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霊滅師  作者: シクル
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第五十一話「鎌」

 数分程泣き続け、詩祢は落ち着くと菊と共に石段に座った。こうして菊と肩を並べていることだけでも嬉しくて仕方がない。

「そう言えば詩祢さん。何でこんな所で武器持って立ってたんですか?」

 菊の問いに、詩祢はハッとなる。そうだ。木霊町の全域に悪霊が現れ、それらを滅するために飛び出したのだ。そしてその途中、チェストと名乗る黒鵜の手先が現れて……

「そうよ! アイツは……アイツはどこにっ!?」

 詩祢は立ち上がり、辺りをキョロキョロと見回した。

「誰か、探してるんですか?」

「ええ。話せば長くなるから省略するけど、今この近くに大量の悪霊がいるのよ。その中でも一際強力な女の霊……。さっきまで戦ってたんだけど……」

 消えた。突如として。

「そうなんですか……」

「菊、手伝ってくれない?」

「何をですか?」

 惚けた顔で問う菊に呆れながらも、こんなやり取りがまた菊と出来ることを詩祢は懐かしみ、嬉しく思った。

「さっきの女の霊、捜して……倒さなきゃ」

 詩祢がそう言うと、菊は頷いて立ち上がった。

「はい、手伝います」

 笑顔で答えた菊に、詩祢が顔をほころばせた時だった。

「――――黒鵜様を」

「――――え?」

 菊の言葉に、詩祢は耳を疑った。



 木霊町へと戻るバスの中、月乃は焦燥感にかられていた。

 今こうしている瞬間にも、木霊町で、自分の住んでいる町で誰かが悪霊の犠牲になっている……。そう考えただけでいてもたってもいられない。

「月乃、足」

 亮太に指摘され、初めて気が付く。いつの間にか月乃は床を両足でトントンと叩いていた。

「焦る気持ちはわかるが、今は落ち着いた方が良いぞ」

「うん。そうなんだけど……」

 正論だ。今焦ったところでどうにもならない。どうにもならないのだが……。

「……黒鵜だろうな」

 ボソリと。金城が呟く。

「でも、黒鵜は木霊町を襲ってどうするつもりなの?」

 月乃の問いに、金城は「さあな」と答えた。

「黒鵜は目的そのものが謎だからな。何をやってもおかしくはない」

 その言葉に、月乃も亮太もコクリと頷いた。



 木霊町内の、とある廃工場の広い駐車場に男はいた。

 元々何もなかったその駐車場に、男は様々な機械を持ち込んでいた。

 男の目の前には病院のベッドのような物の上で横たわる、一人の少女がいた。衣類を一切身に着けておらず、生まれたままの姿で横たわる彼女は美しく、それでいて儚げであった。少女の身体には無数のコードが繋がれており、そのコードの先には巨大なカプセルのような物があった。そのカプセルの中には何か、青白いエネルギーのような物貯蓄されており、数秒ごとに少しずつ増えていっていた。

 男はそっと。少女の頬へ触れる。生きている人間の物とは思えないひんやりとした感触。

 男は少女の頬をそっと優しく撫でた。

水葉みずは……」

 呟き、そして愛おしげに少女を見つめる。

「もうすぐだ。もうすぐだからな……」

 男は巨大なカプセルに一瞥をくれると、もう一度少女へと視線を移した。

「黒鵜様」

 不意に、声が聞こえる。男が声のする方向へ視線を移すと、そこには小学生くらいの少年が立っていた。

「……ヘッドか」

「順調に、集まっているようですね」

 ヘッドと呼ばれた少年はチラリと、巨大なカプセルを見た。

「ああ。お前達のおかげでもある」

 男の言葉に、ヘッドは二コリと微笑んだ。

「ありがとうございます。黒鵜様」



 ヒュンッ! と。詩祢の顔のすぐ横を、菊の拳が通り過ぎた。

「……菊?」

「あ、ごめんなさい。外しちゃいました」

 そう言って微笑む菊からは、明確な敵意と悪意が感じられた。

「どういうこと……なの?」

「こういうことですよ詩祢さん。私が現世ココへ戻って来たのは、詩祢さんを殺すためです」

 信じられない。冗談に決まっている。菊がこんなことを言うハズがない。何かの間違いだ。

 様々な否定の言葉が詩祢の中を駆け巡る。

「でも……どうして?」

 衝撃と悲しみが詩祢の中でないまぜになり、何が何だかわからなくなる。

「理由なんてありませんよ詩祢さん」

 二コリと微笑み、菊は詩祢の腹部へ右拳を突き出した。

「……うっ!」

 威力こそ低いが、腹部への攻撃だ。それに、親友であるハズの菊からの攻撃だ。詩祢の肉体よりも精神に、多大なダメージを与えた。

「菊……っ!?」

 詩祢はよろめきながら後退し、菊と距離を取る。

「やっぱり私、このままじゃ弱いですね。悪霊化しないと」

「悪霊化……っ!?」

 菊の言葉に、詩祢の背筋が凍る。また見なければならないのか。親友が悪霊化する姿を。

「ふフ……フふ……ふ」

「嘘……でしょ……?」

 菊の両腕が、徐々に変化していく。まるで蟷螂のように鎌となる。丁度、詩祢の使う大鎌を小型化したような鎌だ。

「スごいデしょ詩ネさん……私、コンなことモ出来るンですよォ……」

「嫌……嫌……っ!!」

 足が竦む。目の前で菊が悪霊化していく絶望感と、過去のトラウマが入り混じっていく。

「サぁ、イきますヨ詩祢さん……」

 菊は両腕の鎌を、詩祢に向かって構えた。

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