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霊滅師  作者: シクル
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第六十話「頭」

 ゴクリと。亮太は唾を飲み込んだ。

 目の前にいる少年――――ヘッドから放たれる威圧感が半端なものではないからだ。あの武者と同等、もしくはそれ以上の威圧感を放っている。

 チラリと。右手の中指にはめられた指輪を見る。白い玉についた傷が増えている。武者との戦闘が原因なのは明白であった。

 この時点で心配だというのに、これからヘッドとも戦わなければならないし、仮に勝てたとしても、その後は黒鵜との戦闘になる可能性が高い。

 せめて、黒鵜を倒すまではもってほしい。

「月乃、今回は憑依しない」

「……え?」

 亮太の言葉に、月乃は驚愕の声を上げる。

「俺とお前の、二人がかりだ」

「でも、そんなことしたら指輪は……っ!」

 月乃のことだ。必ずそう言うだろうと思っていた。そんな風に心配してくれるのが、亮太にとってはたまらなく嬉しかった。

「一回くらい大丈夫だろ多分。それに、そうでもしねえとコイツは倒せない」

 憑依した方が個体としては強いのだが、それでもヘッドには恐らく勝てない。二人がかりで隙を狙った方がまだ勝機はある。亮太はそう考えていた。

「……わかった。無茶、しないでね?」

「……ああ」

 コクリと頷き、亮太は身構えた。隣で月乃も、刀を鞘から抜いている。

「準備は出来たましたか?」

 ヘッドの問いに、二人は答えなかった。

「行くぞッ!」

「うん!」

 同時に、左右から二人は突っ込んで行った。月乃はヘッドの頭上目掛けて刀を振り降ろし、亮太はヘッドの顔面目掛けて右拳を突き出した。が、ヘッドは微動だにせず、薄らと笑みさえ浮かべている。

 月乃の刀と、亮太の拳がヘッドに直撃する寸前、バチバチバチバチッ! と、電気の流れるような音がする。

「な――――ッ!?」

 亮太の拳も、月乃の刀も、ヘッドに直撃する直前で止まってしまっていた。

「無意味です」

 二人は必死にヘッドに直撃させようと刀と拳を押し出すが、一向に進まない。

「目障りです」

 パァン! と、二人は同時に弾き飛ばされた。数メートル吹っ飛び、その場に倒れる。

「どういうことだ……!?」

 立ち上がり、亮太が問う。

「……魔力障壁。魔術の基礎です」

「魔術……」

 月乃は、今ヘッドが発した「魔術」という単語を繰り返す。一度だけ稜子から話に聞いたことがある。この世には魔術という異能があり、異能という点では我々霊能者も似たようなものだと。今、ヘッドがしてみせた物こそ魔術なのだろう。

「科学者の魂を元にしたんじゃなかったのかよ……?」

「科学の先に、私が行き着いたのが魔術です。習得し切らずに死んだので魔力障壁と基礎くらいしか使えませんが……。貴方達には十分でしょう」

 魔術を使う元科学者の魂。何だか妙な感じもするが、今はそんなことにこだわっている場合ではない。

「亮太、どうする……? がむしゃらに突っ込んでも駄目みたい……!」

 月乃が問うが、亮太は答えない。否、答えられない。亮太にもどうすれば良いのかわからない。まず魔術というものをよく知らない、無論それは月乃も同じだろう。

 とにかく、あの魔力障壁をなんとかしなければ、亮太達に勝機はない。

「もう終わりですか?」

 ふわりと。ヘッドが宙に浮いた。

「それなら、こちらから行きましょう」

 ヘッドは素早く亮太の眼前まで迫る。

「亮太っ!」

 月乃が駆け出した時には既に遅く、ヘッドの拳は既に亮太の腹部に食い込んでいた。

「ぐ……ッ!」

 呻き声を上げ、少しよろけるが、亮太は一歩後退すると、ヘッドに思い切り殴りかかった。

「おおおおおッッ!!」

 が、先程と同じく電気の流れるような音と共に当たる直前で止められてしまう。

「無理ですよ」

 ヘッドは二コリと笑うと、左拳で亮太の顔面へ裏拳を喰らわせた。

「がァッ!」

 亮太はそのまま左に吹っ飛び、月乃の傍で倒れる。

「亮太っ!」

「どいて下さい。殺しますので」

 ヘッドはポケットからナイフを取り出すと、亮太の元へ素早く移動し、ナイフを起き上がろうとする亮太の喉元へ突き付けた。

「終わりです」

 呟き、ヘッドがナイフを亮太の喉へ突き刺そうとした時であった。

 ドン! とヘッドの身体に何かがぶつかり、ヘッドは体勢を崩した。

「やはり、貴女も邪魔をしますか」

「当然でしょっ! アンタなんかに、亮太は殺させないっ!」

 月乃は一歩退いて勢いをつけると、素早くヘッドの喉元目掛けて刀を突きだした。が、無論当たる直前で魔力障壁によって止められる。

「まだまだぁっ!」

 月乃はすぐに刀をヘッドから話、上下左右様々な方向から連続で刀を振った。そのどれもが魔力障壁によって阻まれてしまっているが、一向に月乃が諦める気配はない。

 ヘッドの方は悠然とした表情でそれを見ていた。

「……無力ですね。貴女も」

「月乃ッ! 危ないッ!」

 立ち上がった亮太が叫んだ時には既に遅く、月乃の腹部へヘッドの手の平が当てられていた。

「え――――っ」

 ドッ! と月乃の身体に強い衝撃が加わり、そのまま派手に後ろへと吹っ飛び、ゴッ! と鈍い音がして、背後の木へ頭から直撃した。

「月乃ッ!」

 慌てて亮太が駆け寄る。が、今の衝撃で意識を失ったらしい。気絶している。

「さて、後は貴方だけです」

ヘッドが、ニヤリと笑った。

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