもし立っていたら一緒に切断されていただろう。

『ァァ……』

霊は呻き声を上げると、姿を消した。成仏したのだろう。

「アンタ一体……」

亮太が問うと、巫女は振り返ってニコリと笑った。

「私は木霊神社の巫女さんで、霊滅師の出雲詩祢です」

そう言った後にボソリと「ま、巫女は副業なんだけどね」と付け足した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ